『「スティーブ・ジョブズ」翻訳者の仕事部屋 フリーランスが訳し、働き、食うための実務的アイデア』
珍しくも、著書が出ます(↓の書影をクリックするとアマゾンのページに飛びます)。
『スティーブ・ジョブズ』を翻訳するプロジェクトは、当時の記事(『スティーブジョブズⅠ・Ⅱ』の翻訳について-その1)に記してあるとおり、あり得ないほどきついスケジュールでした。
今回の本『「スティーブ・ジョブズ」翻訳者の仕事部屋』では、そのあたりについて、そもそもどうして私が担当することになったのかの経緯からスタートし、本が出るまでをほぼ時系列で紹介してあります。もちろん、私から見た経緯であり、ほかの関係者が読んだら、少し違うなと思うところもあるかとは思いますが、当時のメモを掘り起こし、私としては、なるべく正確に再現したつもりです。このあたりは、講演会でなんどもしゃべり、毎回、かなり好評だった内容です(悪評は耳に届きにくいので、ほんとに好評だったのかと問われると返答に困りますが)。
実は、最後の後工程が7週間→3週間に半減されたときのどたばたなど、裏話を本にしたら喜んで読んでくれる人がそれなりにいそうだと、だいぶ前に書き留めたりしていました。ただ、内容が内容で、本にするなら、それこそ自費出版であっても、講談社で担当してくださった編集の方々に許可をもらう必要もあるだろうしとくすぶっていたのです。それが、ひょんな経緯で、講談社さんから出せるという話になってしまいました。いや、巡り合わせとはほんとに奇なものです。
『「スティーブ・ジョブズ」翻訳者の仕事部屋』を担当してくださった編集さんとあれこれご相談した結果、『スティーブ・ジョブズ』プロジェクトの裏話だけでなく、そこにいたるあれこれ、すなわち、勉強の仕方、仕事に対する考え方、私が会社員を辞めてフリーランスの翻訳者になった経緯(子育ての時間的やりくりを家庭内でつけるため)など、私という翻訳者がどういう経緯でいまのようになったのかまで含めて書くことになりました。私の人生をふり返るみたいな本になったわけです。翻訳というのは、それまで生きてきた人生のあらゆる面が「訳」にたってくれるわけで、そうなるのが当たり前と言えば当たり前なのでしょう。
自分の人生を本にするなど、少々気恥ずかしい気もしますが、エピソードの大半はこれまでどこかでは公開の場に書いてしまってもいますし、思い切ってということで書いてしまいました。
そうそう、本書の原稿を書いている間に、またも世界同時発売のきつい仕事をすることになってしまいました。『イーロン・マスク上・下』(文藝春秋)です。というわけで、『スティーブ・ジョブズ』のとき、世界同時発売なんて一度経験すれば十分、いや、二度とやらんと思ったはずなのに、なぜ、またもやることにしてしまったのか、そのあたりも、本書に記すことになりました。
翻訳の勘所みたいなこともいろいろと書いています。翻訳関係者には、自分ならどうするだろうと考えつつ読んでいただけるくらい詳しく、かつ、翻訳をしない人、翻訳ってどういうものかあまり知らない方には、「翻訳者ってこんなことを考えて訳しているのか」くらい思いながら、さらっと読んでいただけるくらいにわかりやすく書いたつもりです。
まあ、そもそも、私の人生って、けっこうハチャメチャらしいので(本人はそのときどきでベストと思う道を選んできただけなのですが……)、基本、なんだよこいつって楽しく読んでいただければいいのではないでしょうか。校閲の担当さんから「こんなおもしろい人がいるんですね」とのコメントが返ってきたとも聞いています(^^;)
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コメント
ウォルター・アイザックソン のBenjamin Franklin: An American Life.って翻訳する予定ってあるんですか?
読みたいです
投稿: kurosawa | 2024年11月21日 (木) 15時06分