翻訳-スキルアップ(各論-品質)

2018年6月 8日 (金)

テトリス

今回、翻訳フォーラムシンポジウム2018で取りあげた話の流れや文脈と密接に関係しており、ある意味、別の側面と言えるんじゃないかと思っているのが、テトリスです。はい、一時期大流行したゲームのことです。知らないという方は検索してみてください。無料で遊べるサイトもあるようですから、やってみてもいいんじゃないでしょうか。けっこうはまりますよ。

■テトリスの例(Wikipediaの「テトリス」から)

Tetris_split_animation_2

実はずいぶん前からよく言っていて、『できる翻訳者になるために プロフェッショナル4人が本気で教える 翻訳のレッスン』にもちらっと書いているのですが、日本語は組み立て方であっちこっちの文からパーツがごそっと消える場合があり、それをテトリスだと表現しています。

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2018年6月 6日 (水)

翻訳フォーラムシンポジウム2018――アンケートから

翻訳フォーラムシンポジウム&大オフ2018、参加した方々にアンケートをお願いし、たくさんの方から回答をいただきました。ありがとうございます。不満や改善要望なども含め、今後の参考にさせていただきます。

訳出の実例を披露した私のセッションも、おおむね好評だったようでほっとしております。

私のセッションについて、あれは翻訳じゃない、新規執筆のようなもので通常の翻訳ではありえないというような感想をいただいたので、ちょっと補足などを。

セッション冒頭でも触れましたが、私がいま主戦場としている出版翻訳は訳者の名前で訳文が世に出ることから訳者の裁量がかなり大きいと言えますし、そのなかでも、私は踏みこんだ訳を作る方だと思います。対して産業翻訳ではいろいろな制約があり(特許とか制約が多そうですよね~。まあ、出版翻訳にもそれなりに制約はあるのですが……)、そこまで踏みこめないことも多いでしょう。また、踏みこんだ訳にすればするほど勝手訳に陥る危険性が高まります。なので、翻訳を勉強中の方やプロになって日が浅い方は安易にまねしないほうがいいと思います。

勝手訳については(↓)をご覧ください。

一般論としては上記のようになるわけですが……じゃあ、私自身についてはどうなのか、産業系の仕事をするときには「お行儀よく」するのかと言うと……基本的にそんなことはしません。それどころか、ああいう踏み込みを売りにしてきた、が正直なところだったりします。産業系の仕事にも、あそこまで踏みこんだ訳が評価される案件があり、私はなるべくそういう案件を選んできたと言ってもいいでしょう。そういう案件を「通常」と呼ぶのかどうかという問題がまた別にあるかもしれませんが、少なくとも私の場合、クライアント直はほとんどがそういう案件でしたし(というか、そこを買ってもらったから翻訳会社の売りより高い値段で仕事を請けられたんだと思います)、翻訳会社経由の仕事も後半はそういう案件ばかり請けていました。つまり、私にとってはそれこそが「通常」だったわけです。

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2018年5月31日 (木)

翻訳フォーラムシンポジウム2018の矢印図――話の流れ、文脈について

先週日曜日に開催した翻訳フォーラムシンポジウム&大オフ2018、いろいろな方がブログなどにレポートを書いてくださっています。ありがとうございます。

全体的なまとめとしては、屋根裏通信「翻訳フォーラム・シンポジウム2018 (1)」に始まる一連の記事を読んでいただくのがいいかなと思います。Sayoさんのまとめはいつも秀逸です。ライターとしてお金もらって仕事ができると思うほどに。

さて、私の発表関係では「矢印を使った説明がよかった」という評価をあちこちでいただいています。

というわけで、その部分のスライドを何枚か、ブログでも紹介しておきましょう。

■ぶちぶち訳(私の例でいうところの試訳0)

