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2020年9月 4日 (金)

明示的に書かれていること・暗示的に書かれていること ―― 補足

昨日のエントリー、「書かれていること・書かれていないこと vs. 明示的に書かれていること・暗示的に書かれていること」で書き漏らしたことがあるので、書いておきます。

なにを明示的に書き、なにを暗示的に書くのか、それを切り分けるポイントとなるのは、昨日のエントリーに書いた「読者が持っているはずの知識・常識」以外にもいろいろとありえます。なかでも我々翻訳者に大きく関わるのが、言語による違い、です。

(このあたり、なんどかブログで取り上げています。ただし、それらを書いた当時は、明示的・暗示的という書き方の違いだという認識はありませんでした。この記事と、ここからリンクを張っている過去記事とを読み比べると、いま、一般的に言われたりしていることが、明示的・暗示的という考え方で整理できるということがわかるのではないかと思います)

『わかるものを省略』と『必要なことを言う』の違い」では、日本語とは、もともと、「必要なことだけを表に出す」言語で、基本的な考え方が英語と大きく違うと指摘しました。

英語は主語と動詞がなければ文としてなりたたないし、動詞によって目的語を要求するものがあったりして、基本的に文の形態がかっちり決まっています。

それに対して日本語は述語さえあれば文になってしまいます。あとは、必要なら動作主体を出したりしてゆくわけで、人によっては、日本語はほとんどが「補語」だと言う人もいるほどです。

言い換えると、英語は、話の展開に必要かどうかと関係なく、一定の情報を書かざるをえない。いよいよになったら、代名詞などで形式的にでも書かざるをえない。そういう言語です。対して日本語は、話の展開に必要な情報のみを出す言語。

ということは、英→日の場合、話の展開には不要だが英語として必要だから明示的に書いてあるものは、訳文側では、暗示的に書くようにしなければならない、つまり、文字にしてはならないわけです。これを明示的に書いてしまうと、回りくどくて読むのが大変な文章になったり、最悪、意味が変わってしまったりするのです。(「日本語はあいまいで非論理的か」)

逆に、日本語で暗示的に書かれているものは、英訳時、明示的に書かなければならないケースが出てきます。「日本語はあいまいで非論理的。主語も書かれていないから、英訳するのが大変」などと、英訳する人が愚痴をこぼすことがありますが、そのかなりの割合は、実は、日本語で暗示的に書かれているのに、それを復元できない、言い換えれば、日本語の能力が不足しているから、だったりします。まあ、原文を書いている人の日本語力がいまいちで、文がねじれているなど、翻訳者の責任じゃないこともままありますけど。

もちろん、英語と日本語の言葉数を比べると、必ず英語のほうが多くなるわけではありません。日本語には日本語の論理があり、英語には英語の論理があるので、日英時に消える言葉というのもあります。そして、そういう言葉は、英日時、どこからともなく出てこないといけないわけです。(「翻訳時に消える言葉・出てくる言葉」)

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