翻訳-出版

2012年11月11日 (日)

『ワンクリック―ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛』-誤訳の指摘

恒例という感じになってきましたが、アマゾンのカスタマーレビューで、『ワンクリック―ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛』に誤訳の指摘がありました。先日の「『リーダーを目指す人の心得』-誤訳の指摘」に引きつづき、丸出だめ夫という方からです。

指摘の順番とは異なりますが、わかりやすいものからコメントを書いてみます。

■1点目

p173
「しかしバーティカルネットはアマゾンと違う。2000年問題に伴うごたごたから回復できず、2007年、イタリアのセメント会社に買収されてしまった。」
the Y2K fiascoを「2000年問題」と訳しているが、Y2K bugでなく、直前にある「recession deepened in 2000」のことを指しているのが自然。そもそもY2K bugで潰れた会社があったか?と考えれば自明だと思うが。

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2012年11月 7日 (水)

ノンフィクション出版翻訳忘年会2012

今年も、ノンフィクション出版翻訳忘年会があります。先日幹事会をおこない、今日、案内メールが発送されました。日時・場所は12月3日、月曜日の夕方から、東京都心です。

趣旨は、例年どおり(↓)。

日ごろ、なかなか顔を合わせる機会のない編集者、翻訳家が集まる場として、2012年のノンフィクション出版翻訳忘年会を企画しました。

短い時間ではありますが、単なる名刺交換の場ではなく、今後の糧になるような集まりにしたいと願っております。実力と実績のある翻訳家に、志のある編集者に、ぜひ声をかけていただき、お誘い合わせのうえお運びくだされば幸いです。

「例年連絡が来ているのに今年は来てないぞ」という方、あるいは、「いままで出たこともなく、案内メールももらっていないが、自分は出る資格があると思うし出たいとも思う」という方がおられましたら、ブログ右側の「メール送信」から私までご一報ください。案内メールを送らせていただきます。

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2012年10月 5日 (金)

不実な美女か貞淑な醜女か

翻訳業界の関係者ならピンと来ますよね。はい、2006年に亡くなった米原万里さんの傑作エッセイの題名です。

とてもおもしろくて、私も大笑いしながら読んだ記憶があるのですが……今日は、この本を紹介しようというわけではなく、『リーダーを目指す人の心得』に関連して、アマゾンのカスタマーレビューについていろいろと書かれている件に関連して、また、ちょっと書いてみたいと思います。

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2012年10月 4日 (木)

『リーダーを目指す人の心得』-誤訳の指摘(追加)

アマゾンのカスタマーレビューに、別の方(FreshAirさん)から、(↓)のようなコメントがありました

原著を読んで比較しているわけではないし誤訳どうのという議論に立ち入る意図も無いが、「なにごとも思うほどには悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ」となっている部分については、米軍の上級士官経験者にしては少し不自然に思えて、この本を読んでいる間ずっと引っかかっていた。実際、本書には「悪いニュースが時間とともに良くなることはない」というこれとは違うニュアンスにも取れる主張が2箇所で登場している。

たしかに、「悪いニュースが時間とともに良くなることはない」とのあいだで矛盾を感じるというのはありそうです。つまり、読者を惑わせることになるわけで、ここの訳はよくなかったかもしれません。正直なところ、訳しているとき、こちらとの関係については考慮しませんでした。考慮すべきポイントであり、少なくとも全体を読みなおしているときには気づいてしかるべきだったと思います。

増刷があったとき直すとしたら……どうするのがいいでしょう。

これを検討するにあたり、考えたことをリアルタイムでメモってみます。だらだらとした投稿になるかもしれませんが、お付き合いください。

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2012年9月30日 (日)

『リーダーを目指す人の心得』-誤訳の指摘

昨日発売された『リーダーを目指す人の心得』について、今日、アマゾンのカスタマーレビューに丸出だめ夫という方から「コリン・パウエル13か条の誤訳」という投稿がありました。

