メキシコ人漁師とMBA
「翻訳なんてまじくだらねぇし。」というブログに「何のために稼ぎ、いつ稼ぎを使うのか」という記事がありました。
メキシコ人漁師とMBAとの逸話です。おもしろいです。
必要な分だけ稼ぎ、残りの時間は悠々と暮らすメキシコの漁師。がんがん稼いで億万長者になり、悠々自適の生活にはいる夢を見るMBA。みなさんはどちらの生活をしているのでしょう。
私は基本的に前者。私をよく知らない人からは後者だと思われているようですけど。
私の場合、この仕事にはいった理由のひとつに「がんばった自分に対するご褒美が比較的すぐに戻ってくる生活、短期で精算される生活のほうがいい」という思いがありました。自覚のない急性腹膜炎で危うく死にかけたこともあり、ン十年という長期で清算するのはおそすぎると思うようになったのです。ン十年の将来なんて、ないかもしれないわけですから。
だから大会社を退職し、子育てにもそれなりの時間を使うような生活が選べるこの仕事に移ったわけです。ですから、仕事ばかりをするという考え方は、私にとって今の生活のアンチテーゼとも言うべきものだったりします。
それでもまあ、さすがに、メキシコ人漁師のように、毎日毎日、細かく精算するような生活はできません。でも、1年くらいのスパンでは精算したい。そう思うので、それこそ最近のように仕事ばかりの日が続くときもあれば、夏休みをどんと取って子どもたちを山で遊び、仕事は1カ月でふだんの1週間分とか下手すれば1日分しか仕事をしない時期があったりという生活をしています。「翻訳なんてまじくだらねぇし。」のむーしぇさんも書かれていますが、子どもたちと遊ぶというのには「旬」がありますからね。体を使うような遊びもまたしかり。そしてたぶん、頭を使うような遊びも。
このブログで、前に「『稼げる』ことにこだわる理由」というエントリーを書いていますが、あの話は、実は、メキシコ人漁師になれる道があるべきだということです。
メキシコ人漁師の話で大事なのは、「必要な分だけ稼ぎ、残りの時間は」という部分だと思うのです。必要な分を稼いだら時間が残らないのでは、ああいう生活はできませんからね。メキシコの漁師のように、のんびり仕事して必要量が手に入るならそれでいいのですが、日本でそれは難しいでしょう。だから、時間あたりの稼ぎを最大化し、なるべく短い時間で仕事を終わりにして「残りの時間」を生みだす。そうするのがいいと思うわけです。
もちろん、何をもって「必要な分だけ稼いだ」というかも考える必要がありますけどね。お金なんて、あればあっただけ使い道はありますから。少なくとも、我々のような仕事で稼げる程度のお金であれば。
最後に蛇足を一言。「必要な分だけ稼ぐ」にせよ、仕事はしなきゃいけません。それもそれなりの時間は。だから、仕事の時間が充実していないと人生、楽しくないと思います。そのためには、仕事が好きでなければいかんでしょう。
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コメント
こんにちは、お取り上げいただきありがとうございます。いいですね、その夏休みスタイルは目標とするところです。そのためには、「ここまでしかやらないノルマ」(リミット)みたいなものを設定されるわけですよね。
そこを勉強しようと「稼げることにこだわる理由」を拝読したんですけど、「稼げない」と「稼がない」 の間に、もう一つ「稼がないオプションを持ちながら行使できない」というステップがあるような気がします。僕はそこにいるんです。行使できないのは仕事依頼を断れないからで、それは性格、という以外にも理由が二つあります。
一つは「翻訳力が不十分」。不十分な翻訳力を便利屋さん的なフットワークでカバーしていると、むやみに依頼を断れないわけです。あと断ってばかりだとポジションを奪われるんじゃないかっていう不安もあるんですよね。
もう一つは「収入の安定性が不十分」。実際の安定性というより、気持ちの中での安定性、不安感でしょうか。今はよくてもこの先どうなるかわからない、だと、稼げるうちに仕事を詰め込んでおこうとなるわけです。で、結果的に一年中詰め込んでいるという・・そういう不安が完全に消えることはないのかもしれませんが、例えば翻訳会社にとってファーストチョイスの翻訳者になることで軽減できるわけですよね。
