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2019年5月29日 (水)

翻訳フォーラム・シンポジウム2019~足さない・引かない~

この週末は、毎年恒例となっている翻訳フォーラムのシンポジウムでした。記録的な猛暑のなか、来てくださったみなさま、ありがとうございました&お疲れさまでした。会場設営その他、運営のお手伝いをしてくださったみなさん、ありがとうございました&お疲れさまでした。物販に駆けつけてくださったみなさん、ありがとうございました&お疲れさまでした。

おかげさまで今年も盛況で、各地から翻訳者が160人くらいも集まり、12時から5時過ぎまで、今年のテーマ「足さない・引かない」を軸に、翻訳とは本来どうあるべきなのかを語り続ける会となりました。専門分野に関係なく、翻訳に共通する基本について、心に響いたものをなにか持ち帰っていただくことはできたでしょうか。

翻訳業界では、最近、機械翻訳の導入うんぬんに絡んで、あれこれ考えて足したり引いたりできるのは人間ならではある、翻訳は足したり引いたりしてなんぼ、というような意見を見るようになりました。対して我々は、原文と同じ絵を届けられる訳文にするため言葉を足したり引いたりするのは「足さない・引かない翻訳」である、逆に、字面で「足さない・引かない」を実現したがゆえに「足しちゃった・引いちゃった翻訳」になるケースもありうる、足し引きの判断はあくまで絵を基準にすべきだと考え、今年のテーマとして取り上げることにしました。

足したり引いたりしているように見えるけど絵で評価すれば足しても引いてもいない訳、足したり引いたりしているように見えて絵も足したり引いたりしている訳、足したり引いたりしているように見えないかもしれないけど絵で評価すれば足したり引いたりしてしまっている訳と、いろいろな訳がありえますし、実際に存在します。目の前にある原文と訳文がどういう関係なのかは、著者や原文の読者、訳文の読者といった人間の思考や感情や意図といったものを考えないと判断できません。ちなみに、このあたりは、いまの機械翻訳がまっさきに切り捨てている部分で、人間による翻訳の強みとして活用できる部分であり、そういう意味では、人間ならではの翻訳であると言えます。

個人的には、去年くらいから、訳文の日本語(私は英日が中心なので例もだいたい英日)についても触れられるようになってきたのがうれしい点です。シンポジウムを始めたころは、絵を描くとはどういうことか、という部分だけで1日が終わってしまっていましたから。シンポジウムにはリピーターのみではなく、新しい人も参加されるので、基本の部分は毎回くり返し紹介するべきだと思うのですが、それを踏まえた先の話もできるようになってきたというか。ようやくここまで来たという感じですね。私としては、ここ15年あまり、このあたりが興味の中心になっているものですから。日本語ネイティブなのに、(私も含めて)みんな、日本語を知らなさすぎだと思うんです。日本語を勉強する人が増えて、日本語の書き方による微妙な絵の違いが議論できるようになれば、翻訳の世界が大きく変わるんじゃないかと私は期待しています。

余談ながら、変わるのは日本語への翻訳における訳文だけではありません。日本語から他言語への翻訳についても、日本語の読み取り精度があがり、その結果、訳文が変わってくるはずです。

それにしても……毎回思うんですけど、こうやってあれこれ考えてまとめ、ほかの人にもわかるように話をしようと準備をすると、いろいろと整理ができたりいい説明を思いついたりするものですね~。焦点がクリアな分にはいいじゃんと必ずしもならないのだけれど、それをイメージしてもらえる説明がいままでできずにいたんですが、今回、シンポジウムの数日前にようやく、ああいう説明方法があるじゃんと気づきました。時期が時期で、写真を撮っていたら山のように蚊に食われてしまいましたが、説明としてはよくわかっていただけたようでうれしいかぎりです。

夕方からは大オフ。こちらも100人近くが集まる盛況となりました。新しい方もたくさん来られていましたし、私がこの世界に入ったときからの知り合いというか、ということは先輩にあたるような懐かしい顔も来られていたり。6時半の開場から9時すぎまで、あっという間だったのも例年どおり。人数も多いし、どこに行っても話が盛り上がってしまうしと、全員と話をするなどとても無理という状態で、ご挨拶もできずじまいになってしまった人がけっこういたのではないかと思います。なるべく、知らない顔が多いテーブルを回るようにしての結果ですので、あしからずご了承くださいませm(._.)m

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