ちょっと原文と比較しただけでこれだけ誤訳が見つかるのであれば、他は推して知るべしであろう。

とのことで、全部で3点の指摘がありましたので、それぞれについて、簡単にコメントしたいと思います。

以下、丸出だめ夫さんに対する回答という形でコメントを書いてみます。

昨年の「『スティーブジョブズⅠ・Ⅱ』-誤訳の指摘」でも同じことを書きましたが……今回、回答といえるようなコメントを書いていますが、今後、似たような指摘があった場合にも同じことをするとは限りません。指摘に理があるか否かを検討し、必要があればどう直すのかを考えるだけならそれほどの時間はかかりませんが、回答コメントを書くとなると格段に長い時間がかかってしまいます。頭の中で瞬間的に考えたことをトレースし、それを他人にわかる形で文章にするというのは意外なほど時間がかかる作業なのです。ですから、今後、同じようなことがあってもコメントまでは書かず、直すべき点があれば直すだけにとどめる可能性が高いと思います。

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2011年12月 6日 (火)

ノンフィクション出版翻訳忘年会2011

昨日、恒例のノンフィクション出版翻訳忘年会がありました。今年はもともとの呼びかけ人でもあり幹事団の中心でもあった山岡さんが亡くなられたので、開催すべきかどうか、幹事団のあいだで話し合いもあったのですが、山岡さんがこういう会を作られた趣旨を受け継ぐべきとの考えで一致したので開催する運びとなったものです。

参加者は約160人と過去最高になりました。みなさん、話をするのに忙しかったのか、今年は食べ物がたくさん残っていたようです(あの会場の食べ物は、けっこうおいしいほうだと思うので、みなさん、忙しかったのでしょう)。

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2011年11月 9日 (水)

『スティーブジョブズⅠ・Ⅱ』-誤訳の指摘

アマゾンの『スティーブ・ジョブズ II』のカスタマーレビューに、古本一番堂という方から、訳に対する疑問点が列挙されていました

なお翻訳については突貫工事であったことを考慮してもあまりほめられたものではない。以下、気づいた箇所のごく一部を挙げる。

とのことで、全部で16点の指摘がありましたので、それぞれについて、簡単にコメントしたいと思います。なお、結果として、指摘どおりでなにがしかのミスがあり要修正なところが4点、あと、指摘そのものではありませんがこれを契機に見直したところ改良の余地ありでせっかくならと直すところが4点、残り8点はさまざまな理由から私としてはいまのママにすべきだと思いました。

この段階にきて直すべきと思ったところがなんだかんだでこれだけあるというのは、私としては多いなぁという印象です(『スティーブ・ジョブズ』が全2巻で通常の3冊分くらいある分厚い書籍だとはいえ)。6年前の『偶像復活』では出版された時点で訳を間違えていたのが1点、一応、意図があってやってみたけどイマイチ失敗だったとあとから改善したのが1点ありましたけど、そのあとは、あまりなかったのに……「『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』-誤訳の指摘」でも書いたように、人間がする以上、いくら注意してもミスをゼロにすることは不可能で、解釈間違いという狭義の誤訳さえやってしまう可能性も常にあるのは確かなのですが、それでもやってしまうと気落ちしますね。

ともかく、ご迷惑をおかけした読者のみなさまには深くお詫びします。また、今後はさらに精進していかなければならないなと改めて気を引き締めております。

以下、古本一番堂さんに対する回答という形でコメントを書いてみます。

今回は回答といえるようなコメントを書いていますが、今後、似たような指摘があった場合にも同じことをするとは限りません。指摘に理があるか否かを検討し、必要があればどう直すのかを考えるだけならそれほどの時間はかかりませんが、回答コメントを書くとなると格段に長い時間がかかってしまいます。頭の中で瞬間的に考えたことをトレースし、それを他人にわかる形で文章にするというのは意外なほど時間がかかる作業なのです(なんだかんだで今日、ほぼ1日がつぶれました)。ですから、今後、同じようなことがあってもコメントまでは書かず、直すべき点があれば直すだけにとどめる可能性が高いと思います。

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2011年11月 8日 (火)

『スティーブジョブズⅠ・Ⅱ』の翻訳について-その6

■余談

●スケジュール

いろいろ工夫した、だからなんとかなった、みたいなことを書きましたが、ふつうならどう工夫してもひとりで訳すのは無理だったと思います。私は翻訳者としてかなり手が速いほうですが、それでも、正直な話、この本だからなんとかなったのであって、別の本だったら絶対に無理です。そのくらいきついスケジュールでした。

