『日本語におけるテキストの結束性の研究』
翻訳フォーラムシンポジウム2018の準備を進めていたとき、登壇者のひとりに紹介されて買った本です。これはよかった。ここしばらくに読んだ参考書で一番のヒットかもしれません。
本書は、シンポジウムのテーマ「つなぐか切るか」と深く関わる「結束性」なるものについて研究し、書かれた論文が本となったものです。もとが博士論文で一般向けとは言いがたく、その分、読むのが大変だと言えばそのとおりなのですが、内容は、すごくいいと思います。
前に「『わかるものを省略』と『必要なことを言う』の違い」という記事を書いていますが、そのあたりについても、はっきりと書かれています。
■本書p.66より
統語的に必須である要素が表層に存在しないことをその要素の「非出現(non-realization)」と呼び、基本的に日本語ではこの状態が無標である
無標というのは、特に意図がなければそうする形というくらいの意味です。逆に有標はなにか意図があるわけで、その分目立つことになります。
非出現が無標ということは、そこにないのは省略されたからではない、単に基本の形になっているだけのこと。そのとき、その言葉を出現させればそれは有標となり、なにかの意図を示す。このあたりは、「言葉を増やすと文意が変わる」に書いたとおりです。私がなんとなく感じていたことを文法的に表すと、「日本語においては非出現が無標」になるのでしょう。
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