JTF翻訳祭2016
昨年まで、JTF翻訳祭は翻訳会社寄りにシフトしてきました。JTFという組織自体、法人会員の力が強い上(法人のほうが会費収入が多く議決権も法人優位となっているので、こうなるのは当たり前)、翻訳祭の参加者も法人のほうが多いので、それも致し方ないと言えば致し方ないことではあります。
結果、翻訳者の参加はここしばらく減ってきていますし、去年などは、「おもしろそうなセッションがないから行かない」と個人翻訳者のあいだでささやかれるほどになりました。正直なところ、私だって、常務理事という立場がなければ、去年は行ったかどうかわかりません。どのセッションにも参加せず、ぶらぶらしていた時間があったのは久しぶりでした。
でも、「それでいいのか? 最終的に翻訳の業界を支えているのは個人翻訳者であり、翻訳会社と翻訳者が協力するのが本来の姿だろう」という意見もあり、今年の翻訳祭は、実行委員のほとんどを個人翻訳者が占めるというかつてないパターンで準備を進めることになりました。もちろん、法人向けのセッションもなくすわけにはいかないので、一定のバランスは取っていますが、例年に比べて個人向けセッションが充実していることは、プログラムを見比べていただければわかると思います。
さて、これで、ふたを開けてみたら、個人翻訳者の参加が増えなかった……なんてことになれば、法人向け中心のプログラムに揺り戻ることになるでしょう。当たり前ですよね。そして、そうなれば、個人翻訳者の参加はいっそう細り、さらに、法人向けが増えるという循環になりかねません。個人翻訳者が幸せになれるかどうかは関係なく、翻訳をビジネスとして見たときのいい形を追求する場になりかねないのです。翻訳会社と翻訳者が対話できるのが、JTFの強みというか、少なくとも翻訳者にとってのメリットだと私は思っているのですが、それが、翻訳者の声は聞かない、聞かなくていいに向かってしまう恐れがあるということです。
逆に、今年、たくさんの個人翻訳者が参加すれば……翻訳祭は今後もバランスを重視することになるでしょうし、さらには、JTFにおける個人理事の発言力が強くなることも考えられます。たくさんの翻訳者が動けば、翻訳会社側としても無視できなくなるからです。消費税が増税されたとき、翻訳業界でも消費税の支払いについていろいろともめ事がありました。あのとき、この問題にきちんと対処すべきだという流れがJTF内にできたのは、個人翻訳者理事の声に法人理事が耳を傾けてくれたからです。JTFがそういう場であり続けるためには、今回の翻訳祭に多くの翻訳者が参加する、そういう形でいわば1票を投じることが必要なのではないかと私は思っています。
プログラムの内容としては、参加費を払って1日費やすに値するものにしてあります(私も実行委員に名前を連ねています)。「これだけのものにしても個人翻訳者の参加が増えないのであれば、個人翻訳者向けにあれこれする必要はないのでは?」と言われても仕方がないくらいに。参加して損はありません。ないと私は信じています。
私は、先日、JTFの理事を退任しましたが、いまも、個人翻訳者の理事が何名もJTFでがんばってくれています。彼らを後押しすることは、巡り巡って自分のためにもなると思うんです。少しでも行こうかなという気がある人は、ぜひとも参加をm(._.)m
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テーマ:考えよう、翻訳のこと ~ともに歩む翻訳の未来へ~
日時:2016年11月29日(火)9:30~20:30(開場9:00~)
会場:アルカディア市ヶ谷(東京、市ヶ谷)
詳細はJTFのウェブサイトで確認してください。
下の画像をクリックしても、JTF翻訳祭2016の公式パンフレット(PDF)に飛びます。
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コメント
JTF翻訳祭、行こうかなと思う人は今日中に申し込もうね。今日が申し込み締め切り日。事前申込時点で定員に達したら当日の参加受付はないので。 https://www.jtf.jp/festival/festival_top.do
投稿: Buckeye | 2016年11月22日 (火) 19時27分