« 翻訳料不払いを繰り返している会社 | トップページ | 『なんでもわかるキリスト教大事典』 »

2012年4月 3日 (火)

翻訳料不払いを繰り返している会社-一般的な調べ方

前回のエントリー、「翻訳料不払いを繰り返している会社」で「このブログにおいてこれ以上の詳しいことは書けません」と書きましたが、その後、もう少し書ける点があることに気づきました。取引先の信用をチェックする方法です。

新しい取引先についてはいろいろな形で調査をおこなうとともに、少しずつ取引を拡大してお互いの信頼関係を築いてゆくのが基本となります。まともなところであっても、自分とは相性が悪いなどのケースもありますからね。

では、調査はどのようにおこなえばいいのでしょう。

まともに信用調査をしようと思えば帝国データバンクなどを使うことになりますが、今回ほど悪質な場合は、そこまでしなくても比較的簡単な方法で確認できる可能性があります。

参考情報

■ネット検索の活用

調べたい翻訳会社の名前と「不払い」などのキーワードを掛け合わせて検索し、当該翻訳会社から不払いにあったなどの情報が出てくるようなら要注意です。

ただ、そうやって出てこなかったからといって安心はできません。表に出てくるのは氷山の一角で、よほどくり返していなければこの方法ではチェック不能です。前のエントリーでも指摘したように、そういうことをネット上に書くと「営業妨害だ」「名誉棄損だ」として訴えられる危険性がありますし、そこまで明確に知らなくても、「なにか仕返しをされたら……」と心配で書かない人が多いからです。

「営業妨害だ」「名誉棄損だ」として訴えられる危険性について。

指摘が真実であっても、「ここは不払いをくり返している」と名指しで書いた場合、「営業妨害だ」「名誉棄損だ」として訴えられる可能性があると先のエントリーで書きましたが、これは、ある意味、当たり前です。指摘された側としては、そんな真実を表に出されれば営業上不利益を被るでしょうし、自分の名誉が毀損されたと感じることもできます。だから、訴えをおこせるわけです。

訴えられたほうとしては、それが真実の指摘であって営業妨害や名誉棄損ではないと証明できれば勝訴になるわけですが、その証明の手間暇がかかってしまいます。

ほかの方法として、英語表記の会社名と「ProZ」と掛け合わせて検索する手もあります。ProZでいろいろと取りざたされている可能性があるからです。ProZの登録がないとやりとりの内容までは読めませんが、悪質だとして、ProZでの求人を拒否されていれば登録がなくても確認できます。"This outsourcer has been banned from posting jobs on ProZ.com"というメモが当該翻訳会社に付されていたりするのです(文言はときどき変更されるようです)。

心配な方は、いま、自分が取引している会社について上記のようなチェックをしてみることをお勧めします。

■ウェブサイトなどのチェック

「当該翻訳会社のウェブサイトなどをチェックする」という方法もよく言われます。

たしかにあきらかに怪しげなウェブサイトを持っているところもあります。ただ、そういうところはおそらく悪意がなく、経営者がぶっとんでいるだけでしょう。相性問題の判断材料にするのはいいですが、今回のように悪質なケースの判断にはつかえません。「翻訳業界を狙った詐欺?-続報」にも書きましたが、悪質なところは、ウェブサイトやメールその他によるやりとりなど、いろいろな面で一見まともに見えるようにしてあるからです。

今回、JTFから警告が出された翻訳会社の場合も、ウェブサイトには特に怪しい点が見当たりません。それどころか、不払い被害に遭わないためのアドバイスを書いていたり、そういう被害に遭ったという人のブログにアドバイス的なコメントを書いたりしています。

もちろん、まともなところもこのようなアドバイスをしたりするわけで、この方法で悪質な業者を特定するのは無理があります。

|

« 翻訳料不払いを繰り返している会社 | トップページ | 『なんでもわかるキリスト教大事典』 »

