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2020年12月19日 (土)

「訳者あとがき」について

ふとしたことから「訳者あとがき」について人と話をする機会があり、そういえば、この話、あちこちでしてきているのにブログに書いていなかったなと気づいたので書いておきます。

ページ数やスケジュールの問題で訳者あとがきなしとなることも少なくないのですが、書いてほしいと編集さんに頼まれ、かつ、書く余裕があれば、書くようにしています。

書くときの方針は、「読者のために」です。

あとがきの場合、読者のためにといってもいろいろとありえます。私は、「この訳書を読もうという気になって、書棚からレジまで持って行ってもらえるように」ということのみを考えて書いています。

書籍が続くようになった2冊目で、最初に書いた訳者あとがきが、本文を読んでいないとわけがわからないもので(逆に、本文を読んでから読むならあれはいいあとがきだといまでも思うんですが)、編集さんから書き直しを求められました。「目次を見て、本文をぱらぱらとめくり、あとがきを読んで、買うかやめるかを決める読者がそれなりにいる。そういう人も念頭に置いてほしい」と言われて。

目から鱗でした。私にとってあとがきは、必ず「あと」に読むものでしたから。

以来、本文を読んでいない人に「これはおもしろそうだ」と思ってもらうことを目標に訳者あとがきを書くようにしています(自分がおもしろいと思っている本を読んでもらうのは、読者のためになることだと思うので)。

ついでに書いておくと、そういう方針なので、上記2冊目以降の訳者あとがきには謝辞がありません。

謝辞は私から関係者に謝意を表す言葉であり、その部分は、感謝の意を表する相手のため、さらに言えば、究極には、お礼を言っておこうという自分のために書くものです。だから書かないことにしています。「読者のため」から自分が逃げないように。

読者のためになると思える謝辞なら書きますけど、私は、そういうケースに遭遇したことがないというのもあります。そこまで書籍の内容について書かれていたのに、突然、誰それさんにお世話になりました~的な話が出てくるのは、唐突で場違いと思ってしまう、そうならないように書ける自信がないというのもあります。いままで読んだあとがきで、唐突だと感じなかった謝辞がないっていうのもありますね~。

こういう方針で書いた訳者あとがき、わりと評判がいいというか、少なくとも、出版社さんの評価は悪くないようです。プロモーションとして雑誌に本の紹介文を載せてもらうのだけれど、すごくいい紹介文になっていると思うので、訳者あとがきを流用させてもらっていいかと言われたことが何度かあります。

もちろん、訳者あとがきの書き方にもいろんな考え方があっていいわけで、上記は、あくまで私の考えということです。

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