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2013年12月 4日 (水)

JTF翻訳祭2013参加レポート

11月27日に開催されたJTF翻訳祭2013、参加レポートを簡単にまとめておきます。

前日、有志による前夜祭(セミナー&飲み会)に参加して夜遅くなったのでちょっと心配だったけど、ちゃんと時間には市ヶ谷に到着。そして、ショックであぜん。市ヶ谷駅が入っているビルの2階が改装中なのか閉鎖されており、スターバックスが閉まっている。グランデラテを朝1本、昼にもう1本、買うつもりで二重タンブラーを持ってきたのに……スタバで買うつもりだったのでほかに飲み物を用意してきてないのに。気落ちして、思わず帰ろうかと思ってしまいました(嘘)。

仕方がないので、会場まで行く途中のコーヒー屋さんでコーヒーをタンブラーにいれてもらいました。

会場に到着し、受付をすませて朝一のセッションへ。

■「オンライン辞書を効果的に用いた翻訳術──編集者が提案する理想的な翻訳文(出版できる翻訳文)の作り方」(トラック5、初級レベルの翻訳者向け)-株式会社研究社 編集部 金子 靖(かねこ・やすし)氏

初級レベルというのがちょっとなんだけれど、朝一のセッションだと私にとって興味があるコマはこれくらいだったし、質疑の時間にこれはどうしてもというものがあったので。

内容は表題からイメージされるものとはちょっと違っていました。辞書の使い方、つまり、辞書をどう使ったらきちんとした翻訳文ができるのかという話だと思っていたのですが、研究社さんのオンライン辞書の紹介があったあと、基本的に、原文と訳文が出てきて、どう考えてどう訳すかみたいな話でした。

話が終わって質疑の時間に入ると……ばばっとたくさんの手があがる。私も手をあげました。そのなかで指名されたのは松田さん。「リーダーズ第3版をCD-ROMなどで販売する予定はないとのことなのですが……」という話に対し、講師役をされた研究社の編集さんは、「どうこう言える立場ではないので、会社に戻って伝えます……あ、そうだ、データで欲しいという方、どのくらいおられますか?」

この質問に、みんな、ばばっと手をあげる、あげる。私なんか、この話を訴えるためにこのセッションに出たわけで、単に手をあげているだけじゃなくてもっと押さなきゃと思い、「要ります! 出たら買います!」と座ったまま声をあげました(←セミナー会場でこういうことをするのはマナー違反。よい子はマネしないように^^;)。

この編集さんには、セッション後にご挨拶をしたほか、お昼もご一緒させていただいていろいろとお話をさせていただきました。また、展示会「翻訳プラザ」の研究社ブースに来られていた営業の人にもご挨拶をしてリーダーズ第3版データ販売をプッシュしておきました。CD-ROMなどの媒体を作るなんてコストをかけなくてもいい、データのダウンロード販売でいい、と。私以外に何人も同じようなプッシュをした人がいるようです。

これで、研究社さんもまじめに検討してくれるでしょう。その結果、やはりダメとなるかもしれませんけど。

■パネルディスカッション「機械翻訳による競争戦略─機械翻訳で差別化できるか─」 (トラック2、翻訳会社の経営者・幹部向け)

パネリストの顔ぶれを見てあれっと思いあとで確認したら、やはり、アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)のセッションでした。

これは正直、期待はずれでした。競争戦略や差別化の話はまったくと言っていいほど出てこなくて。パネリストがふたりが自分のところのシステムを紹介したほか、山本ゆうじさんが用語集の話をしたらほぼ時間。

これならパネルディスカッションの「Specialist or Generalist, the translator's dilemma?」 (トラック4、日英翻訳者向け)へ行ったほうがよかったなぁという感じ。実は、交流パーティー後の2次会で、まさしく、いままでにない形で機械翻訳を活用する戦略と言うべきモノをとある翻訳会社の人から聞いたのですが、そういう話がされるべきこのセッションではぜんぜん出ませんでしたから。

以下は、話を聞きながら私がツイートした内容です。

もう半分くらい来ているのにならないっすねぇ。QT @ericoba #jtf2013 パネルディスカッション、いつディスカッションになるのかな…

機械翻訳による翻訳プロセスの最適化について山本さんがプレゼン。「翻訳者にとっては正確な用語適用が必要、それのみが必要」……そのとおり。だから機械翻訳はダメなのよね。用語適用もあやふやだし、用語適用以外までやってくれちゃうから、かえって足を引っ張る。 #jtf2013

「翻訳者にとっては正確な用語適用が必要、それのみが必要」って導入からどう「機械翻訳による翻訳プロセスの最適化」につながるのかとわくわくしていたら……結局、UTXの話だけで終わっちゃった。 #jtf2013

「用語集を作る」ことを目的に用語集を作ろうとしても、人間、やれるもんじゃないと思うなぁ。楽になるステップを踏むと自動的に用語集ができるのであれば、皆、やるだろうけど。 #jtf2013

「原文を機械翻訳で訳しやすくする」ねぇ。前編集で翻訳精度が上がるのはまちがいないわけだけど、それは人間がやるわけで、そんな手間をかけていたら機械翻訳を使うメリットなくなるのでは? 後編集も必要なんだし。 #jtf2013

「原文に表記間違いなどの誤記があると機械翻訳では対応できない。だから前編集が必要」。それはそうなんだけど、「機械翻訳で差別化」がテーマじゃなかったの? #jtf2013

