自宅から通勤に使う最寄りの駅までは、一帯が平野ということもあってどこを通っても淡々とした道だ。
「毎日ことば 第1007回・どこを直す?」で取りあげられていた文です。
自宅から通勤に使う最寄りの駅までは、一帯が平野ということもあってどこを通っても淡々とした道だ。
まちがいという意味では、解説に書かれている点になるわけですが……これ、それ以外にも突っ込みどころがいくつもある文だと思います。
前から「自宅から通勤に使う」まで読んだとき、このあとに「道」などを予測する読み手もいそうです。(自宅から通勤に使う)~という読み方をするわけです。でも、出てくるのは「最寄りの」なので、その時点で構成の判断を組み替えることになります。しかも、(自宅から通勤に使う)(最寄りの~)なのか、(自宅から)(通勤に使う最寄りの~)なのかと選択肢がある形で。そして、最終的に構成が確定するのは「自宅から通勤に使う最寄りの駅までは」まで読んだ時(「自宅から通勤に使う最寄りの駅」では確定しない)。
読み手に負担を強いる書き方と言えるでしょう。
そもそもで考えると、「通勤に使う」の一言は必要なのでしょうか。「通勤に使う」とわざわざ限定するということは、「通勤でないときには別の最寄り駅を使う」が含意されます。ほんとうにそうなのであればしかたありませんが、たいがい、最寄り駅はひとつだけ。であれば、「自宅から最寄りの駅」でいいはずです。
さらに、こうするとわかりやすくなりますが、これ、「(自宅から最寄りの)駅」という読み方ができてしまいます。でも実際には「自宅から(最寄りの駅)」と読んでほしいわけです。であれば、「自宅から最寄り駅」とでもするのがよさそうです。(こう考えると、なおさら「自宅から通勤に使う最寄りの駅」というのは避けたい)
「一帯が平野ということもあってどこを通っても……」も気になります。「どこを通っても」は「どの道を通っても」の意なのか、「道でもそうでないところでも、どこを通っても」の意なのか、複数の解釈がありえます。それが確定するのは、最後の「道だ」を読んだとき。これまた、えらくたくさんを短期記憶にため込んでおかないと正しく解釈できないことになります。
そのあたりは、「一帯が平野ということもあってどの道も坦々としている」とでもすればいいでしょうか。
全体を書き換えてみましょう。
自宅から通勤に使う最寄りの駅までは、一帯が平野ということもあってどこを通っても坦々とした道だ。
↓
自宅から最寄りの駅までは、一帯が平野ということもあってどの道も坦々としている。
文脈によっては上のほうがベターという可能性がありますし、下側もさらにどこか書き直したほうがいいという可能性もあります。でも、言葉のプロを名乗るのであれば、上の文を書いた瞬間、このくらいは検討し、その上で、最終的にどうするかを決めるべきだと思います。
先日のBuckeye's英日翻訳トレーニングキャンプでは、こんな話をずっとしていました。今日、こんな突っ込みのエントリーを書いてしまったのは、頭がそちらのモードになってしまっているからなのかもしれません(^^;)
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コメント
最初の枠内の文では「淡々」となっていますが、最後の枠内の文では「坦々」となっています
投稿: taka | 2025年5月 7日 (水) 08時09分