翻訳-業界」カテゴリの記事

コメント

貴重な情報を、大変ありがとうございます。
いままさに、名古屋の某社の不払いに悩んでいたところでした。
この会社の仕事は2011年12月に(もちろん初めて)請け、12月中の納期通りに納品したにも関わらず、その後、請求書を出しても、再三問い合わせても応じてもらえず、内容証明を送りつけるに至りましたが、これも無視されている状態です。
契約書は「送る」と言っておきながら、送られてきません。
わたしはまだJTF会員にはなっていないので、情報を見ることができませんが、わたしのような目に遭う方が少しでも減ればよいなと思います。
ちなみにこの会社については、何度か「不払い」などのケースがないかGoogle検索しましたが、そうした情報は出てこないです。
ただ、同社のホームページの翻訳関連のページは内容がほとんどない、稚拙なものでした。
同社は主に外国人の人材派遣業も兼ねております。
とりいそぎ、情報共有と心からの御礼までにて失礼いたします。

投稿: Yoko Deshmukh | 2012年4月 3日 (火) 17時56分

たびたびごめんなさい。
いま、「ProZ [社名]」で検索したら、その会社が「This outsourcer has been banned from posting jobs at ProZ.com」つきで出てきました!
やはり悪徳会社だったことが分かって、、、これから、どうやって料金を回収しようか、複雑な心境です。
とりあえず、「支払督促」の手続きを踏んでみようと思います。
※わたしは現在、インドに住んでいますので、こうした手続きには実家の母の手を煩わせることになってしまい、心苦しいです。
ProZ パワーは恐るべしですね。

投稿: Yoko Deshmukh | 2012年4月 3日 (火) 18時18分

Yokoさん、

今回、意外なほどあちこちで不払いが起きているのだなと思いました。

そういう状況が翻訳者にとって多少なりとも改善される仕組みをJTFで作ろうと2年ほど前から画策しています。いろいろあって遅れているのですが、なんとか今年度中には形にしたいと思っています。

投稿: Buckeye | 2012年4月 3日 (火) 20時21分

お返事ありがとうございます。
くだんの会社は、わたし以外の国内外の翻訳者(また翻訳業務以外に人材派遣業務も展開している会社のようで別の業務の方)の多くに対し不払いを繰り返しているようで、苦しんでいる方が多くいるようです。
会社のホームページや社長のブログなどは定期的に更新されており、事業は継続しているようなので、お金を支払ってもらえない、という事実以上に、その会社の不誠実な姿勢と無神経さに、驚愕を禁じえません。
JTFの件につきましても、こんなわたしですが、体験から何かお手伝いできることがございましたら、お気軽にお寄せください。

投稿: Yoko Deshmukh | 2012年5月 2日 (水) 19時22分

Yokoさん、

名古屋の会社、ですよね。実はJTFにも何件か、名古屋のとある会社についてトラブル相談が寄せられているそうです(先日の理事会で報告がありました)。かなり強烈に交渉した方がおられて、先方からは「なんとか資金を都合して順次払ってゆく」という説明がJTFにもあったそうです。

念のため、JTFの事務局に連絡してみたらいかがでしょうか(ウェブサイトに連絡先が書かれています)。こういう話は基本的に会員サービスなわけですが、「事務局に連絡を」と私にアドバイスされたと書いておいていただいてかまいませんから。

投稿: Buckeye | 2012年5月 9日 (水) 06時35分

はじめまして。
名古屋の某社から翻訳料が支払われず、
色々検索していてこちらのブログに辿り着きました。
その某社の社名、不払い、トラブルなどの検索ワードを入力したところ、他にも被害者がいることがわかり、ある被害者の方が社名を公表してブログを開設しておられました。
上記のYoko様のおっしゃる通り、まさしくその名古屋の人材派遣業務も展開している会社です。
不払いを公表している方のブログでもyoko様のコメントと同じ内容を拝見しましたので間違いないです。
JTFに相談が寄せられている名古屋の会社というのが同じ会社かどうか、非常に気になります。
どうしてこんな企業が存続いていられるのか、不思議でなりません。
警察というものは何十億の被害が出たり、怪我人や死人が出なければ動いてくれないのでしょうかね。
私もこの件はまだまだ闘っていくつもりです。