「機械翻訳を活用する肝」の3、「人間訳・機械訳の評価が必要」っていうのもそのとおりなんだけど、その方法が確立されてないのが問題なんだよね。機械翻訳系で使われている評価方法ってたくさんあるけど、どれも、イマニ、イマサンだし、人間翻訳の評価方法も確立されてないわけで。 #jtf2013

翻訳ワークフローの支援ツール、STAR Jamesの説明。手間が省けるのは確かだと思うけど、ここは人間翻訳でも機械翻訳でも同じ部分の話だと思うけど。うーん、「機械翻訳で差別化」の話は結局なしで終わりそう。 #jtf2013

「今後、機械翻訳は早い、安い、品質そこそこの新マーケットに使う。機械翻訳の出力をポストエディットで早く安く訳す。これは機械翻訳がなければできない市場」という話をモデレーターの長瀬さんが提出。「機械翻訳で差別化」はこの一言だけ、かな。 #jtf2013

質問「機械翻訳の出力として出てくる日本語に対し、その日本がどの程度成立しているのかを評価しないのか」……回答「やっているが、システムの評価が主眼でいまのような話には使えない」 #jtf2013

質問「希少言語を取り扱っているので、用語集を作るのが大変。簡単に作れる方法はないのか」……回答(山本さん)「用語集作成は専門職。それを簡単に作りたいなら情報を絞る。訳語とのペアだけ作るとか」 #jtf2013

「用語集作成を機械的に支援してもらうことはできないのか」……「そういうことに転用できる機能(用語抽出)は実装されている」 #jtf2013

機械翻訳のセッションは題目とずれていたと思う。差別化戦略の話が中心になると思っていたのに。ああいう内容なんだったらJATのSpecialist or Generalistに行けばよかった。 #jtf2013

■「小説の新訳、絵本の翻訳~アメリカ文学と絵本翻訳の現場から~」(トラック6、中級以上の翻訳者向け)-翻訳家、早稲田大学文化構想学部教授 青山 南(あおやま・みなみ)氏

「機械翻訳 開発者とLSPが語る、今、そして未来」(トラック1、クライアント向け)、パネルディスカッションの「Specialist or Generalist, the translator's dilemma?」 (トラック4、日英翻訳者向け)、さらには「秀丸エディタと秀丸マクロで、作業効率アップ─秀丸エディタと歩む翻訳人生─」と迷ったのだけれど、最終的にはこちらへ。

新訳というものが出るようになった経緯の紹介から、「海外に対する対等な視線」「同時代性」と翻訳の関係などに話が発展していきました。さらには絵本の翻訳にからめ、翻訳の音楽性といったことにも発展。

詳しくは、(↓)のリンク先にあるツイッターのまとめをご覧ください。

JTF翻訳祭:青山南先生セッションの呟きまとめ

産業系の話はビジネス的な色合いが濃くなりがちで、それはそれでいいのだけれど(私は好きだし)、こういう翻訳の原点を思い出させてくれるような話もほっとしていいものですね。10年くらい前だと、翻訳祭で文芸系の方のお話だといねむりしがちだったのを覚えているのですが(^^;)、それは話者の力量が違ったということなのか、私の興味関心が変化したということなのか、どちらなのでしょう。

■パネルディスカッション「SNS活用で翻訳をステップアップ!~SNSが結ぶ絆と知恵~」(トラック6、中級以上の翻訳者向け)

パネリストが皆、少なくともオンラインでは知っている人ばかりのセッション。印象に残ったのは上林さんの「SNSはインフラ化している」、「テクノロジーは身体の拡張」「脳みその延長上にある」……だから、深く悩まずツイートボタンを押すという話かな。あと、ツイッター初めて平均レート2割アップという長尾さんの話。誰にでも実現できる話じゃないけど、でも、うまい方向に転がせればありうるわけで、こういう話が出てくるようになったのはとてもいいことだと思います。

こちらについても、詳しくは(↓)のまとめをご覧ください。

【JTF翻訳祭2013】 トラック6セッション4 「SNS活用で翻訳をステップアップ!」

■交流パーティー

今年は流れが少し変わって、会長挨拶のあと、ほんやく検定1級合格者の表彰式があってから乾杯だった。ほんやく検定1級合格者の表彰式は、合格した人を少しでも多くの人に知ってもらい、チャンスにつなげてもらうために行っているわけで、そういう意味では、パーティー半ばのざわついているところでやるより、みんなが注目してくれる最初のほうがいいとは思います。ただ、会場の人たちにとっては、飲み物と料理を前にずっと待たされるわけで……もう少し短めですませられればよかったんじゃないかなぁと思ってしまいました(←何人かから同じことを言われました)。

今年は登壇しなかったのでたくさんの人に次々話しかけられるということもなく、ごく普通に、それなりに食べてそれなりに飲んで、知り合いに挨拶したりいろいろおしゃべりしたり、さらには、新しい人何人かとご挨拶したりとゆったり過ごしました。

そうそう、途中、会長には、翻訳者への支払を外税に移行された件でお礼を言っておきました。なんといっても業界最大手ですから、かなりの翻訳者がその恩恵にあずかれるはずです。もっと幅広くそういう動きがでるようにと画策していた業界的な仕組みの構築は遅れてしまって今回の消費税アップには間に合わなくなってしまいましたが、そのあたりについて、理事会や雑談のなかでくり返し訴えていたので。まあ、私がなにも言わなくてもちゃんとやられた可能性もたかいとは思うのですが。

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