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2019年5月 8日 (水)

millions、billions……

某所で帽子屋さんから出てきた話題なんですが、思い出したことがあるので書いておきます。

millionsとかbillionsとかは、出てきたら、事実を確認しないとまずい表現です。millionは百万、その複数形だから数百万とは単純に言い切れないからです。

とにかく多いんだよって抽象的な意味合いのこともあるので、まずは、そういう意味なのか、具体的な数字をあいまいに表現しているのかの判断が必要です。

英語の場合、millionsとは、millionを使うのがふつうの数字全体をカバーします。辞書なら、ランダムハウス(100万以上10億未満)やジーニアス(100万台《100万以上10億未満》)に書かれているような数字です。たとえば、millions of dollarsと言えば、1.5 million dollarsかもしれないし、15 million dollarsかもしれないし、150 million dollarsかもしれないわけです。half a millionという表現もありますが、そこまで含むかどうかは微妙でしょうね(前述の辞書はどちらも排除している)。

で、ここからは私が何年も前に経験した話。

企業のニュースリリースを訳していたときのこと。invested millions of dollarsみたいな表現が出てきました。施設新設を発表するニュースリリースだったので、表に出ている情報はなく、事実が確認できません。小規模な施設なので、それほどお金がかかるとも思えませんが、さあ、数百万ドルなのか、それとも数千万ドルと言うべきなのか。迷いに迷った末、1千万ドル行ってない可能性が高いんじゃないかと、数百万ドルにして提出(いろいろあって問い合わせはできなかった)。その半年後くらいに、別リリースで15 million dollarsだかなんだかという数字が出てきて、あちゃーとなりました。

15 million dollarsとかって、数百万ドルも数千万ドルもハズレなわけで、一番いやな数字です。日本語の「数~」って、2~7、8くらいの数字がイメージされることが多く、9もアリだけど、1はないと思うからです。日本語の場合、単数・複数は同形が基本で、ことさら複数を意味する言葉が入ると複数であることが強調されるので(←私見です。これも記事を書こう、書こうと思いつつ書けてないんですよね)。

ともかく、この数字が確認できていたら、訳語は「1千万ドル超」とかそういう流れにしていたでしょうか。文脈によっては、「1千万ドルは(ゆうに/軽く)かかる」みたいな表現もありえるでしょう。

このように、英語はかなり広い範囲をmillionsの一言でカバーしますが、日本語だと、

  • 百万ドル超
  • 数百万ドル
  • 1千万ドル超
  • 数千万ドル
  • 1億ドル超
  • 数億ドル

くらいに訳し分ける必要があるわけです。「百万ドル単位の数字」みたいな言い方ができればそれが一番簡単なんですが、この言い方は下手に使うと悪目立ちするのでなかなか使えません。

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