« 悲惨すぎる翻訳-続報 | トップページ | 『アインシュタイン その生涯と宇宙』と機械翻訳とモラルハザード »

2011年8月20日 (土)

【訃報】-山岡洋一さん

ビジネス系の出版翻訳で有名な山岡洋一さんが昨夜、心筋梗塞で急逝されたそうです。享年62歳。

私が知ったのは、つい先日、山岡さんの次の本が校了となったという編集者の方のツイッターでしたが、その後、山岡さんと関係が深い方々に連絡してみたところ、ご家族から連絡をうけたという方がおられました。とても残念なのですが、本当になくなってしまわれたようです。

実力派でテキトーな翻訳をきらい、このブログのカラムで紹介している『翻訳とは何か―職業としての翻訳』など、翻訳を支えているのは翻訳者だと舌鋒鋭く論を展開されるので、文章を読んでいるとどんな怖い人かと思うのですが、実際に会ってみると、はにかんだような笑い方が印象的で、むしろ人前にあまり出たがらない、そんな方でした。

翻訳通信を出す(昨年は100号記念講演会があった)、ノンフィクション出版翻訳忘年会を毎年開催するなど、お金にならないことでも後進や業界のためになることをいろいろとされていた方で、まだまだ、業界の灯台として多くの後進の行くべき道を照らしていただけると思っていたのですが。

そんな方ですから、この業界には、山岡さんのお世話になった翻訳者やその影響を受けた翻訳者がたくさんいます。私もそのひとりです。出版系の仕事を継続的にするようになったのは『スティーブ・ジョブズ-偶像復活』がきっかけだったのですが、この本を担当したのは山岡さんが推薦してくださったからと編集の方からお聞きしています。

つい10日ほど前も、翻訳通信9月号で例のアインシュタイン本について書くから、私にも記事を1本と声をかけていただいたところでした。ついでの雑談ではお子さんが独立されたので、これからはわがままな翻訳者として古典の翻訳に注力したいと言われていたのに……

心からご冥福をお祈りします。

|

« 悲惨すぎる翻訳-続報 | トップページ | 『アインシュタイン その生涯と宇宙』と機械翻訳とモラルハザード »

翻訳-雑記」カテゴリの記事

コメント

まだ30代の頃の山岡さんは、文章どおり怖い方でした。
山岡さんにしごかれながら、翻訳漬けの日々を過ごした
ことを思い出しています。あのころ一緒に翻訳していた
仁平和夫さんが急逝したのも、9年前のこの季節でした。

あとに残された者の責任を考えると気が重いです。

山岡さんが遺された翻訳関係の遺産を埋もれさせずに
整理していく方法を、いずれ皆で協力して考えなければ
いけませんね。

投稿: 伊豆原 弓 | 2011年8月21日 (日) 01時40分

伊豆原さんはそのころから山岡さんと歩いてこられたんですね。そうですか、昔は怖い人だったんですか。そのくらいギンギンに先へ進もうとされていたんでしょうね。

>あとに残された者の責任を考えると気が重いです。

そうですね。いろいろ山岡さんがまとめてくださるだろうから、我々はその肩に乗せてもらえばいいと思っていたのですが……

投稿: Buckeye | 2011年8月21日 (日) 08時31分

なんと言うことでしょう。翻訳通信は、「これが無料でいいのか」と思う価値ある情報でした。
たまたま、ベルリンのホテルでこの報せを読みました。ご冥福をお祈りいたします。

投稿: 高橋信夫 | 2011年8月22日 (月) 00時09分

高橋さん、

あの翻訳通信、あれだけのものを出し続けるのは大変です。もっと雑ぱくなメールマガジンでも、なかなか続かないというのに、あれだけの内容を毎月書くなんて、考えただけで気が遠くなります。

そして、たぶん、それなりに考えはまとまっているけれどまだ翻訳通信にも書かれていないこと、まだまだこれから考えをまとめていかれることなどがたくさんあったはずだと思います。

ため息しかでませんね……

投稿: Buckeye | 2011年8月22日 (月) 21時53分

翻訳通信の一読者です。山岡さんご家族から翻訳通信読者宛に送られた連絡で訃報を知りました。英国在住でときどき仕事を請け負いながら医薬翻訳の勉強をしており、翻訳通信は本当におっしゃるとおり無料でいいのかと思うぐらい素晴らしいマガジンで、いつも楽しみにしていました。訃報を知ってからショックで落ち着かず、山岡さんについて書かれたウェブサイトを徘徊していてこちらにたどり着きました。(こちらのサイトもBuckeyeさんのお名前も翻訳の勉強を通じて以前から知っていましたが。)こんなちっぽけな私にも大きな影響を与えてくださった素晴らしい翻訳者がこんなに早く亡くなるなんて残念でなりません。心からご冥福をお祈りします。Buckeyeさんもお体に気をつけてがんばってください。

投稿: さじきょうこ | 2011年8月25日 (木) 05時55分

さじきょうこさん、

そうですよね、落ち着きませんよね。

山岡さんと一緒にがんばってこられた仁平和夫さんも10年近く前、52歳でなくなられています。おふたりとも、ご本人のなかではまだまだという段階でなくなられたのではないかと想像しています。本当に残念です。

>Buckeyeさんもお体に気をつけてがんばってください。

ありがとうございますm(._.)m

私のほうはここしばらく、落ち着かないとか言わずにがんがんやらないといけない状況に陥っているのですが……この仕事が終わったらさすがに少し休もうと思っています。

投稿: Buckeye | 2011年8月25日 (木) 09時41分

わかったうえでお書きになっておられるのでしょうけれど、山岡さんは 1949 年生まれですから享年 63 ですよ。

生年である 1949 年に亡くなっていれば享年 1。
1950 年に亡くなっていれば享年 2。
1951 年に亡くなっていれば享年 3。
.......
2011 年に亡くなったので享年 63。

投稿: tkt | 2011年9月 2日 (金) 18時47分

tktさま、

ご指摘、ありがとうございます。年齢に関連する、古くからあるものの常で本来は数え年ということですね。

ただ、数え年は知識としてしか知らず、使ったこともない世代にとっては、享年も七五三も満年齢が普通になってしまっていますし、新聞なども満年齢が普通になっているようです。

こういう完全には変化しきっていない言葉の場合、本来的な使い方をするか、あるいはなるべく多くの人に伝わるようにすべきか、難しいところがありますね。

投稿: Buckeye | 2011年9月 2日 (金) 20時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/111098/52521040

この記事へのトラックバック一覧です: 【訃報】-山岡洋一さん:

« 悲惨すぎる翻訳-続報 | トップページ | 『アインシュタイン その生涯と宇宙』と機械翻訳とモラルハザード »