先日、案内メールを発送したノンフィクション出版翻訳忘年会ですが、翻訳者については「実力と実績のある翻訳家」というあいまいな表現になっています。そのため、「~という状況なのですが、これで参加資格はあるでしょうか」などと聞かれることがけっこうあります。
回答としていろいろなことを言ってきました……違和感を覚えつつ。
なんといっても基準があいまいですからね。正直なところ、幹事間でも明確なコンセンサスがなく、人によって考えが異なっていたりもします。それはまずかろうとなり、どういう基準にするのがいいのか、幹事間で話し合ったこともあります。そのとき、私は、いっそのこと、訳書X冊以上などの外形的基準を導入したらという立場を取りました……これまた違和感を覚えつつ、でしたが。
実はこの会は、もともと、2011年に亡くなった山岡洋一さんが中心となっていたものなのですが、「実力と実績のある翻訳家」という表現にされたとき、山岡さんの頭のなかには外形的な基準があったそうです(この話は、亡くなる前年にうかがいました)。であれば、外形的な基準を表に出してしまうほうが参加者は迷わなくてすみますし、幹事の負担も減るはずだと思ったのです。
外形基準を決めたら決めたでややこしい面もあるんですけどね。「訳書X冊以上」としたらしたで共訳書は数えるのか、共訳書を数えるとき人数に上限は設けるのか(訳者がずらりと10人も並ぶようなものもありますからね)、監訳者の名前で出ていて監訳者あとがきに「翻訳は~さんに頼みました」とクレジットされているものは数えるのか、下訳は数えるのか、商業出版ではなく自費出版のものは数えるのか……ざっと考えても、このくらいは問題が出てきます。
いろいろと議論がありましたが、最終的には外形基準の導入は見送りとなり、今年も、「実力と実績のある翻訳家」という表現のママになったわけです。
そして、先週の土曜日に行われた洋書の森のセミナーと懇親会に参加したとき、ボランティアスタッフをしているという方からも冒頭の質問をされました。いつもの違和感を感じつつ、なんて答えようかなと考えたとき、息子が通っていた小学校での出来事を思い出しました。
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