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2011年11月 8日 (火)

『スティーブジョブズⅠ・Ⅱ』の翻訳について-その5

■最後の最後で4週間繰り上げ

ジョブズが亡くなったことをうけ、10月6日、米国から、刊行日の4週間繰り上げという連絡がはいりました。

いや、これ、きつかった。

編集さんも「気を確かに聞いてくださいね」と前置きをされたほどだし、その前置きがあっても、一瞬、頭の中が白くなりかけました。

だって、残り7週間切った段階で4週間前倒しですよ?

そりゃ、もう印刷にはいってた米国はいいですよ。あと、英語からの翻訳や編集に日本語ほど手間がかからない欧州各国も、がんばればなんとかなる世界でしょう。でも、日本語は手間がかかるんですよ。

っつーか、ふつうに考えれば、刊行まで3週間というのは校了の段階で、あとは印刷・製本を急がせてぎりぎりってタイミングです。なのに、上巻のゲラは私の手元に届いたばかりだし、下巻なんてゲラも出ていません。

目の前にいる講談社の編集さんの責任でないことは重々わかっていて、なお、「そんな無茶な……」と非難する言葉がでかけたくらいの事態でした。非難の言葉は危ういところで飲みこみましたよ。困るのは編集さんも同じなのですから。

全体スケジューリングは編集さんの仕事。というわけで編集さんが、関係者全員に「死んでください」というようなスケジュール案を作っておられました。私のゲラ修正も詰めて詰めて終わるかどうかという期間だし(はい、とぉ~っても絶妙でした)、校正さんとか、印刷所・製本所もそうとうに無理してやるんだろうなぁと思うスケジュールで。もちろん、後工程でハブとなる編集さんが大変なことになるのもあきらか。詳しくは聞いてませんが、編集さんは泊まり込みでがんばられたみたいです。いや、なんか、原稿の受け渡しが時間単位って、産業系の特急案件と見まごうようなスケジュールでした。

そこまでしても、やはり、下巻は間に合わず、1週間遅れとなりました。

下巻1週間遅れというそのスケジュール表を見た瞬間、「私があと1週間、早くに訳稿を上げていれば……」と思ったのですが、次の瞬間、「どこをどう振っても、あと1週間は出てこなかったな」と思い直しました。あのときもう少しがんばっていればというのがない3カ月だったのです。

私の作業としては訳出が一番大変で、その最後まで体力がもてば、ゲラ修正にはいったあたりからは少し楽になるのがふつうです。しかし今回は、最後の4週間繰り上げでゲラ修正が鬼の進行となり、体力の2番底まで行きました。限界こえて倒れるかなぁと思いましたが、ギリギリなんとか倒れずにすんだという感じです(嫁さんから「絶妙だったわね」とコメントをもらいました)。ホント、終わったときは燃え尽きて白鬼状態になってましたよ。

そのほか、ノートなど、本文以外の部分も書籍本体には入れられず、ネットで公開という形になりました(←まだ準備中です。順次、公開してゆくと聞いています)。翻訳本だと訳者あとがきがあることが多いですが、それも、とてもじゃありませんが、書く時間も入れこむ時間もありませんでした。

■結果

というわけで、たっぷりの時間をかけ、磨きに磨いたケースと比べればもう一歩のところが残っているはずだと思いますが(そう思うからふつうに時間のある案件では時間をもらうわけですし)、でも、「7月頭スタートで世界同時刊行を実現する」という条件のもとではベストな形にできたと思っています。また、こう言うとなんですが、ほかの人が翻訳するよりもきっといいものにできた、とも。

講談社さんの担当編集さんも、「無理なスケジュールのなか、怖いくらい理想的な進行だったと思う」と言われていました。

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