『スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで』
この9月8日に新しい訳書が出ます。めちゃくちゃだと言われることの多いスティーブ・ジョブズが、なにを、いつ、どのように学んで希代の経営者と言われるほどの人物となったのかに焦点をあてた本です。
ジョブズについては伝記などたくさんの本が書かれていますが、ジョブズに近しい人のあいだでは、エキセントリックな面が強く描かれていると不満の声もあったようです。実は、本書の著者もそのひとり。そして、その彼がジョブズを25年にわたって取材してきたジャーナリストであったことから本書が生まれました。
ジョブズについての本を初めて読む人にはもちろん、他書をいろいろと読んできた人にとっても新たな発見がたくさんある本になっています。他書をいろいろと読んできたし、訳してもきた私が言うのですから、まちがいありません(^^;)
電子版も出る予定です。いつとは聞いていませんが、もしかすれば紙版と同時、少なくとも、そう遅くならずに出るのではないかと思っています。
例によって裏話も少し。
実は、本書、出るまでにずいぶんと時間がかかっています。
まず、原書が出るのがかなり遅れています。私がこの本を担当することになったのが2013年12月に行われた忘年会の席上。その時点の話は、「年明けには原稿が届く予定。ただ、ここまでにくり返し遅れているのでもう少し遅れるかも。といっても、さすがに今回は~という状況なので、そろそろ届くはず。年度替わりくらいと思ってもらえるといいかも」でした。で、翌2014年12月、やはり忘年会の席で編集さんとお目にかかり、「あの本、どうなりました?」「あ、覚えていてくださいました?」「そりゃもう。おもしろそうで楽しみにしている本ですし」という会話がなされたというような状態で。結局、原著が発行されたのは、2015年春でした。
原著が出てからもあちこちで時間がかかってしまいました。本書は普通のノンフィクション2冊分+αくらいという分厚いものですが(なので日本語版は上下巻)、それでも、2015年春から翻訳を始められれば、早ければ2015年中くらいに出せる可能性があります。ですが、私の手がなかなか空かず(前の本に手こずった)、訳稿の提出が年度末。さらに、出版社さんが後工程にそうとう力を入れられた結果、最終的な発行が今年9月になってしまったわけです。
時間はかかってしまいましたが、手をかけた分、いろいろな意味でいいものには仕上がったと自負しています。写真ページもそのひとつ。写真は権利関係などから割愛されることも少なくないのですが、今回は、すべての写真が日本語版にも入っています。プライベートなものなど珍しい写真が何枚もあって、これが割愛になったら悲しいなぁと思ったのですが、出版社さんも、なんとかしようとがんばってくれたようです。装丁も、いろいろと工夫されています。上下巻を並べてみるとおもしろいと思います。
早く読みたかったよ~という方には、申し訳ありませんm(._.)m
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訳者あとがき
5年前の2011年10月5日、アップルのスティーブ・ジョブズが亡くなった。日本でも大々的に報道されたし、あちこちで特別番組が放送されたので記憶している人も多いだろう。一私企業の経営者にしては破格の扱いだった。
私は、そのころ、本人が初めて公認した伝記『スティーブ・ジョブズ I・II』(講談社)を出す準備の詰めに追われていた。
スティーブ・ジョブズについては、この公認伝記をはじめ、伝記が何冊も出ている。そのどれかを読まれた方は先刻ご承知のことだが、彼の人生は波瀾万丈(はらんばんじょう)だ。若くして画期的なパーソナルコンピューターを生みだして時の人となるも、経営者として未熟にすぎたため、みずからが創業したアップルを追われてしまう。その後NeXTコンピューターとピクサーを経営するが、いずれも失敗続きのじり貧で行き詰まる。そして、アップル創業で得たばく大な資金もさすがに底をつき、もうおしまいだと思われたころ、ふたたび輝きはじめる。ピクサーの成功に続き、アップル復帰後は破竹の勢いで成功を積み重ねていくのだ。
ジェットコースターのような人生で、「事実は小説よりも奇なり」を地でいく。読んでいておもしろく、私も、翻訳をしながら大いに楽しませてもらった。だが、同時に不思議でもあった。若いころに問題となった気性の激しさなどは年を取っても残っている。なのに、ビギナーズラックにも見える大成功以外は失敗ばかりだった人間が、いつのまにか、希代の経営者と言われるほどの手腕を発揮するようになっているのだ。なにがあった。彼はどうして変わったのだ。いや、なぜ変われたのだ。伝記の行間からそこはかとなく感じるものはあってもよくわからない。知りたい。そう、強く思った。
その想いに応えてくれたのが、本書『スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで』(原題:Becoming Steve Jobs)である。
本書は、ジョブズが追放されるアップル第1期から亡くなるまで、ほぼ時系列で展開する。伝記を読んだ人にとっておなじみのエピソードが多いが、焦点は「学び」に当てられており、見えてくるものは違う。そうか、このとき、ここが変化したんだ、変化が現れていたんだという気づきがたくさんあるのだ。もちろん、各エピソードはきちんと描写されており、伝記を読んだことがない人が置いてけぼりになる心配もない。
そう、本書はジョブズの成長物語である。アップル追放から失敗続きのジョブズ1・0が、希代の経営者と言われたジョブズ2・0へと成長する様を描いたものなのだ。
なお、著者はジョブズと親しいジャーナリストであり、オフレコの話もいろいろと聞いてきたらしい。裏の顔、プライベートな顔を見てきた人物が書いているのだ。そのため、取材で構成された中立な文章ではなく、もっと踏み込んだ空気感があるものとなっている。このあたりを他書と読み比べてみるのも一興だと思う。
2016年8月
井口耕二
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