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2020年2月

2020年2月27日 (木)

insightの訳し方

ITmedia NEWSの記事「insightの翻訳に求められる洞察力」を知り合いが取り上げ、自分はinsightをどう訳しているかという話をしていたので、私はどうしているのだろうと思い、ここ数年の仕事についてざっと確認してみました。

insightって、たしかに、訳しにくいんですよね。

辞書だと、研究社大英和なら「眼識, 見識, 識見; 看破力, 明察, 洞察」なんて訳語候補が並んでいますが、正直なところ使いにくい言葉ばかりです。よっぽどお堅い文脈でないと、ちょっと。私は、産業系も昔は論文とか堅いものだったので洞察とか使えたと思うのですが、最近はマーケティング系ばかりだったりしますし、書籍も一般向けのビジネス書という位置づけなので、ちょ~っと使いにくかったりします。中身がまじめな分、せめて、言葉遣いくらいとっつきやすくしたいですし。

海野さんの辞書でも、「洞察(力), 眼識,見識, 卓見, 識見, 慧眼[炯眼](ケイガン), 見通し, 先見性, 先見(の明)」と、この単語については、これといった候補がありません。

なので、毎回、文脈に応じていろいろ工夫することになります。っていうか、してきたはずだと思って確認してみました。

比較的使いやすいのは、上記記事でも取り上げられていますが、「知見」だと思います。実際、私も、一番よく使っているのは「知見」だったようです。まあ、そう思っているってことはそうなるのが当たり前ですよね(^^;)

でも、「知見」と訳したのは、せいぜい2割くらいのようです。

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ひょうたん図

先日、ツイッターで、翻訳業界のイメージとしてひょうたん図の話が取り上げられていて、そういえば、あの図、ブログに上げておいたほうがいいなと思ったので紹介します。

「翻訳者の原点」と題した2012年JTF翻訳祭のプレゼンテーションで使ったものなので、もう、ずいぶんと古いものなのですが、イメージそのものは変わっていないと思います。

■翻訳業界のイメージ

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市場の大部分は、品質はそんなに高くなくていいから安くというもの。ここが大きいし、最初はここから入るはずなので、つい、これしかないと思いがちですが、実はそんなことなくて、小さいながら、高品質・高価格の市場が存在します。

「高品質・高価格の市場なんて昔の話で、いまはもうない」と言う人もいますが、そんなことはありません。その人はみつけられていないのかもしれませんが、いまも、新規開拓でそういう取引先がみつかりますし、そうやってみつけている人があちこちにいます。もちろん、そうやってみつけられている人はごく少数なので、ないとしか思えない人がたくさんいるのもしかたないとは思いますが。

せっかくですから、図の見方も少し解説しておきましょう。プレゼンテーションでも同じようなことを語りました。

ポイントがいくつかあります。

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2020年2月12日 (水)

『ぼくは翻訳についてこう考えています』

翻訳に対する柴田元幸さんの考え方をまとめた本。あちこちで話したり書いたりされたものをまとめたもの、1項目1ページくらいにまとめたもののようです(Kindleで読んだのでよくわかりませんが)。

何カ所か、さまざまな意味で「おお!」っと思ったところを紹介します。まあ、なんというか、翻訳と真剣に向き合うと、みんな、似たようなことを考えるんだなぁって感じです(おこがましいぞ>自分)

■1. 「理想の翻訳」

「翻訳なんて、全部、間違っている」
「どう間違うのがいちばんいいのか」

同じことをセミナーとかではよく言っているので(「翻訳したら必ずなにかずれる」「全体としてのずれが小さくなるように調整する」)、ブログ記事も書いてるんじゃないかと探してみたのですが、みつけられていません。書いてないのかなぁ。「Stay Hungry. Stay Foolish.」に「何をどう訳しても、いろいろなところにズレが生じます。ある面のズレを小さくすると別の面のズレが大きくなったりするので、こうすればいいという道はありません」とは書いていますが。

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