『つまずきやすい日本語』
「millions、billions……」の記事に関連して、さきのさんから、「数百万ドルはかかる」という表現だと、せいぜい700~800万ドルで1千万ドルはかからないと理解する人がけっこういそうだという指摘がありました。
この場合の「は」は下限を意味する言葉であって、上限は特定されていません。つまり、上は無限まで含意することになります。表現としてはそういうことになりますが、それが実際どう理解されるのかということは(←翻訳で使う表現としてはこれが大問題)、また別の問題になります。
たしかに、下限を示す形っていうのは、そのあたりの数字だと思ってほしい、上限無限だってことに気づいてほしくないってときにもよく使うわけで、逆に言えば、そう理解する人がいてもおかしくないわけです。いや、一般に少なくないからそういう言い方が使われるとも言えるでしょう。
さらに、「日本語の「『数~』って、2~7、8くらいの数字がイメージされることが多く」についても、さきのさんから指摘が。自分もそう思うけど、「ヨノナカでは2~3なんだと言い張る人をたくさん知ってます」、と。
ですね~。
「数~」は、大きく分けて、2~3派、3~4派、5~6派といろいろいるようです。私は、基本的に、5~6派。でも、ほかの理解をする人がいるのは知ってますし、「数~」のカバー範囲はそれなりに広いとも思っているので、2~3派とか、ほかの理解をしている人とかいてもそれはそれだと思ってますけど。
それはともかく。
ことほどさように、同じ言葉でも人によって理解が違っていたりします。そういう、人による「脳内辞書」の違いがコミュニケーションのつまずきを生む、というのが、表題の本、『つまずきやすい日本語』(NHK出版)の骨子です(前振り長ぇよ)。
著者の飯間浩明さんは国語辞典の編纂者で、言葉についてのあれこれをツイッターで発信されているので、ご存じの方も少なくないでしょう。言葉との向き合い方は、いろんな側面のバランスがよくて好感が持てると私は思います。
この本の内容、翻訳者なら先刻ご承知の話ばかりのはずなんですが、逆に言えば、この本を読んで、えっと思うなら、訳文の作り方を根本的に見直す必要があることになります。もしかしたらと気になる方は一読をお勧めします。いまならKindle Unlimitedにも入っているので、このサービスが使えるなら無料で読めますよ。
『つまずきやすい日本語』(紙版)
『つまずきやすい日本語』(Kindle版)
Kindle Unlimited、著者への支払いはどうなっているのだろうと思ったら、読まれたページ数に応じて支払われるシステムのようです。自分も本を作る側にいるということもあり、著者や関係者に収益が入らない形は極力避けようと、私は、新刊が残っているかぎり新刊を買い、古本は買わないようにしています。そういう意味で、Kindle Unlimitedはどうなのかと思っていたのですが、そういう話なら安心して使えますね。
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