逃げ切り世代
このところMTが業界内で話題になっていますが、その関係でキーワードになっているように思える言葉があります。標題の「逃げ切り世代」です。今年のJTF翻訳祭でも、この言葉が出てきたというツイートを見かけたりしています。
その状況を見ていて思ったことを記しておきたいと思います。
■「逃げ切り世代」など存在しない
いや、まあ、私も、今年はじめ、通訳翻訳ジャーナルに書いた記事で「逃げ切り世代」なる言葉を使っていたりするのですが……でも、改めて考えてみると、「逃げ切り世代」などというものは、基本的に存在しないのだと思いました。
仮に、今後、MTPEなりMTなりがどんどんこの業界を侵食していくとして、どの「世代」だったら逃げ切れるのでしょう。70歳以上? 60歳以上? 50代は? 40代後半くらい以降?
70歳以上とか60歳以上とかだったら、逃げ切れなくなったら引退すればいいと思っている人も少なからずいるでしょう。そういう人は、ある意味、たしかに、逃げ切れますね。でも、なにがしかの理由で、死ぬまで働きたいとか××までは働きたいとか思っていたら、逃げ切れない可能性が出てきます。
だいたい、翻訳は実力の世界なわけで、実力がどのレベルなのかによって、いつごろ、MTPEなりMTなりに「追いつかれる」のか、大きく違ってきます。言い換えれば、年齢と関係ないところで決まるわけです。つまり、「世代」で逃げ切れるなんてことないんです。
実力と年齢と仕事の種類とによって逃げ切れる人もいれば逃げ切れない人もいる。そのような状況で、最終的に逃げ切れた人は、のちに、「自分は逃げ切り世代だった」と言えますが、逃げ切れなければ、「逃げ切り世代だと思ったんだけど……」となるだけのことでしょう。
結局、「逃げ切り世代」など存在せず、「逃げ切れた世代」が後に出てくるだけのことなんじゃないでしょうか。
■逃げ切り世代と思うのは危ない
さらに、自分は逃げ切り世代だと思うのはかえって危ないとも言えます。
なぜか。
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