収入からはかる翻訳者の幸せ度
「翻訳者transcreative(清水憲二)の日記&【今日のサッカー英語】アーカイブ」に「収入は増えても幸せ度は上がらない!? ダニエル・カーネマンの「経験する自己」と「記憶する自己」に関する記述」という記事がありました。詳しくは清水さんの記事を見ていただくとして、「年収6万5000ドルまでは幸福は収入の増加に従って増していく。それ以上収入が増えても幸福度はほとんどあがらない」という話を一応の基準として、翻訳者の幸福度を考えてみたいと思います。
この記事、以前書いたのに投稿しわすれていたようです。
ここでいう年収が年商なのか所得なのかでも話はまったく違ってきますし、円ドルレートをいくらにするか、あるいは円ドルレートで換算するのがこの場合に正しいのかなど、問題はたくさんあるのですが、そこはそれで、例によってえいやっと仮定で話を進めます。
日本の場合、こういう話で年収といえば税込み年収、つまりサラリーマンなら給与総額、我々のような自営業者なら(売上-経費)と考えるべきですし、米国でもどちらかといえばそういう話だろうと思います。というわけで、「6万5000ドル相当よりもある程度多めの年間売上」で翻訳者の幸せ度は頭打ちになるとしましょう。
円ドルレートは130円/ドルとします。最近の実態は80円/ドル前後ですが、個人が暮らす場合のお金としては消費者物価を基準に購買力が等しくなるケースを考えるべきでしょう。公益財団法人国際通貨研究所というところの資料によると、この数字が1年前ですが130.84円/ドルとなっていますので。
130円/ドルで換算すると6万5000ドルは845万円。ここから若干多めにするので、ま、900万としておきましょうか。
つまり、日本で暮らす我々翻訳者にとっては(↓)のようになるわけです。
年間売上900万円まで、幸福は収入の増加に従って増していく。それ以上収入が増えても幸福度はほとんどあがらない。
さて、ここまで売上がある翻訳者はどのくらいいるのでしょうか。
「産業翻訳者の現実的な収入はどの程度か」でも参照しているアルクの「稼げる実務翻訳ガイド2002」によると、900万超は16人、8%。母数が200人とそれなりに多いので代表性がなくはないと思われるデータですが、いかんせん古い。最近のデータは、通翻ジャーナル2011年7月号に4人/16人の25%がありますが、こちらは一番下でも300万以上と調査段階でセレクションがかかっていて代表性がないのは明らか(人数も少なすぎます)。もう少し調査人数も多く数値もばらけているデータとして同じく通翻ジャーナルの2007年10月号がありましたが、こちらは5人/28人の18%。
こうしてデータをいくつか眺めてみると、ま、えいやっと10%前後というところでしょうかね。これを多いと見るか少ないと見るかは……むずかしいですね。
翻訳者の場合、仕事にびっちり打ち込んでいる層とそうしたくない or そうできない状況があってン割しか投入していないっていう層があるし、お金以外のところに価値を見いだしている人も少なくないしなので(私にもそういう面があるし)、一般論からかなり外れそうな気がしますしね。
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