この本だからなんとかなったというのは、過去、

と、4冊も関連本をやってきて、いろいろな意味で蓄積があったから。そうでなければ、あと2.5カ月は余分にかかったでしょう。同じペースで仕事ができたとして、蓄積がない分であと1カ月以上(事実関係の確認や関連の調べ物など、訳出以外にしなければならないことが大きく増える)。で、期間がのびれば無理が続かなくなるのでその分で1カ月強。合計2カ月強はのびるはずです。

そういう意味では、これも点が結べた例かなと思います。

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『スティーブジョブズⅠ・Ⅱ』の翻訳について-その5

■最後の最後で4週間繰り上げ

ジョブズが亡くなったことをうけ、10月6日、米国から、刊行日の4週間繰り上げという連絡がはいりました。

いや、これ、きつかった。

編集さんも「気を確かに聞いてくださいね」と前置きをされたほどだし、その前置きがあっても、一瞬、頭の中が白くなりかけました。

だって、残り7週間切った段階で4週間前倒しですよ?

そりゃ、もう印刷にはいってた米国はいいですよ。あと、英語からの翻訳や編集に日本語ほど手間がかからない欧州各国も、がんばればなんとかなる世界でしょう。でも、日本語は手間がかかるんですよ。

っつーか、ふつうに考えれば、刊行まで3週間というのは校了の段階で、あとは印刷・製本を急がせてぎりぎりってタイミングです。なのに、上巻のゲラは私の手元に届いたばかりだし、下巻なんてゲラも出ていません。

目の前にいる講談社の編集さんの責任でないことは重々わかっていて、なお、「そんな無茶な……」と非難する言葉がでかけたくらいの事態でした。非難の言葉は危ういところで飲みこみましたよ。困るのは編集さんも同じなのですから。

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『スティーブジョブズⅠ・Ⅱ』の翻訳について-その4

あいだがあいてしまいましたが、翻訳舞台裏の続きです。

■リスク

●見積もりの狂い

一番の危険は、「訳出のスピードが予想どおりにならない」です。まともにやる場合、訳出のスピードというのは狙えるものではなく、結果として出てくるものなので、やってみたら想像以上に時間がかかったりするわけです。今回の実績で見ても、章が移ったとたん、訳出のスピードが3割も上がったり下がったりなんてことがありました。内容、特に、基本的に事実が並べられているのか心情的な話が多いのかでスピードが大きく変化しますから(事実でもややこしい話が多いと遅くなりますが、まあ、伝記物だとそこまでややこしい話は少ないのであまり気にする必要はありません)。文単位でもややこしいというか手間のかかるものがときどき出てきたりします。平均して1時間500ワードくらい進んでいるところでも、それこそ、10ワードくらいの1文で10分も20分もかかるものがでてきたりしますからね。

著者との相性もあります。訳出しやすい人としにくい人というのがいるのです(私にとって訳しにくい人がほかの人には訳しやすい可能性はあります。だから「相性」です)。内容から予想したスピードとこれまた3割くらいずれるなんてざらにあります。『インターネットが死ぬ日』なんて、全編、予想の6割くらいしかスピードがでなくて苦労もすれば予定から大きく遅れる結果にもなりました。

今回は伝記物だし、内容的にかなり親しんだものだし、時間的制約がきついしで、もともとの設定スピードが『インターネットが死ぬ日』などの3割増しくらいになっていました(『インターネットが死ぬ日』で実際に出たスピードの2倍で訳出していかないと間に合わない)。どこをどう見てもギリギリであり、やってみたらそんなにスピードがでませんでしたm(._.)m という事態は十分に考えられました。

そのため、「とにかくやってみて、意外に進みが悪いなら、その時点で共訳者をたてるなどの対策を考えましょう」という話でスタートしました。実際にやってみるとスケジュールの前倒しもできないかわり、特に遅れることもなく、想定の範囲内くらいしかぶれなかったので、結局、ひとりで最後まで訳したわけです。

●分納関連

もうひとつの危険は、分納にかかわるもの。影響は当然にあるわけで(前述した以外にも細かいことを言いだせばいろいろと考えられます)、下手なやり方はで きません。時間的な面では、できる都度、それこそ章ごとにでも講談社さんに渡したほうがいいわけですが、そんなことをすればぐちゃぐちゃになるのは目に見 えています。というわけで、ギリギリこのくらいならという分け方を講談社さんと相談しつつ、進めました。

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