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2012年12月 3日 (月)

『レスポンシブル・カンパニー』

今月、12月7日に訳書が出ます。アマゾンなどではだいぶ前から予約が始まっていたのですが、いろいろと忙しくてブログで紹介できずにきてしまっていました。

本書は、パタゴニアという、衣料品などアウトドア系グッズの製造・販売をしている会社の創業者、イヴォン・シュイナードが書いた本で、地球環境に対する責任なども全うする形で事業を進めようと呼びかけるものです。

この本にかかわることになった関係でパタゴニアさんのイベントに出かけていったことがあります。基本的にプレス向けのイベントとのことだったのでまともな格好をしていったほうがいいかなぁと思いつつも、すごく暑い日だったもので、スーツなどとても着られないと、結局、ジーンズにTシャツで出かけてしまいました。ところが、パタゴニアの関係者は、社長も含めて短パン姿。いや、まあ、『社員をサーフィンに行かせよう』を書いた人の会社なのだから、それも当然と言えば当然なんですが……

本書は、訳した私も山などのアウトドアが好き、担当編集さんもちょこちょこ山に行かれるということで、関係者にアウトドア系の人が多い仕事でした。そもそも、アウトドアをキーワードに「やりましょう」となったような流れでしたから。こういう流れで仕事になることもあるんだなぁと、ちょっとうれしい案件でした。

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訳者あとがき

パタゴニアという会社をご存じだろうか。衣料品を中心にアウトドア系のグッズを製造・販売している会社だ。直営店を中心に展開しているため量販店では基本的に取り扱っていないし、まして、百貨店や大型スーパーのアウトドア用品売り場でも見かけない。そのため一般的な知名度はそれほど高くないが、アウトドア系の世界では有名なところである。

先日、直営店のひとつに立ち寄った。店内に置かれたパタゴニア製品の特徴はよく言えば定番品、悪く言えばぱっと目を引くデザインのものがない。安いものがないのも特徴だろう。

これはいずれもパタゴニアの基本方針が形になったものだ。はやり廃りの激しいはっきりしたデザインの製品にすれば買い換えの需要が見込めるかもしれない。だが、そのとき、古い服はゴミになる。安い製品も同じだ。気軽に買ってもらえるし、コストダウンした製品は傷むのも早く、すぐに買い換えなければならなくなる。売る側にとっては、ある意味、いい話ばかりだ。だが、壊れた製品はゴミになる。環境を大切に思うなら、多少高くなってもしっかりしたもの、長く使えるものを作ったほうがいい。それがパタゴニアの考え方なのだ。

いま、世の中は安値に流れていると言われている。安くなければ売れない、と。もちろん、まったく同じものなら安い方がいいと誰しも思うはずだ。問題は、なにかを削らなければ安くならないこと。無駄なコストを削減するのはいいが、次第に、このくらいならと本質的なところまで削った製品になってしまう。その行き着く先は、しばらく前に世間を騒がせた食肉やお菓子の偽装に耐震偽装だろう。

実はこれは、産業革命からずっと続いている流れである。大量生産によってムダを省き、生産性を上げて安値を実現してきたわけだ。しかし、その流れはもう限界だ。これ以上は続けられない。だから、責任ある企業となろう、オーナー、社員、顧客、地域社会、自然という五種類の利害関係者に対する責任を全うする形で事業を展開しよう――著者らは、本書でそう呼びかけている。

「それはそうかもしれないが、でも、まず稼げなければどうにもならないじゃないか」と思う人も少なくないだろう。理念としてはわかるが、背に腹は代えられない、と。正直なところ、私もそう思った。

これは誤った通念だと著者らは言う。責任ある進め方に転換するとコストダウンになる場合も多いし、売上が増えるケースも多いというのだ。その証拠として挙げられているのは、安売りの雄、ウォルマート。世間の圧力に負け、ポーズとして責任ある進め方をしてみたところ、大幅なコストダウンになったというのだ。いまでは、「持続可能」を全社的なスローガンとして責任ある事業を強力に推進している。また、著者のひとり、イヴォン・シュイナードらが立ちあげた「1%フォー・ザ・プラネット」という組織があるが、景気が大きく落ち込んだ時期、その加盟企業のトップ五社は史上最高の売上を記録したという。景気が悪くなり、財布のひもを締めなければならなくなると、尊敬・信頼する会社から買おうとするからだ。

日本は、ゴミの分別やリサイクルなど、草の根で環境保護を進める活動がかなりおこなわれている。それはそれで大切なことだが、家庭ゴミは廃棄物の二五%にすぎず、残り七五%は企業から排出されている。このように産業規模で発生している負荷は、産業規模で減らさなければならない。そのためには、事業の進め方を責任ある形に転換しなければならないわけだ。

「そう言われても、社内で権限がある立場でもないし……」というのも、取り越し苦労だと著者らは言う。確実にコストダウンになることから始めればいいというのだ。具体的な方策も、巻末にリストアップされている。

本書を読むと、責任ある企業になるべきでない理由もなれない理由もないことがわかる。あとは、目標に向けた一歩を踏みだすか否かだ。

二〇一二年一一月
パタゴニアで買ってきたサーモン・ジャーキーをつまみつつ 井口耕二

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