翻訳-具体的な訳し方など

2019年5月 8日 (水)

millions、billions……

某所で帽子屋さんから出てきた話題なんですが、思い出したことがあるので書いておきます。

millionsとかbillionsとかは、出てきたら、事実を確認しないとまずい表現です。millionは百万、その複数形だから数百万とは単純に言い切れないからです。

とにかく多いんだよって抽象的な意味合いのこともあるので、まずは、そういう意味なのか、具体的な数字をあいまいに表現しているのかの判断が必要です。

英語の場合、millionsとは、millionを使うのがふつうの数字全体をカバーします。辞書なら、ランダムハウス(100万以上10億未満)やジーニアス(100万台《100万以上10億未満》)に書かれているような数字です。たとえば、millions of dollarsと言えば、1.5 million dollarsかもしれないし、15 million dollarsかもしれないし、150 million dollarsかもしれないわけです。half a millionという表現もありますが、そこまで含むかどうかは微妙でしょうね(前述の辞書はどちらも排除している)。

で、ここからは私が何年も前に経験した話。

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2019年2月19日 (火)

"over ~ days"と"over ~ consecutive days"の違い

某所で知り合いが"over ~ days"と"over ~ consecutive days"はどう訳し分けたらいいのかと疑問を呈していました。

英語では over ~ consecutive days も言うようですが、日本語では「わたって」に、「続けて」という意味があるので、「連続~日にわたって」、「続けて~日にわたって」は重複表現になってしまいます。

【日本語として重複表現にならずに】over と consecutive のニュアンスを出し、かつ over ~ days との違いが分かるように、over ~ consecutive days を訳す方法はあるでしょうか。

なかなかおもしろそうな話だったので、少し考えてみました。

仕事で"over ~ days"や"over ~ consecutive days"が出てきたら、そこではどういう意味になるのか、その文脈に合う表現を考えればいいのですが、一般論としてというか、表現そのものの違いを考えたいのであれば、それぞれの表現がカバーする意味範囲を考えてみることから始める必要があるでしょう。それがわからなければ、訳出すべき違いがわからないわけで、どうにもなりません。

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2017年11月 6日 (月)

マネージャー、マネジャー、マネージャ

IT分野のinterfaceと同じで、表記がいろいろあり、どれも使われていて困ってしまう単語です。ちなみに、私が訳すようなビジネス系書籍では、なぜか「マネジャー」が主流です。

……なんですけど、これ、気持ち悪いんですよね。日本語で「マネジャー」と発音する人がいったいどれほどいるんでしょう。ちなみに、私は「マネージャー」と発音しますし、「マネジャー」と発音する人には会ったことがありません。いや、この単語を私の前で使わなかっただけで、おれは「マネジャー」って言うよって人がビジネス界の主流を占めているのかもしれませんが。

あまりに気持ち悪いので、マネジャーに直すと言われるのがわかっていて、必ず、マネージャーと書いて原稿を出しています。インターフェースとインタフェースとインターフェイスとインタフェイスはそこまで気にならないのに不思議です(と言いつつ、指定がなければ、日本語における発音の主流だと思うインターフェースにしていますが)。

表記が違うと、当然、もしかして違う単語かと思ってしまったりするわけで、(↓)みたいな記事が世の中にはたくさんあったりします。

「マネージャー」と「マネジャー」の違いと正しい表記

ここの説明では、「マネージャー」は芸能界や部活動などでよく使われ、「マネジャー」はマスコミ・速記など、「マネージャ」は情報処理などで使われるのだそうです。

ビジネス書はマスコミに近いって感じでしょうかね。

情報処理系が「マネージャ」なのは、昔、マイクロソフトの方針で末尾の音引きをなくしていた時代の名残でしょう。つまり、これは「マネージャー」の亜種。

速記で「マネジャー」が使われるのは、書かなきゃいけない文字数を少しでも減らそうという涙ぐましい努力の結果かなと思いますが、これは私の勝手な推測でホントのところはわかりません。

なお、「『マネージャー』は芸能界や部活動などでよく使われる」は、まちがっていないっちゃいないのかもしれませんが、誤解を招く表現なのではないかと私は思います。

正確には……一般には「マネージャー」だが、マスコミ・速記などでは「マネジャー」、情報処理などでは「マネージャ」が使われることが多い、と書くべきなのではないかと。

とりあえず、辞書を引いてみましょう。たかが辞書、信じるはバカ、引かぬは大ばか、ですから。

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2011年11月18日 (金)