投稿: uraran | 2012年6月 6日 (水) 13時45分

uraranさん、

私も困ったことだと思います>ちゃんとしない会社がある

(そのあたりを多少なりとも担保できる制度をJTFで作ろうとここ2年ほど根回しをしており、「今年は形にしましょう」と言っているところです。なんとか形にしたいと思います。)

警察は、いわゆる「刑事事件」にならないと動いてくれないんですよね。料金の不払いを含む契約の不履行は、いわゆる「民事」なので、警察に持っていっても動いてくれません。もとから踏み倒すつもりだったのなら詐欺で刑事になりますが、これはこれで立証が難しくて(「翻訳業界を狙った詐欺?-続報」http://buckeye.way-nifty.com/translator/2008/09/post-b19b.html)。

フリーランスという形の自営業をしていく上で避けられないリスクと思うしかないのでしょう。

なんでしたら、uraranさんもJTFの事務局に連絡をしてみてはいかがでしょう。明日が総会で今日・明日は事務局もばたばたしていると思いますから、もし、連絡されるならそのあとのほうがいいかと思います。

投稿: Buckeye | 2012年6月 6日 (水) 14時03分

こんなに早くお返事いただけて驚きです。ありがとうございます!
ProZで社名を検索してみましたが、やはりドンピシャリでした。
私はJTFの会員ではなく、言語も英語ではありません。
なかなか同業の仲間ができないのですが、
被害者として仲間が見つかってしまうなんて複雑です。
JTFの会員でなくても報告してよいのであれば、総会終了後にでもメールしてみたいと思います。
アドバイスありがとうございました。

投稿: uraran | 2012年6月 6日 (水) 14時47分

初めまして。米国在住の翻訳者です。もうご存知かもしれませんが参考までに、私はTCR LIST (http://www.tcrlist.com/index2.html) に加入しています。年間 12 ドルで、知らない会社と取引する場合に支払い状況に関して投稿すると、他の翻訳者で良い経験/悪い経験があった人が書き込みをしてくれることが多くあります。アーカイブ検索も可能なので、そこから探すこともできます。日本の翻訳会社の問い合わせも見たことがあるので役に立つかと思います。日本在住の方でも PayPal で支払いすることができるかと思います。

投稿: Taka | 2012年8月 2日 (木) 12時18分

この名古屋の会社の被害者です。わたしも内容証明を出していますが、全く動じず、支払督促を提訴する予定です。先日、しつこく電話をしたらようやく担当者と電話で話ができましたが、「代表が現在調査中です」の一点張り、数ヶ月同じ回答の繰り返しです。これだけ不払いを繰り返しているのですから、最初から詐欺だったとしか思えません。

投稿: coco | 2012年8月 9日 (木) 10時49分

Takaさん、

TCR LISTですか。情報、ありがとうございます。

そういうリストがあるというのは聞いているのですが、自分が必要としていないもので自分では加入していなくて。こうして教えていただけると助かります。

投稿: Buckeye | 2012年8月31日 (金) 22時17分

cocoさん、

1対1でらちがあかないところは、業界関係の団体に動いてもらうほうがいいと思います。1対1では逃げても、団体が出ていくとそれなりの対応をするところが少なくありません。少なくともJTFにはトラブルを受け付ける窓口がありますし、ほかの団体でもなにか動いてくれるところがあるかもしれません。JTFは基本的に会員サービスとしてやっているものなので、会員でないと相談しにくいかもしれませんが、「動いてくれるなら会員になる」という相談の仕方もあると思いますし。

