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2025年10月21日 (火)

私のキーボード遍歴(終売品を含む)

ひとつ前の記事とかぶるところが少なくありませんが、これまでのキーボード遍歴をまとめておきます。いろいろと考えて渡り歩いてきたので、そのあたり、参考にしてもらえる点があるかもしれませんから。

まずは、キーボード選びの原則をおさらいしておきましょう。

大量の日本語を入力しても疲れない、指などへの負担が少しでも小さくなるものが欲しい。私が仕事用のキーボードに求めるものは、これに尽きます。

具体的には以下のような方針で、独立専業になって以来、30年ほど、キーボードを選んできました。

  • 日本語JIS配列(日本語がかな入力なので必須)
  • 少なくともエルゴノミクス型、できれば左右分割型(手首まっすぐで使える位置に置ける)
  • ファンクションキーがあること(秀丸マクロなどで多用するので)
  • テンキーレス(マウスまでの移動距離を小さくするため。テンキーは左か真ん中)
  • T字配列の矢印キーがあること(日本語入力時にけっこう使う)
  • (できれば)親指で使えるキーが多い
  • キースイッチはリニア(赤軸など)、できれば軽いタッチがいい(指の負担を減らすため)。静音性はあればなお可だが、重視しない(耳が悪くて自分ひとりなら音は気にならない)。

会社員時代はノートPCばかりだったので、1998年に会社員を辞め、専業翻訳者になってデスクトップを使うようになって、初めて、キーボードが選べるようになりました。そのとき探したのは、「日本語JIS配列のエルゴノミクス型か左右分割型」でした。ない。これがない。左右分割型もエルゴノミクス型も、英字ならいくつもあるのに、日本語はない。とにかくない。エルゴノミクスでさえもない。

秋葉原を歩きまわってようやくみつけたのが(↓)です。

■秋葉原でみつけた無印エルゴノミクスキーボード(メンブレン)(2000円くらいだったかな)

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15年ほど使いました。メンブレンなのに、そんなに長く、よくぞもってくれたと思います。

みつけた1年くらいあとには、1台買い足すことができたのですが(駅前に事務所を借りたとき、早朝などおかしな時間にも仕事ができるように自宅側にも仕事環境を残したので、追加が必要になった)、そろそろ買い換えたほうがいいかなと思ったころには、どこにも見当たらず、少々怖いなと思いながら使い続けてしまった結果なんですけどね。

■既製品の改造(挫折)

2010年には、「ン年来の懸案だった」といって左右分割に改造するための試験などをしています。

「キーボードの試験中」

ぶったぎって配線しなおして……とけっこうめんどうなことをしなければなりません。それもあり、なんだかんだ忙しいこともありで、結局、改造に要する時間が作れずのびのびに……。

■マイクロソフトのスカルプト・エルゴノミック・キーボード(メンブレン)(6000円ほど)

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2013年か2014年のころ、やはりメンブレンタイプですが、マイクロソフトから出たテンキー別のエルゴノミックキーボードに買い換えました。出ていることはだいぶ前に気づいていたのですが、「6/お」がそれまでの右から左に移るので二の足を踏み、古~い無印メンブレンを使い続けてしまいました。でもさすがに、古いやつはいくらなんでもそろそろ寿命だろうとあきらめて買い換えた次第です。

「6/お」の右手→左手、最初は少しとまどいましたが、慣れると、こちらのほうが「6/お」が近くていいと思うようになりました。案ずるより産むが易し(^^;)

■JISplit89キット(挫折)

2019年、キーボードの自作を後押しするお店が秋葉原に開店するなど状況が変わってきました。自作なら自分の好きなものが作れます。まじで自分で作ろうかと思いました。

ただ、こちらも、設計などの勉強をする時間が取れずのびのびに。

そうこうしているうちに、自作キーボード系で、いろいろととんがったものが売られるようになりました。個人が作って頒布する形です。ただこちらも、英字キーボードが主体だし、ファンクションキーもないしと私には使えない仕様のものが多くて。そうこうしているうちに、日本語JISの分割型キーボードがひとつ出た(JISplit89)のでさっそく購入しました。2020年のことです。