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1文単位で原文と訳文を見比べるとそれなりに訳せている。どれもまちがってはいない。いや、正しいと言っていい。でも、全体としてはなにが言いたいのかよくわからない。そういうときは、だいたい、こんなイメージになっているんだと思います。原文に存在する文と文の関係(←昔から「文脈」と言ってきたもの。今回のシンポジウムで出た「結束性」もその一部)が訳文に反映されていないため、流れがおかしくなっているわけです。本筋と付加情報を切り分ける標識もなかったり正しく機能していなかったりすることが多く、それも混乱を助長する要因でしょう。

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2018年5月30日 (水)

翻訳フォーラムシンポジウム&大オフ2018

先週日曜日は、このところ毎年恒例になっている翻訳フォーラムシンポジウム&大オフ。参加されたみなさま、ありがとうございました&お疲れさまでした。

今回は、海野さんご夫妻に、できたてほやほや、発売直前の『ビジネス技術実用英語大辞典(うんのさんの辞書)Ver.6』を会場特価で販売していただくなんていうこともありました。我々としては2冊目としてイチオシ辞書の新版なわけですが、それなりの値段なので(辞書は作るの大変ですからね~)、さて、どれだけ売れるだろうかと心配しないでもなかったのですが、どうやら、持参された分はほぼすべて売れたようです。よかった~。買った方々、活用してくださいね。

■私の戦利品

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今回のテーマは「つなぐか切るか」。私は、いま訳している書籍から、自動運転でさらっと訳しかけたら「ん? こりゃまずそうだ」と思い、いろいろな訳し方をざざっと検討して一次訳を作った例を紹介しました。

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2018年5月 9日 (水)

翻訳メモリー環境を利用している側からの考察について

ローカリゼーションおよび翻訳メモリ環境における翻訳者の役割」なる記事がタウ・トランスレーションという会社のコラムにありました。

このように、一対一対応の仕組み、再利用性という、翻訳メモリの優れた効率性に寄与している特徴そのものが同時に問題の原因ともなっていると考えることができる。

など、私としては、ブログなどで再三訴えてきたことが、ようやく、翻訳メモリーを使っている人からも出てきたかって感じです。いままでは、いつも、「そんなことはない。やり方次第であり、気をつければ大丈夫」という反応ばかりでしたから。

そういう意味で、ああ、ようやくここまで来たか、と感慨深いものがあります。

ただ、踏み込みが足りないなぁ、もう一歩踏みこんでほしかったなとも思ってしまいました。翻訳メモリー上であれこれやっているかぎり、そのもう一歩先に気づくのは難しいだろうと思うので、ここどまりになるのはしかたないのかな、とも思いつつ(だから、力をつけたければ翻訳メモリーは使うな、と言うわけですが)。でもだからこそ、もう一歩踏みこんでほしいところなのですが……って、話が堂々巡りになってますね(^^;)

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2017年2月22日 (水)

トランスクリエーション?

数年前から「トランスクリエーション」なる単語を耳にするようになりました。つい先日発売された通訳翻訳ジャーナル2017春号にも「広告・マーケティング翻訳の新しい形 トランスクリエーションとはどんな仕事か」という記事が載っています。

上記記事によると、トランスクリエーションとは「ソース言語のコピーが喚起する感情や印象を把握し、それと同じものを喚起させるようなコピーをターゲット言語で書くこと」だそうです。

私の正直な感想は「なにそれ。それって単なる『翻訳』じゃん」です。

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2017年1月11日 (水)

NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』-「遠回りこそ、最良の近道」肝臓外科医・高山忠利

NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』、録画しておいてときどき見るようにしており、このお正月明けには、2015年9月28日に放映されたこの番組を見ました(外科医とか言われると食べながら見る気にならず、ずっとほったらかしになってました^^;)。

「遠回りこそ、最良の近道」肝臓外科医・高山忠利(NHKの番組紹介ページ)

「遠回りこそ、最良の近道」肝臓外科医・高山忠利

上記番組紹介ページにも書かれていますが、高山医師は、普通は縛る必要がないと言われる微細な血管まで根気よく縛って止血することで出血量を抑え、普通なら不可能と言われる難手術を可能にしているそうです。この点について、番組でご本人がこんなふうなことを言われていました――