もちろん、「稼がないオプション行使」=「リミットを越えたらすべてお断り」ということではないんでしょうけど、せめて自分の余暇をコントロールできる程度にオプションを行使できるように力をつけたいです。それでこそ真のフリーランスだと思います。
まとめると
ゴールを設けるのが三流
リミットを設けるのが一流、
どちらも設けない(設けても意味がない)のが二流のフリーランス
というのはちょっと乱暴でしょうか (゚ー゚)
投稿: むーしぇ | 2011年2月24日 (木) 02時10分
むーしぇさん、
私は、「稼がないオプションを持ちながら行使できない」も「稼げない」に入れてしまっていましたが、たしかに、段階は3つ(↓)に分けられますね。
・めいっぱいがんばっても目標に届かない
・めいっぱいがんばらないと目標に届かない
・余裕をもって目標を達成できる
一流、二流、三流という表現は個人的にあまり好きではないので、駆け出し、中堅……みたいな言い方にしたいところです。まあ、こちらの表現も、この先は「トップクラス」とでも言うしかなくてイマイチ感がただようのですが。
>「稼がないオプション行使」=「リミットを越えたらすべてお断り」
>ということではないんでしょうけど
ほとんどの人は、そういう話にはならないと思います。
私の場合、夏休みとかGWとか、基本的に休む期間、エージェントさんには、「当日対応など急ぎの案件は対応不可能。新規ソースクライアントの案件も基本的に不可。いつものソースクライアントでほかの人に回しにくいものはやる」みたいな話をしています。あと、直接取引しているソースクライアントからの仕事は断らないので、なんとか時間をやりくりしてこなします。
友人で、毎年、ハワイにン週間滞在する翻訳者がいるのですが、彼も、滞在中に「今日は1日仕事~」とか言ってたりします。
今は、ネットさえつながっていればどこにいてもなんとかなるので、こういう、基本的に休みだけど仕事「も」するみたいなことが簡単にできます。
こういう話をすると、翻訳者ではない人からは、「フリーランスって、いつでもどこでも仕事だったりして大変ですね」と言われたりしますけど、逆に、それができるから、いつでもどこでも休みにしちゃえるって側面もあるわけで、考え方次第でしょう。
>一つは「翻訳力が不十分」。
ここは実力をつけるしかありませんね。いいニュースは、翻訳というのは、実力さえつければ状況が変わる、変えられる業界だということです。
>もう一つは「収入の安定性が不十分」。
こちらはどこまで行ってもつきまといますねぇ。
ちなみに私も、リーマンショック後、例年の1/3くらいまで仕事量が急落しました。単価が高いので、もっと安いところへとお客さんがどっとシフトしたようです。エージェントさんも、そういう高い案件専門のところとしか定常的な取引がないので、ソースクライアント直接もエージェントさん経由もどんと落ち込みました。久々に営業活動をして直接取引のソースクライアントさんを増やしたのですが、それでも、あの年は例年の半分強にとどまりました。
ただ、こちらも、実力さえしっかりついていれば、収入が落ちたときも回復しやすいとは言えます。エージェントさん経由で単価を下げれば、ごく短期で仕事量は回復します。売上は落ちてしまうので余裕は減ったりなくなったりしますけど。でも、そういう手があると思えば、収入が不安定という不安をそれほど気にせずにすむはずです。
昔聞いた、「雀はどうして、揺れる電線にとまっていられるのか」「落ちたら飛べばいいと思っているから」という話を思い出しました。
投稿: Buckeye | 2011年2月26日 (土) 15時08分
Buckeyeさんありがとうございます。
今はみなさんをいってらっしゃいませ!と笑顔で送り出してお盆返上で緊急対応に追われている側ですが(゚ー゚)
力をつけていつかバカンス側に回りたいと思います。
それでこそ、つまりある程度は休みたい時に休めてこそ、一流、じゃなかった、本物のフリーランスという気がするんですよね。
あとはリーマン級のショックが次に訪れても平気でいられる体制を模索したいです。
スズメさんを参考にしたいものです。翼?空中浮遊?最近は揺れを感じると家ごと宙に浮かせる耐震装置もあるそうで・・
投稿: むーしぇ | 2011年2月28日 (月) 00時16分