アップル「think different」広告の日本語訳

翻訳に正解はありません。明確なまちがいはありますが、まちがいとまでは言えない範囲にはいるとあとはいい・悪いの世界になります。また、いい・悪いも、明快な基準があるわけではなく、最後は読み手との相性で決まることになります。

プロの翻訳としていいか悪いかという判断は、「幅広い人と相性のよい翻訳がいい、ごく一部の人としか相性がよくない翻訳は悪い」と考えればいいと思います。細かいことを言いだすと例外もあるはずですが、まあ、一般的にはということで。

一例として、アップルが昔使った「think different」広告の日本語訳を3通り、並べてみます。

  • アップルが日本語版で使った訳(公式訳)
  • アップルやジョブズ関連で有名なITジャーナリスト、林信行さんの訳
  • 井口訳

読み比べて、自分はどれがいいと思うのか、それはなぜなのか、考えてみるとおもしろいと思います。

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2011年6月15日 (水)

「~や」

え~、なんというか、翻訳を仕事にしている人間がこういうことを言ってはいけないのではないかという気がしていままで翻訳関係の仲間にもあまり話したことがないのですが……実は、翻訳本、苦手です。それなりに買うのですが、最後まで読めずに放りだすことも珍しくないほどで……

カミングアウトしたのは、先日行われた翻訳フォーラム勉強会のときがはじめてだろうと思います。

どうしてこうなってしまったんでしょう。小学生時代は推理物のルパンやホームズ、ファンタジー系のナルニアあたりをくり返し読んでいたし、中学から高校にかけては、バローズの火星シリーズとか(地底シリーズとかもあったような???)、レンズマンのシリーズとか、必ず買って読んでいました。っていうか、あのころは、日本人作家というと文学全集みたいなものにはいってる人くらいしか知らず、そういう人の本はおもしろくないと、翻訳物のSFを中心に読んでいた記憶があります。

その後、いつどうなったのかはわからないのですが、少なくとも、ここ20年ほどは、翻訳物を読むのがかなりつらくなってしまいました。

例外として強烈に記憶しているのが『さゆり』(↓)です。

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2011年5月 7日 (土)

原著者が日本語を知っていたらどう書くか

先日のエントリー、「『越前敏弥の日本人なら必ず悪訳する英文』刊行記念講演会」でも取り上げましたが、「原著者が日本語を知っていたら書くはずの日本語にする」という基本方針のもと「表現に対する原著者の工夫をどこまで織りこむか」というのは悩ましい問題です。

このブログに書いたエントリー関連でも、古くは、2005年に書いた「『スティーブ・ジョブズ-偶像復活』」のコメント欄における"Two years later, CG closed its doors."の話とか、最近では、昨年の2010年夏にいろいろと検討した「『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』-誤訳の指摘」の"Apple Unleashes Leopard Operating System"などがあります。

原著者がある表現を使った背景にはそれなりの理由があるはずです。逆に言えばそれ以外の表現を使わなかった、使いたくなかった理由があるはずなのです。もちろん、なんとなく書いただけってこともあるわけですが。

ともかく、工夫については、工夫の「意図」が翻訳の読者にも通じるようにすべき、そうしたほうがいいのは明らかでしょう。でも、原文における工夫の意図を伝えようとすると普通の表現ではなくなり、「わかりにくい」「日本語が不自然」「翻訳がおかしい」という感想を持つ人が出てきがちです。説明っぽくなりがちなのも問題です。ある意味、ノイズとして、読者の足を引っ張ってしまうのです。

この問題は、ここ数年、ずっと頭の片隅に引っかかっていて、折々検討してみたり、訳文の中で実験して様子をみたりしているのですが、自分の中でどうにも折り合いがつかず、困っています。

というわけで、『越前敏弥の日本人なら必ず悪訳する英文』に出てきた"While a cat is away, mice will play"をネタに、何をどう考えたらいいのか、改めて検討を加えてみたいと思います。

念のため申し添えておきますと、『越前敏弥の日本人なら必ず悪訳する英文』の内容をあげつらおうという話ではありません。あの本は翻訳初心者が対象読者の中心であり、そういう人に向けて方向性を示すという意味において、あの記述はそのままでアリだろうと思います。ここで行うのは、あくまで、あの話をきっかけとして、いろいろ掘り下げてみようというものです。

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2011年4月 9日 (土)

Stay Hungry. Stay Foolish.

