産業系の新規開拓で訳書は武器になるのか
特別寄稿ということで記事を書いた通訳翻訳ジャーナル、発売になりました。予約された方のところには、そろそろ届くころでしょうか。
そんなことを考えていたら思いだしたことがあります。通訳翻訳ジャーナルの記事には書きわすれたんですが(思いだしても入れるスペースがなくて割愛したと思いますが)、「訳書があれば違う」というのもよく言われたんですよね。「Buckeyeさんは訳書があるからいいけど……」と。
たしかに、訳書を産業系の営業に活用している人もいます。でも、私は、産業系の新規開拓時、訳書の話を出したことがありません。取引しているうちに、「~という本、訳者が同姓同名ですけど、もしかして本人ですか」とばれたことは2~3回ありましたけど。
翻訳会社の人は翻訳や翻訳者に関心があるので私に訳書があることもご存じの方が多いのですが、私は、ほとんどソースクライアント直で仕事をしてきたので(翻訳会社の新規開拓は独立前がほとんどで、独立後は1社だけ。手伝ってほしいと先方に言われて手伝ったのは、何社かありますが)、新規開拓はソースクライアントのみのようなものでした。ソースクライアントの担当者は、私のことなんて知りません。もうもう、どこの馬の骨、ですよ。アプローチしても完全に無視されたり、いくらでもありました。
まあ、その中には、訳書があると言えば興味を引かれて話くらいは聞いてくれた人がひとりかふたりかいたかもしれません。でも、私としては、純粋に、その会社から出てくる案件をどう訳すのか、その品質と値段の見合いで評価してほしかったんですよね。そこを評価してくれる先と仕事がしたかったというか。そういう人の役にたちたかったというか。
前述のように翻訳会社の人は翻訳や翻訳者に関心がありますし、訳書があるというのは、業界的に一定レベル以上の力があるという証明にもある程度なりますから、翻訳会社相手に営業するのであれば訳書はけっこう武器になるのかもしれません。
ソースクライアント直の営業でも、そのクライアントの専門領域ぴったりの書籍を訳しているのであれば、訳書が武器になるかもしれません。私の場合、産業系は技術中心、出版はビジネスものと領域がずれていたので、そういう意味でも、あまり利用価値はなかったんじゃないかと思います。
あと、出版で本を訳しているあいだ、自分のところの仕事がおろそかになるんじゃないかと思われる危険も考えられるので、どちらがいいのか、けっこう微妙なケースもあるんじゃないでしょうか。
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