翻訳を勉強する会・番外編 「訳文による絵の描き方」-参加御礼+α
「翻訳を勉強する会・番外編 ― 訳文による絵の描き方」、無事終了しました。参加してくださったみなさん、ありがとうございました&お疲れさまでした。事務局として奔走し、スムーズな進行を実現してくださったお三方、ありがとうございました&お疲れさまでした。
ツイートまとめ
2019/07/14大阪 翻訳を勉強する会・番外編 実況ツイート #翻勉2019
事務局さよさんのブログ
「訳文による絵の描き方」(井口耕二さんセミナー「翻訳を勉強する会・番外編」)
前半2時間は、翻訳フォーラムのシンポジウムで話した内容やブログ記事に書いてきた内容を集大成したような形にしました。関西だと、私の話は初めてという人が少なくないはずですから。なんども聞きに来てくださっている方の顔もありましたが、あちこち、新ネタをできるかぎり混ぜ込んだので、聞くのが2度目、3度目という方にとってもそれなりの話になっていたのではないかと思います(思いたい^^;)。
後半1時間は、翻訳を勉強する会の事務局をされているお三方からいただいた訳文を使い、訳文をブラッシュアップするにはどうすればいいのか、訳文側できちんと絵を描くにはどのあたりを見ていくといいのかなどの話をする、ということになっていました。
このあたり、企画段階の話がさよさんのブログに書かれていたりするのですが( 「翻訳を勉強する会」番外編・裏話など)、これ、実は私にとってもすんごく怖い企画でして。だって、どういう原文が使われるのかも、どういう訳文が出てくるのかも、まったくわからない状態で、「訳文の公開検討会をやります~」と宣言するわけですから。私にとっても初のやり方なので、経験からなんとかなるでしょと思えることもありませんし。
番外編の1週間くらい前には事務局お三方の訳文もいただきましたが、当日は、事前打ち合わせなしのぶっつけ本番です。考えるべきポイントだと私が思う点を投げかけ、その場でお三方に考え、ああでもない、こうでもないとぶつぶつつぶやいてもらうのが一番だと思ったので。事前に打ち合わせておいたら、やりとりがスムーズに流れて聞いている分にはなんかよさげかもしれませんが、実際の仕事でやるようなふらふらふらふら行ったり来たりにならず、いまいち参考にはならないでしょう。やるならこの形、とは思っていましたが、でも、怖い状況であることもまちがいありません。「どう思います」と投げかけても反応が返ってこないとか、それこそ、なんかとんちんかんなことを投げかけてしまうとか……。(もちろん、なにを尋ねられるかわからない事務局お三方にとっても怖い話だったはずです)
結果としては、事務局お三方とも、思ったことをちゃんとつぶやいてくださいましたし(みんなで、しかも、公開でやるのですから、心の声を外に出していただかないと)、シーンとして時間だけがすぎていくようなことも(たぶん)ありませんでしたし、それなりの形になったかなとほっとしています。私の話をあちこちで聞いている東京組もいましたが、そのあたりからも、わざわざ来てよかったと言ってもらえましたし。
この訳文公開検討会、さよさんが裏話で書かれているように、私からの提案でやることになったものです。
こういう提案をしたのは、実は、10年以上も前から、機会があったらやってみたいと思っていることがあったからです。プロ翻訳者数人に集まってもらい、原文の絵について検討したあと、今回の公開検討会でやったようなことを参加者相互でやってもらう、それをくり返して、実際に訳文を仕上げていく、そんな勉強会です。できれば、普通に訳してから相互検討を通じて仕上げたあと、方向性を変え、たとえばかた~く訳す、柔らかく訳す、人間中心に訳す、人のにじみを極力抑えて訳すなど、何種類も訳文を仕上げてみる、というところまで。検討は、なるべく参加者同士でやってもらう、漏れているところに気づいたら私も口を出す(私が口を挟むのは、最初多いかもしれないが、だんだん減っていく。最後、私は聞いているだけになることが目標。そうなれば、少なくともナニを検討するのかについては、私のノウハウすべてを伝えられたことになるので)、という感じで。
