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2011年7月28日 (木)

悲惨すぎる翻訳-『アインシュタイン その生涯と宇宙』

すごい本が出てしまいました。『アインシュタイン その生涯と宇宙』という本です。リンクをたどってアマゾンのレビューを見ていただければわかりますが、(↓)のような訳文になっているところがあるそうです。あまりにも悲惨ですよねぇ。翻訳祭の講演でまくらに使い、爆笑をとった「オーポン」よりもある意味、ひどいかもしれません。

「彼は,時には,やかましくこっこっと鳴って,終わりに全体の出来事が「最もおもしろい」と断言した。」(p.39)

「ボルンの妻のヘートヴィヒに最大限にしてください。(そのヘートヴィヒは,彼の家族に関する彼の処理,今や説教された頃,彼が「自分がそのかなり不幸な回答に駆り立てられるのを許容していないべきでない」と自由に彼に叱った)。以上は,彼が目立つべきであり,彼女が言ったのを「科学の人里離れている寺」に尊敬します。」(p.41)

「アルバート・アインシュタインの爆発するようなグローバルな名声と芽生え始めたシオニズムは科学の歴史の中でもユニークで,どんな分野にも,本当に,顕著であった出来事のため一九二二年春に集中。一種の大規模狂乱を喚起して,ツアーしているロックスターをぞくぞくさせるへつらいを押す東とmidwestern合衆国を通る壮大な二ヶ月の行列式書。世界は,以前一度も見たことがなくて,おそらくユダヤ人のための再びそのような科学的有名人のスーパースター,また,たまたまヒューマニスティックな値の優しいアイコンであった人,および決してどんな生きている守護聖人も見られないつもりだった。」(p.45)

これに加え、訳者だという方から事情の説明がレビューに載っています。

上記のような翻訳は、どうも、以下のような経緯で生まれたということのようです。

  • 12章、13章、16章が頼んだ翻訳者から時間的に無理と断られた
  • 12章、13章、16章を科学系某翻訳グループに依頼
  • 訳がひどいので編集部が直す
  • 12章と16章を直しただけで時間切れとなり、13章は「科学系某翻訳グループ」の翻訳ママで出版

上記の13章については、監訳者にも訳稿を送っていないらしいです。いや、こんな訳稿がきたら、監訳者からやり直せと言われるのは当然ですものね。で、監訳者から出版社(武田ランダムハウスジャパン)の社長にクレームがはいり、読んでびっくりした社長が初版の回収を決断(←いまココ)。

上記の訳文、機械翻訳の出力そのままか日本語がまともにできない人が訳したか、ですね。

ひどい話ですよねぇ。社内的にどういう経緯があったにせよ、この状態で出版してしまった出版社や編集責任者に、翻訳出版に携わる資格はありません。お金をだして買ってくれる読者をなんだと思っているのでしょう。ほかの部分をまじめに訳した人たちもかわいそうです。

ただ、ねぇ……これ、産業系ではイマドキ、それなりにアチコチで遭遇することではないかとも思います。予算と納期をけちられ、まともに翻訳していられないものは機械翻訳(+編集)で対処するっていう話はもう10年くらい前にはじまり、近年、急速に増えつつあるようですから。翻訳会社レベルでも、機械翻訳のツール利用を導入しようとしているところがあちこちにあると聞いていますし。

今回のように飛び抜けてひどいものなら、さすがに問題になると思いますが、これがじわじわと落ちてくると……ゆでガエルになるわけです。でも、機械翻訳を導入するところは、そのあたり、なんとかできると思っているんでしょうね。原子力だって、きちんと管理すれば事故なく発電所が運営できる「はず」ですから。

それにしても、ここまでひどいものが通るとは、どういう編集者でも思わないはずで、それを出してしまったという背景には、社内的にいろいろあったんだろうなという気もします。産業翻訳で、ソースクライアントにはソースクライアントの事情があり、翻訳会社には翻訳会社の事情があり、翻訳者に翻訳者の事情があって、読むにたえない文書を読者が読まされたりするのと同じように。

それでも、プロなら結果で判断されるものでしょう。

ともかく、自分としては、産業系であれ出版系であれ、そういう「事情」がからむ案件には、読者としても翻訳者としてもかかわりあいたくない。ただただそう思います。

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コメント

>読んでびっくりした社長
は珍訳部を? クレームを?

投稿: 緑 | 2011年11月16日 (水) 16時08分

アマゾンに書かれた翻訳者の説明によれば、「珍訳部(13章)を読んで」とのことです。

投稿: Buckeye | 2011年11月18日 (金) 18時31分

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