そこまでしても意味はないって言う人が多いけど、それはだめ。

このくらい縛らなくていいやと思ったら、必ず、もっと太い血管も縛らなくていいと思うようになる。だから例外は作らない。みつけた血管はすべて縛る。

高山医師は、徹底的な止血により、通常は1000mlと言われる手術中の出血量を300mlまで押さえ込んでいるそうです。5年生存率も56.8%という全国平均に対して63.8%とのこと。

この違い、大きいと見るのでしょうか、小さいと見るのでしょうか。

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2016年12月15日 (木)

翻訳支援ツールを使うと翻訳の品質は上がるのか

baldhatterさんが書かれた「緊急提言 --- Tradosで一人前の翻訳者???」に関連してとあるところで行われたやりとりで、(↓)のようなことを書かれた人がいます。

ツール使えなくてもすごい翻訳者がたくさんいる。使ったらきっともっとすごいんだろう。

おもわず「それはない」と突っ込んでしまいました。

翻訳支援ツールは、翻訳の品質があがるってうたい文句に入っていたりしますけど、ツール使ったら翻訳の品質は上がるなんてこと、ありません。少なくとも、上手な人の場合、それはない。統一すべき用語や表記の統一さえもおぼつかないとか最低限のこともできていないレベルなら、ツールに助けてもらって質が高まるということもありますが。でも、上手な人は、ツールを使っても使わなくても上手。なにをしなければならないのかわかっていて、どういう環境でもなにがしかの方法でやるべきことをきちんとやるからです。というか、上手な人の場合、そういう基本はできていて当然の話にすぎません。

質は人間が作り込むものです。ツールは、作り込む手間を省けるなら使えばいいし、そうでなければ使う必要がないという程度のものにすぎません。だから、ツールを使ったら質が上がるなんてことはありません。

逆に、ツールの特質に足を引っぱられて質が下がることなら、場合によってありえますが。

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2014年6月19日 (木)

機械翻訳の懐疑論者は大きな見落としをしているのか~見落としの見落とし~

1年ほども前のことですが、知り合いのブログに「機械翻訳の懐疑論者は大きな見落としをしていないだろうか」という記事が投稿されました。この記事に対する反論を書いてみたいと思います。

半年ほども前に書いたのにアップロードを忘れていました。

この話、特に後半は、機械翻訳を使う人たちに共通する論理で、いろいろなところで陰に陽によく言われます(前半は後述するように、このページを書かれた人のうっかりまちがいです)。このようにはっきりとウェブ上に書かれているのをほかに見た記憶がないので、ここへの反論という形で書きますが、一般論として理解すべき内容だと思います。

取りあげるポイントは2点。「スピード」と「質」です。

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2011年9月 3日 (土)

翻訳者は新しい表現を作ってはならない

「翻訳 ブログ」の「翻訳会社キーワードの挑戦」に「翻訳者は翻訳をしてはいけない」とありました。

ではどうやって翻訳するかというと、日本語の原文のキーワードをもとにして徹底的に公開されている英語の文書を調べ上げ、正しい訳文をコピペ、コピペ。なぜ僕が翻訳しないかというと、僕は単なる翻訳者なのでどの専門分野についてもずぶの素人、英語で各国の教育を受けた各専門分野の技術者、専門家が書いた英文の方が僕の書く素人の英語より正しいに決まっているからです。

言いたいことはわからないでもないですが……ソコが翻訳なの?と思わず突っこんでしまいました。

過去、このブログでも何度か書いていますが、翻訳というのは、下記3つのバランスをとることが大事であり、そのためにはこの3段階をぐるぐると循環するようにくり返す必要があります。

  • 内容を追って読む作業
  • 原文と訳文の過不足等をチェックしつつ読む作業
  • 訳文を訳文だけで読んだ場合の文章としての完成度をチェックする作業

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