スタンフォード大学の卒業式における祝辞でスティーブ・ジョブズが締めに使い、有名になった一言です。この一言、私は、「ハングリーであれ。分別くさくなるな。」と訳しています。この祝辞があったころ、ちょうど『スティーブ・ジョブズ-偶像復活』を訳していたところだったので、訳者あとがきでとりあげたのです。

「ハングリーであれ。馬鹿であれ。」という訳し方が広まっているようですが(ほかに「ハングリーであれ。愚かであれ」などもあります)、私としては、やはり、「分別くさくなるな」のほうがいいと思っています。

どうしてそう思うのか、何をどう考えて「分別くさくなるな」としたのかを簡単にまとめてみたいと思います。

この件についてはブログを別サイトで書いていたときに記事を書いた記憶があるのですが、今、サイト検索をしてもみつけることができません。移行時にトラブって消えてしまったのかもしれません。

今もまた、ジョブズが登場する書籍の翻訳を進めているのですが、当然ながら、そこにも"Stay Hungry. Stay Foolish."が登場します。それでこの話を思い出したのですが……それはまあ、置いておいて。この数年の状況の変化も考慮にいれ、改めて考えてみましたが、やはり「分別くさくなるな」だろうなぁと思います。悩ましいですけどね(悩ましくないことなんて、産業系も含めてほとんどありませんけど)。

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2011年2月10日 (木)

百聞は一見にしかず

仕事で、"Cold Stone Creamery"というアイスクリームショップの話が出てきました。どんな感じでサーブしてくれるかが書かれているのですが、"scoop rich, delicious ice cream, slather it on cold granite, and mix in any ingredient"とか"Toss a tip into the jar"とか、どうなってるのって感じです。字面からは、「アイスクリームを冷たい石に塗る」みたいな話で、それもなんじゃらほいですし、"Toss a tip into the jar"にいたっては想像もつかない。文脈からtipはいろいろ混ぜてできたアイスクリームを指しているように思うのだけど、それをTossするって? いや、投げたら落としたりするでしょう、普通。

言葉からだけでよくわからないと思えば事実確認。最近のことなので動画があるんじゃないかと検索してみました。Googleの動画検索で「"Cold Stone Creamery"」をチェック。

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2010年10月12日 (火)

「に」が連続したときの書き換え例

先日、「『の』の連続は避ける」というエントリーを書きましたが、そのとき、「"の" に限らず助詞の連続はなるべく回避する」というコメントをいただき、「『に』なんか、よく重なりますよね」と書いたのですが、ふと気づけば、ネタ帳(^^;)に例文がメモってありました。

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2010年9月25日 (土)

a(b + c) や (a + b)c の訳し方

「IT翻訳者の疑問」の「[Linguistic Reviewerの疑問]a(b + c + d)をab + ac + adと訳す手法?」で、a(b + c + d)をab + ac + adと訳すのはよくないというようなことが書かれていますが……なぜ、いけないのでしょうか。というか、そうしないとおかしくなることのほうがむしろ多いと私は思うのですが。

前にも書きましたが、数式を展開するみたいに「mobile devices and applications」を「モバイルデバイスとモバイルアプリケーション」と訳すというやり方がしばらく前から流行しているような気がします。私の経験では、こう訳す翻訳者は一人や二人ではないし、翻訳会社から支給されるTMにも登録されていることがありますが、どうやって流行していったんでしょうか。こういう表現は「冗長」だといって嫌われるものだとばかり思っていましたが。

英語の構造からだけ判断するなら、"mobile devices and applications"という場合、そのアプリケーションはモバイルなアプリケーションか、モバイルかどうか関係なくすべてをひっくるめたアプリケーションか、いずれかですよね? で、内容的には、そのアプリケーションもモバイルなものということが多いでしょう。

アプリケーションもモバイルだとすれば、訳し方は、「モバイルデバイスとモバイルアプリケーション」か「モバイルのデバイスとアプリケーション」か、どちらかしかないでしょう。

後述するコメント欄でbaldhatterさんが指摘されているケースの順番逆版として、「モバイル・デバイスおよびアプリケーション」なんて、さすがにやらないですよね?

で、これだけならどちらでもいいっちゃいいんですが、たとえば原文が"the latest mobile devices and applications"だったら? 「最新のモバイルのデバイスとアプリケーション」は「の」が連続するというのも問題ですし、「最新」がかかる位置の問題から変な日本語になってしまいます。「最も新しい、モバイルのデバイスとアプリケーション」なら一応、日本語として成立すると思いますけど、ローカリ系なんかで"the latest"は「最新の」と訳せなんて言われていたらどうにもなりません。こちらを「最新の」とするなら、全体は、「最新のモバイルデバイスとモバイルアプリケーション」にするしかないでしょう。

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