翻訳支援ツールを使うと翻訳の品質は上がるのか
baldhatterさんが書かれた「緊急提言 --- Tradosで一人前の翻訳者???」に関連してとあるところで行われたやりとりで、(↓)のようなことを書かれた人がいます。
ツール使えなくてもすごい翻訳者がたくさんいる。使ったらきっともっとすごいんだろう。
おもわず「それはない」と突っ込んでしまいました。
翻訳支援ツールは、翻訳の品質があがるってうたい文句に入っていたりしますけど、ツール使ったら翻訳の品質は上がるなんてこと、ありません。少なくとも、上手な人の場合、それはない。統一すべき用語や表記の統一さえもおぼつかないとか最低限のこともできていないレベルなら、ツールに助けてもらって質が高まるということもありますが。でも、上手な人は、ツールを使っても使わなくても上手。なにをしなければならないのかわかっていて、どういう環境でもなにがしかの方法でやるべきことをきちんとやるからです。というか、上手な人の場合、そういう基本はできていて当然の話にすぎません。
質は人間が作り込むものです。ツールは、作り込む手間を省けるなら使えばいいし、そうでなければ使う必要がないという程度のものにすぎません。だから、ツールを使ったら質が上がるなんてことはありません。
逆に、ツールの特質に足を引っぱられて質が下がることなら、場合によってありえますが。
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コメント
質については間違いなくそうだと思います。
速度(生産性)は変わる可能性はあるのでしょうか。
引用した発言の
「すごい」
が何を指しているかがわからなかったので…。
投稿: Shira | 2016年12月19日 (月) 15時18分
Shiraさん、
速度は、ケースバイケースだと私は思っています。
まずは、なにをもって「速度」というのか、です。100%マッチも処理量としてカウントするなら、少なくとも改版モノについては、確実に速度が上がります。一般に、「翻訳支援ツールを使うと速度が上がる」というのは、この意味であることが多いようです。
新規翻訳換算(というのもなにをどう計算するのかってのが問題なので、ここでは、傾斜単価から算出される1日分の稼ぎを新規部分に設定されている単価で除したもの、としておきましょうか)だと、傾斜条件と人による、でしょう。
100%マッチ部分が払われないなど、条件が悪いと必ずしも速度向上(=収入アップ)になりません。また、マッチ部分についてもついつい確認して直してしまうようなことをすると、速度が落ちるケースが多いと思われます。
時速1000ワードなど、素の翻訳スピードが速い人は確実に遅くなります(=1日あたりの収入がダウンする)。
結局、傾斜条件がそこそこで、翻訳速度がもともとあまり速くない人がマッチ部分の良し悪しを無視すれば(マッチ部分そのものの良し悪しという面でも自分が訳す部分との相性の良し悪しという面でも無視すれば)速度はあがると思われます。
投稿: Buckeye | 2016年12月21日 (水) 10時13分
回答ありがとうございます。
禿頭帽子屋さんの記事も読んでお話の全体像がようやくわかってきました。
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100%マッチ部分が払われないなど、条件が悪いと必ずしも速度向上(=収入アップ)になりません。また、マッチ部分についてもついつい確認して直してしまうようなことをすると、速度が落ちるケースが多いと思われます。
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この部分、なるほどと思いました。誰のためのどんなツールか・その効果は何かという話を飛び越して、使用者の目がまず技術的なことに向く傾向はあちこちに存在する気がします。
投稿: Shira | 2016年12月24日 (土) 20時02分