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2012年5月23日 (水)

専業独立前後の動きとその結果

ツイッターで、翻訳者になる経緯の具体例が知りたいという話があったので、自分の場合についてざっと書いてみましょう。私が独立したのはもうかなり前のことなので、いまとは状況が違うという意見もあるとは思いますが。

会社員との二足のわらじから独立に向けて動きはじめたのがいまから15年前の1997年。具体的な動きは、翻訳者のデータベース的なところに登録するとともに、翻訳雑誌巻末のリストから選んで翻訳会社にアプローチするというもの。また、翻訳者のオンラインコミュニティーでも積極的に動いてアピールするようにしました。

■トライアル結果

取引先拡大をめざして動いた結果は以下のようになりました。

  • データベースを見たと連絡をもらったのが2社。両社ともトライアルを経て取引することに。
  • こちらからアプローチしたのが2社。片方は単価が折り合わず話し合いのみで終了。トライアルもなし。もう1社はトライアルを経て取引することに。
  • とある翻訳者コミュニティーで専門が近いとわかっていた人の紹介が1社。トライアルなしでいきなり仕事が送られてきた。

結局、このときトライアルを受けたのは3社(2社は英日、1社は英日・日英)。3社ともトライアル後すぐに合格の連絡が来ました。初仕事は、いずれも登録から1週間以内だったと記憶しています。

■単価交渉

それまで二足でやっていたところは、英日仕上がり400字1300円でした。論文主体だったので、原文換算で9円/ワードというレベル。ここはたまたまスタートしたところで(トライアルもなしでした)、先方の言い値がこの数字だったのです。

二足から専業へ移行するにあたり、「かなりの単価で定常的に仕事が取れるか否かを見極める」ために取引先を拡大したので、単価交渉は強気で臨みました。高い単価で仕事がこないなら独立をあきらめて会社員を続ける、高い単価で定常的に仕事が来るなら独立するという判断のためなので、高単価で仕事が来なくても、ある意味、困らないという立場だったわけです。これも強気で臨みやすかった要因だと言えるでしょう。

具体的には、そのころエージェント経由の一般的な案件で上限に近いと言われていた2000円/仕上がり400字(私の分野だと15円/ワードくらい)を提示しました。

1社は、そういう値段で出せる案件がないとの回答で、トライアルもせずに話し合いのみで終了。

1社は「2000円になると出せる案件がぐっと減る。1800円ならかなり出せると思う」と言われたのですが、「2000円で仕事が来なければそれでもかまいせん」と2000円に。ここは業界大手(DHCさん)で、「たくさんの翻訳者を抱えているところからトップレートでも仕事が取れるなら独立してもやってゆけるはず」という考えで選んだところなので、単価交渉には一番強気で臨んだ次第です。

2社は2000円/400字ですんなり契約。片方は日英もあって、そちらは3500円/200ワード(原文換算で8円/文字くらいか)を提示。どちらも、それまで自分がしていた仕事とは分野が異なるので、ここは、分野拡大の可否を見ることも目的としていました。

知り合いの紹介で話がきたところは、先方から1800円/400字が上限とのオファーで1800円に。ここは私にとって一番の専門となるエネルギー案件をたくさん抱えており、独立後の展開を考えると断るのは惜しいと思い、これ以上、単価で突っ張るのはやめにしておきました。

なお、この時点で、仕事経験は累計130万ワードくらいだったと思います。一般的に言って3~5年程度の仕事経験にあたるというところでしょうか。また、私は最近、業界内でかなり知られた存在になってしまいましたが、このころは二足で名前も顔も出しておらず、翻訳会社にとっては無名の新人という存在でした。

■新規開拓した翻訳会社との取引

新規開拓4社からは、その後次々に仕事を受注しました。まだ二足で処理量が限られており、小さな案件を選んで打診してくれていたわけですが、それでも、このあと、退社するまで仕事が途切れたことはなかったと思います。

これならやってゆけると退社を決意。翻訳会社にも「×月×日に退職して翻訳専業になりますのでよろしくm(._.)m」と挨拶をしておいたところ、退職の1週間ほど前から打診が急増。退職直後からでかけるのもままならないほど仕事をすることになりました。移行がスムーズでよかったとも言えますが、椅子やテーブルなど、仕事環境を整える時間がとれなくて、3カ月ほど腰痛などに悩まされつつの仕事となってしまいました。

なお、二足で最初に取引をしていた会社に対しては、独立後、「他社はもっと高いので」と1300円/400字→1600円/400字に値上げをしたところ、仕事量が激減しました。

■その後の展開

その後は直取引をめざして営業して歩く、友人の紹介で書籍に絡む(『地球データブック』を数人で訳す)といった形で展開し、翻訳会社経由の割合が独立直後の95%から1~2年で5~10%まで落ちました。ただ、これはこれでスケジュールの変動がはげしくてきついとわかったため、翻訳会社経由とソースクライアント直接が半々程度になるように調整。いまは、それに書籍が加わって、翻訳会社経由・ソースクライアント直接・書籍で1/3ずつという感じになっています。

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コメント

当時のトライアル状況ですが、いま(2012年)とあまり変わらないと言えるでしょう。翻訳フォーラムでも、「合格するのは10社に1社だと思え」「登録しても仕事はなかなか来ないのが普通」といった話がよく出ていました。

投稿: Buckeye | 2012年5月25日 (金) 09時07分

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