仕事にも「枠組み」がある
翻訳をする場合、私は「枠組み」が大事だと考えています。
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枠組みは、翻訳作業だけでなく仕事についてもあると思います。一つひとつの案件で、「なにが目的で、なにをどうすべきなのか」が異なるのです。
こんなことを書こうと思ったのは、とあるSNSで、以下のような要旨の質問を見かけたからです。
登録会社から「緊急対応案件」ということで相談があった。トライアルを通過すれば、本発注にもなるしトライアル分の支払いもされるとのこと。
「できるだけ早く出してくれ」と朝に言われたが、いろいろと予定があってトライアルを提出したのは夜。最終的に受注にいたらず、仕事は先に提出した人のところへ行ったらしい。
このような経緯でトライアルに対するフィードバックが欲しいと申し入れるのは失礼にあたるだろうか。自分としては、今後の参考にフィードバックが欲しいと思う。また、トライアルの依頼をして、その後何もないのもおかしな話なのではないか。
SNSにも書いたのですが……このトライアルについては、目的に照らして十分なフィードバックがすでに返ってきていると私は思います。さらに、「トライアルの依頼をして、その後何もないのもおかしな話なのではないか」とフィードバックを求めれば、「そんなことが言えた義理じゃないだろ」と思われても文句は言えない経緯なのではないかとも思います。
■この仕事の枠組み
この件は、すでに登録してある会社から特定案件についての打診があったものです。このトライアルで一番の枠組みとなるのは、「いますぐの対応力」でしょう。「緊急対応案件」で「できるだけ早く出してくれ」と言われたことからそういう推測が可能です。また、最終的に「仕事は先に提出した人のところへ行ったらしい」とのことから、結果論として、「いますぐの対応力」が求められていたと確認できてもいます。
■フィードバック
そう考えると、「先に提出した人のところへ仕事が行った」が、この件においては、立派なフィードバックであることがわかります。「求められたことができなかった」と言われたに等しいわけです。
■そんなことが言えた義理じゃない?
「そんなことが言えた義理じゃない」と思われるというのは、かなり厳しい評価です。そういう評価を下されても文句が言えないと私が考える理由は、以下のとおりです。
「緊急対応案件」で「できるだけ早く出してくれ」と言われたにもかかわらず、この方は、予定を優先し、この案件を後回しにしたわけです。もちろん、そうしなければならない理由はあったのでしょうけれども、それでもなお、この案件を打診してきた会社にしてみれば、「自分たちよりもほかが優先された」以外のなにものでもありません。「急ぎだと頼んだのに後回しにした人、その程度の軽い扱いしかしてくれなかった人に、『トライアルの依頼をして、その後何もないのもおかしな話なのではないか』なんて言われたくない」……そう思う人がいても不思議はないと思いますし、先方の立場から見れば、それはそれで一理あると思うわけです。
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