でもこれ、実際にやるのは難しいんですよね。時間とか費用とかも問題ですが、そもそも、参加者が絵を描くという意識のある人たちばかりでないとだめですし、レベルもある程度そろっていないとできませんし。立教で非常勤講師をした2年間、試してみたりしましたが、参加者が学生さんだし、将来的にも翻訳を仕事にする気のない人が多いというレベルでは、私がやりたいと思ったところまではとてもとても到達しませんでした。
でも今回は、大阪で勉強会を続けている方々に呼んでもらっての勉強会。だったらできるのではないかと思ったのです。原文の絵については、勉強会で検討しておいてもらえば、その先、訳文でどう絵を描くのかの話ができるのではないか、と。
まあ、正直なところ、私が思い描いていたようなことをするには課題が難しすぎた気もします。もっとやさしくて、プロ翻訳者なら原文の絵で迷うことはまずないってくらいのもののほうが、同じ絵からどこまで違う訳文が作れるのかとか、とか、訳文の書き方で絵のどこがどのくらいズレるのかなどの話はしやすかったかもしれません。でも、うまく行くかどうかもわからない企画のためだけに、事務局お三方に課題を訳し、事前検討会をしてもらう、というのはさすがにどうよ、と思うので、大阪でやられている勉強会に乗っかる形が一番だろう、番外編だし、というわけで、今回のような形式に落ち着いたわけです。
一読、二読くらいではいまいち絵が描けないほど課題が難しかったおかげで、循環とフィードバックでピント合わせの好例にはなったと思います。
それにしても……本番1週間ほど前、お三方の訳文を受け取ったときは、ほんと、途方に暮れました。2~3回読んだくらいでは、ポイントとしてどこをどう取り上げればいいのか、まるで浮かばない。そもそも、あの課題、完全に私の守備範囲外なんですもん。「課題はこれになりますけどいいですか」と打診されたとき、思いっきり守備範囲外でも訳文をもらえばなんとかなるべーと思ったのは甘かったかも……と、正直なところ、血の気が引きました。原文も一緒に持ち歩き、時間があったら読んでみて……方向性がまとまるまででも、10回以上は読んだでしょうか。循環やフィードバックのぐるぐる、たいがいは1回転とか、せいぜい2回転で次に行けるのに、今回は、あっちもこっちも数え切れないくらいぐるぐるぐるぐる回しまくりました。きっとこうだろうと思っても、ぐるっと回ってほかの方向から検討すると矛盾する、あ、やっぱ違うわって何回なったことか。
いまふり返ると、こういう話も当日すればよかった気がしますね~。正直、てんぱってて、それどころじゃなかったんですわ(^^;)
ともあれ、聞きに来られた方々には喜んでいただけたようですし、私にとっても、昔からやってみたかったことが多少なりともトライできて貴重な体験となりました。これも事務局お三方の協力あったればこそ。ありがとうございました。
懇親会は、おいしいお料理をいただきながら、たくさんの人とお話をさせていただきました。ああいうとき、せっかくだから、できれば全員とと思うのですが、実際には、どなたとお話をしても盛り上がってしまうので、時間切れでご挨拶もできずに終わってしまった方が少なくありません。すみませんが、またの機会にということにさせてください。
そうそう、実は、つい先日、還暦を迎えたのですが、今回、還暦祝いのデザートとメッセージカードまでいただいてしまいました。
■還暦祝いのデザートとメッセージカード。めっちゃお世話になった事務局のお三方と。
メッセージカードはジョッキに入ったビールを模した物。私、ビール党なので~。
2次会はすぐとなりのカフェで。飲む方も食べるほうも懇親会でたっぷりいただいたので、2次会はコーヒーだけにしましたが、隣では、なんか、ワゴンデザートを「全種類1個ずつ」と頼んであっという間に平らげている人がいました。
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