投稿: Buckeye | 2012年8月31日 (金) 22時19分

はじめまして。
私も翻訳者の端くれです。

私も会員ではないので、結局いくらネット上で調べてもその名古屋の会社名がわからず、少し不安に思っています。とりあえず、当面は名古屋市内の翻訳会社さんとの新規のお付き合いは避けるしかないですよね。(名古屋にある他社さんも迷惑ですよね…。)

でも、気になったので「名誉棄損で訴えられる可能性があるので、企業名を公表できない」ということに関して、弁護士ドットコムで相談をしてみました。

結論から言うと、「正当な言論や批評に対しては、名誉棄損は成立しない。これは公共の利益があるといえるということで、違法性はなくなるでしょう。」とのことでした。でも、「可能性は捨てきれないので、万が一のことを考えて、証拠を確保しておくように。」とのことでした。

ご参考までに、リンクをシェアします。
http://www.bengo4.com/bbs/138918

私は、被害者ではないので、証拠はありませんが、例えば、JTFと被害者の会などが協力して、こういった問題に対する対策を図ることができたら、悪い業者が無くなるのに…と思いました。

投稿: ami | 2012年9月14日 (金) 10時57分

amiさん、

はい、エントリー本文にも書いたように、正当なものであれば違法性はなく、裁判になっても勝てます。ただ、「それが正当なものである」という証明の義務が発生します。自分の居住地から遠い場所まで何回かでかけていかなければならないことも考えられます。そういう手間暇・お金をかけてもいいと思えるなら怖くないわけです。(少なくとも、私のように伝聞で書くのではなく、当事者が書くのであれば)

シェアしてくださったリンクで、弁護士さんたちも、訴えられる可能性は否定していませんよね。

このような件について、問題をある程度は緩和できる仕組みを、今年度、JTFのほうで作ろうとしています。2年ほど前に私が提案し、作ろうということになっていた仕組みなのですが、政府の社団法人改革のあおりで遅くなってしまいました。

いろいろとトラブルがありうることは覚悟し、自衛策をとっておくのが自営業者としての心得ではありますが、多少なりとも、ということで。

もっとガツンとできたらとは思うのですが、現実にはなかなかそうもできずで歯がゆいところです。

投稿: Buckeye | 2012年9月14日 (金) 11時49分

Buckeyeさん

Buckeyeさんの仰る通りだと思います。
生意気を申し上げて申し訳ありませんでした。

問題が解決されることを心より祈っています。

投稿: ami | 2012年9月14日 (金) 13時44分

Buckeyeさま
大変ごぶさたしております、Yokoです。
いつもご親切なご回答をいただき、ほんとうにありがとうございます。
あれからかなりバタバタしてしまい、先般の名古屋の会社について、内容証明を送る以外に具体的な行動を取れずにいました。
その後も社長自らより、「今月末までには振り込む」といった連絡をもらったこともあったのですが、もちろん未だ支払われていません。
まったく赤の他人のわたくしに事務局に連絡を、と手を差し伸べてくださり、本当にありがたく存じます、ありがとうございます。
実は昨年末に東京で開催されたJTF翻訳祭に参加しました折に、会員になろうと思っていたのですが、午後から急遽、会場を抜けなければならなくなり、手続きをし損なっておりましたので、この機会に会員の手続きをさせていただこうと思っています。
重ねまして温かなメッセージを本当にありがとうございます、また返信が遅れ申し訳ございませんでした。

投稿: Yoko | 2013年2月14日 (木) 14時28分

Yokoさん、

たぶん、同じところだと思うのですが、先日のJTF理事会でも「問題が続いている」という報告がありました。なんとかいい形で解決することを祈っております。

投稿: Buckeye | 2013年2月14日 (木) 16時40分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 翻訳料不払いを繰り返している会社-一般的な調べ方:

« 翻訳料不払いを繰り返している会社 | トップページ | 『なんでもわかるキリスト教大事典』 »