あくまでキットという位置づけで、はんだ付けも必要。とはいえ、私は、はんだ付けなら60年近く前からやってきているわけで、そのあたりは問題ありません。意気揚々と買ったのですが……なぜか、ファームウェアの書き込みで失敗してしまいました(数回トライしたんだけどなぁ)。結局、忙しさにかまけたこともあって、あきらめてしまいました(いまから思えば、作者さんに相談すればよかったんだと思う。みなさん、親切)。

ここからあとは、いまも製品(後継品含む)が買えるので、キーボードごとに項目を立てます。

■Mistel MD770(2.3万円)――それなり

2021年末、翻訳者仲間に教えてもらって、Mistel MD770(静音赤軸)を購入しました(2.3万円だった。2015年10月現在は2.4万円らしい)。矢印キーの配列が横一線で使いにくいのですが、それ以外は悪くありません。というわけで、東京と山、両方ともこのキーボードに変更しました。

さらにこの関連であれこれ調べたところ、キーアサインやマクロ登録がかなり自由にできる小さなキーボードがあることを発見したので、補助として導入。使い勝手を改善することにしました。『イーロン・マスク』のときはこの構成です(キーボードがこの形になっていなかったら、また、マクロ登録がたくさん自由にできなければ、時間的に一段苦しくなっていたと思います。そのくらい違います)。

■『イーロン・マスク』時のキーボード環境

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■FILCO Majestouch Xacro M10SP(2.4万円)――試しただけでお蔵入り

 

ファンクションキーはないのですが、真ん中に追加されているマクロキーで代用できるかもと思って試してみました。ある意味、ファンクションキーがふつうより近くなるわけで、むしろ使いやすいかな、と。購入は2024年5月。

でも、どうにも使いづらい。ノートPCのキーボードとレイアウトが違いすぎるからか。また、キー割り当てができるとされているけど、ソフトウェアは使いにくいしキー割り当ての自由度もあまりなく、結局、少し試しただけでお蔵入りにしてしまいました。

■JISplit89ベアボーンキット(総額3.5万円くらいか)――かなりよかった


キースイッチを差し込むだけでいい組み立てずみのJISplit89が売られるようになったのに気づいたので、2024年8月、買ってみました。キットとキースイッチで総額3.5万円くらいでした(総額はキースイッチによって変わる)。

Mistel MD770はそれなりにいいのですが、矢印キーが使いづらく、T字配列の矢印キーが使えるなら乗り換えてもいいかと思ったのと、キースイッチが別売なので自由に選べること、親指で使えるキーが増えることが理由です。

キースイッチはKailh Super Speed Switch / Silver / Linear、35個1540円(89個必要なので3セット購入)。作動フォースは38gなので、Realforceの重いもの(45g)より軽いもの(35g)に近い。作動トラベルがふつうの半分くらいと小さいので底付きするまで押下しなくても入力できます。

キースイッチの仕様は以下のとおり。

仕様
リニアスイッチ
総トラベル:3.5±0.3 mm
作動トラベル:1.1±0.3mm
作動フォース:38 gf

最初のうちは、矢印キー以外はMistel MD770でもいいかなと思っていたのですが……半年ほどかけて設定を詰めたら……いや、もう、こういうの以外は使えないというくらいになってしまいました。ポイントは、親指で使えるキーが多いことと、キーアサインにtap/holdという設定まである、レイヤー設定ができるなどキーアサインの自由度がとにかく高いことです(tap/holdとはキーの短押しと長押しとで違う設定にできる機能。レイヤーは、仮想的に複数キーボードが重なっていて、切り替えて使うイメージ)。

●親指で使えるキーが多い

ふつうだと親指は左右ともスペースキーしかたたけないのですが、JISplit89だと、右手・左手、それぞれ3キーずつを親指で使えます(親指で使うことを前提のキーは、キーキャップを上下反対にして、手前が低くなるようにしています。そのほうが親指で押しやすいので。自作系でよくやられる方法らしい)。

親指で一番押しやすい端っこのキーは、tap/holdで「スペース/Shift」にしている。ちょんと押せばスペース、長押しするとShiftになるのです。これで小指でShiftを押すことがめっきり減りました。特に手がホームから外れがちになる右Shiftは、ほんと、押さなくなりました。

親指の2番目は、やはりtap/holdで「エンター/レイヤー1」にしています。Shiftで別の文字を入力する感覚で、レイヤー1に設定したキーが使えるわけです。tapはエンターだから、左手でもエンターが入力できるし、右手も手をホームから外し気味になる大きなエンターキーではなく、親指で入力できます。地味に便利。

●レイヤーについて

基本のレイヤー0に加え、レイヤー1、レイヤー2と追加で2レイヤーが設定できます。使い分け方とした、別キーボードに切り替えるような感覚でレイヤーを完全に切り替えてしまう(しばらくレイヤー1を使う、のように)こともできるし、なにかキーを押しているあいだだけ別レイヤーを使うということもできます。Win用とMac用で切り替えるようなことをするなら前者、Shift的に使うなら後者でしょう。私は、後者のみ使っています。

レイヤー1のマクロは、大半が、そのキーで入力できる記号を入力するもの。ATOKが起動されている状態でレイヤー切り替えキーを押しつつそのキーをたたいてマクロを起動すると、ATOKの入力設定を切り替えて「?」「&」などを入力し、ATOKの入力設定を元に戻すという処理がおこなわれるようにしてあります。地味に便利。

なんといっても便利なのは、親指でシフトもエンターも押せてしまうこと。これに慣れると、ノートパソコンを打っていても、つい、シフトのつもりでスペースキーを押してしまったりするほどです。なので、居間でノートパソコンを使うときも、JISplit89を外付けで使うようになってしまいました。だって、打ちやすいんだもん。

●JISplit89で不満に思う点

というわけでJISplit89はかな~り満足できるものだったのですが(というか、もう、Mistel MD770には戻れない)、不満もいくつかあります。

ひとつは「6/お」が右手であること。昔は右手で押していたキーなのですが、Microsoftのエルゴノミクスキーボードで左手に慣れたら左手のほうが押しやすいことに気づいてしまったので。左手にしたほうがちょっとだけ近くなるんですよね。

もうひとつは、F6が右手であること。Mistel MD770は「6/お」の真上にF6があって、両方とも左手側にあります。これに慣れてしまうと、ね。秀丸のマクロは、右手でマウスを使いつつ左手で起動するものが多いので、左手側になるべくたくさんあるほうが便利なのです(なので、JISplit89では、レイヤー2を使い、左手でF6~F9が打てるようにしている。でもこれ、2アクションになるのよね)。

●Earth95s(総額2.7~3.2万円くらいか)――ほぼ理想形

 

JISplit89の不満をほぼすべて解消してくれたキーボードが、このEarth95s。

2024年後半に発見し、これはよさげだとすぐに買いました。以来10カ月あまり、まだ揺れている設定もありますが、だいぶ固まってきました。現状、私にとっては、一番、理想に近いキーボードだと言えます。

唯一の不満は、設定ソフトウェア側の制約でマクロが15個までに制限されていること。しばらく前まではキーボードのハードウェアに制約があり、15個も登録しようとしたら、一つひとつを簡単なマクロにしなければならず、ややこしいことをすると10個もいかず、登録が不可能になっていました。でも、最近、ハードウェアの制約が大幅に緩和され、そちらは気にする必要がなくなりました。なので、設定ソフトウェアの作者さんがマクロ数を増やしてくれれば……。

あ、設定など、詳しいことは、また別記事に記します。

■番外編

●Keychron K11 Max(Aliceレイアウト)(2.4万円)――それなり

 

2024年11月、Aliceレイアウトに引かれて買って試してみました。居間で使ったり外に持ち出して使ったりするなら、そのときの置き方で左右の位置関係が微妙に狂う心配がないのでいいかなと思ったのです。親指で複数キーが使えるデザインでもありますし。

でも、結局、あきらめてしまいました。キーアサインのカスタマイズができるのですが、自作系に比べると自由度がかなり低く、こうしたいと思うパターンが実現できないことがわかったからです。

Aliceというレイアウトは悪くないと感じたんですけどねぇ。

●Mars74g(総額2.4万円くらいか)――モバイル用にしばらく使ってみたいと思う

GRIN配列型(Aliceレイアウトに似ている)の日本語JISキーボードを自作系で発売してくれた作者さんがいたので買ってみました。

ファンクションキーがないのは不便ですが、それ以外は悪くない。キーアサインのカスタマイズは自由にできるし、親指でたたけるキーの数も多い。なので、ノートPCに組み合わせる形でしばらく使ってみようと思っています。ノートPCのキーボードだと、長時間使うと背中や肩がこりがちになりますが、このキーボードなら大丈夫だからです。ファンクションキーがないのも、使うときは不便ですが、持ち歩くには一回り小さくて便利とも言えます。

●ErgoArrows(総額2.5万円くらいか)――まだよくわからない

いまのキーボードは、ほとんどが、段が横にずれたロウスタッカードと言われるものです。これはタイプライター時代の名残であって、人間工学的には、縦ずれのカラムスタッガードのほうがいいはずだと思うので、ン十年前の昔から試してみたいと思い続けてきました。でも、こういう特殊なものは英語配列しかなくて日本語配列がありません。私はかな入力なのでJISでなければならないからとあきらめていたのですが、このところのキーボード沼であれこれ見ていて、ふと、気づいた。気づいてしまいました。

カラムスタッガードは極端にキー数を減らしているものが多い中、ErgoArrowsというキーボードは比較的にキー数が多い。自作系なので、キーアサインはどうにでもなる。もしかするとと、そのつもりでキー数をしっかり数えてみると……ギリ、いけるんじゃないかと思ったのです。

ErgoArrowsも英字キーボードのつもりで設計されているものなのですが、ふつうなら右小指でたたくものを親指限定にして、右手小指の一番右端を人さし指側に移せばなんとかなりそうです。

ファンクションキーがないなどメインで使うには不便ですが、これがいいとなれば、JIS配列のカラムスタッガードをそれこそ自作するという手もあるでしょう(ここ数年で自作の情報がたくさん出ているので、なんとかなりそうに思う)。

■無理やり日本語JIS対応にしたErgoArrows

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キットを組み立てて少し打ってみましたが……意外にだめ。これは慣れるのに時間がかかりそうです。っていうか、さすがに50年もロウスタッカードを打ちまくってきていると、その動きが指に染みついていて、ミスタイプだらけになります。「お」が左右どっちかとか、「ー」ひとつ位置が違うとかは、わりと短期間で慣れられますけど、文字から文字へ指をどう動かしていくかがぜんぶズレるのはさすがにきついようです。導入のコスト、高いなぁ。

というわけで、当分は、Earth95sをメインに使い、ErgoArrowsはときどき使ってみて慣れるかどうか様子を見るということにしようと思います。人間工学的には、縦ずれのカラムスタッガードのほうがいいはずだと思うので。ま、私はもうトシだから、その小さな違いが手指の健康や効率に与える影響を感じるほど、仕事をすることはないかもしれませんけどね。

■補助キーボード

左手用デバイスなどの名前で、プログラマブルな小型キーボードが売られていたりします。ややこしいキーボードマクロなども登録できるので、Mistel MD770時代にはけっこうよく使っていました(3個も4個も並べたことも)。でも、自作系に移ってからはあまり使わなくなりました。メインキーボードそのもののキーアサインが柔軟になり、補助キーボードの必要性が大きく下がったからです。

たったいまは、Earth95sの中央手前に(↓)をひとつ、横置きにしているだけです。

 

用途は、テンキー+α。右側4列はテンキーにしています。左側2列は+α部分で、左手親指でたたくことを基本に設定しています。それもあって、一番左の列はキーキャップの薄いもの、2列目は厚いものにして高低差を付けました。こうすれば、2列目も親指でたたけるわけです。

■現状のキーボード(Earth95s)+補助キーボード(Koolertron AE-AMAG23)

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