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2010年12月15日 (水)

20周年記念JTF翻訳祭

2010年のJTF翻訳祭が、12月13日(月)に東京で開催されました。今年は20周年記念ということで、メイン会場+分科会×4というマルチトラック形式でした。来場者数は例年の倍近い700人ほど。とにかくすごい人で、盛況でした。大がかりになるとスタッフも会場ごとに必要なわけで、準備された方々はいろいろと大変だっただろうと思います。

私は、トラック3「支援ツール分科会1」の最後で「機械翻訳時代に翻訳者の生きる道」と題して45分のセッションを受けもちました。

以下、自分が出席したセッションを中心としたレポートです。

■基調講演-「翻訳研究(Translation Studies)と実務の接点」(水野的氏 日本通訳翻訳学会副会長・事務局長)

「翻訳学」というか「翻訳研究」というか、ともかく、そういうあたりの研究としてどのような考え方が提出されたのか、歴史的に概観する内容。私が専業翻訳者になって10年あまり、いろいろとトライしてきたことや考えてきたことの大半は、少なくとも研究テーマとしては取りあげられてきたようです。研究が進んできた道とほぼ同じ道程で自分も進んできているのだけれど、それって、翻訳というものを始めた人はそういう道を歩むものということなのでしょうか。初期の研究は40年も前に行われたものなので、時代の変遷ということはないはずなので。

質疑で、「翻訳メモリーを使った差分案件では、明示化と意味的一貫性を切り捨てざるを得ない。そのあたりについてどう思われるか」と聞いてみました。目的として早く仕上げることが重要なら、それはそれで仕方がないというのが実務の現実だろうという回答でした。

この質問をしたとき、目の端に、大きく頷いている人が何人か見えました。私は、「文脈を切り捨てるかわりに効率向上を実現するのか翻訳メモリー」という言い方をよくするのですが、そのあたり、実感として思う方が多いということなのでしょう。

■お昼休み

お昼休みは1時間。時間優先で牛丼弁当を買ってきて講師控え室で食べ、初めてお会いした人たちとご挨拶し、さて、自分の講演の最終チェックを……と資料を広げてふと時計を見たら午後のセッションが始まる時間でした……orz

11時45分から昼休みというのは、お店が混む直前に駆け込めるので、けっこういい時間設定だったかなと思います。

■「オープンAPIとクラウドによる翻訳管理システムXTM」
(関根哲也氏 XTM-INTL Japan Representative DITA・GCM ソリューションコンサルタント)

感想が書けるほど話の内容がわかりませんでした(^^;)

イマイチ、自分にとって興味のある話でなかったこともありまして……この時間帯、個人的な興味なら「翻訳者だからできる!世界に向けたアプリの開発と販売」のほうが聞きたかったのですが、自分のセッションに関連がありそうな話はひととおり聞いておいた方がいいだろうとこちらにしたもので……あと、お昼休みにできなかった自分のセッションの最終チェックもちょこちょことしていたもので……

■「個人も使える!業界で共有する翻訳メモリー TDA ~進化していく翻訳メモリー~」(中村哲三氏、YAMAGATA INTECH 株式会社 プロジェクト推進室 室長)

題名には「翻訳メモリー」とありますが、翻訳メモリーをパラレルコーパスとして統計的機械翻訳を推進するTAUSというところの話が中心でした。

翻訳メモリーをみんなで共有しようという話で、考え方としてはおもしろいと思います。マニュアルレベルに社外秘なんて書かれていないという中村さんの意見はそのとおりだと思いますし。

ここ、個人でも参加できるので(会費は年間数千円レベルらしい)、翻訳メモリーをダウンロードして自分で統計的機械翻訳を構築してみるなども可能なようです。

また、共有されている翻訳メモリーは、会員にならなくても検索ができるとのこと。サイトを見るとログインしなければならないようなので、ログインのための登録みたいなことはしないといけないのかもしれません。

■「統計的機械翻訳の理論と実装」(河野弘毅氏、株式会社アイタス シニアローカリゼーションスペシャリスト)

この時間帯は「出版翻訳の現状と動向」を聞きたかったのだけれど、これまた、自分のセッションとの絡みでココを外すわけにはいかないので。河野さんの話は前に聞いているけれど、今回、新しい話があるかもしれないし、自分のセッションで取りあげるなら「こういう話があったけど……」と言えなきゃいけないので。

ルールベースの機械翻訳と統計的機械翻訳の歴史や原理などをざぁ~と紹介する内容。よくまとめてあるとは思うのだけれど……いかんせん、早口すぎるよぉ>河野さん 聞いてるほうはつらいとおもうなぁ。あと、ついついスクリーンのほうを向いてしゃべってしまうらしく、そのたびにマイクから口がはずれて聞こえづらくなる。私は比較的前に座っていたし、前に一回、話を聞いているからついてゆけたけど。

まあ、ともかく……現状としては、そこそこ使えるレベルになってきているという話でした。もちろん、間違いとか不適切な訳とかはあるけれど、それなりにそれなりにはなっているというわけです。

言ってみれば、「内容も考えず、まちがいだらけの訳を出すプロ翻訳者を使うくらいなら統計的機械翻訳のほうがいい」という時代にはいろうとしているのかもってことなのでしょう。

■「平均時速650語の翻訳支援技術 ─機械翻訳を活かして効率と高品質を両立する秘密」(山本ゆうじ氏、秋桜舎代表 言語・翻訳コンサルタント)

ルールベースの機械翻訳ソフト+ユーザー辞書+その他の工夫で効率を上げ、IT系文書で平均時速650語で高品質の翻訳ができるという話です。

個人的には、山本さんの話は昔からよく知っていますし、平均時速650語というのも特に驚くにあたらない数字だったりします。高品質というのも、なにをもって品質というかとか、なにと比べて「高」品質なのかとかがありますからね。なんというか、「モノは言いよう」なわけです。

ちなみにこのあたりについては、本ブログで過去に検討を加えています。興味のある方は、「ツールとしての機械翻訳」あたりの記事を読んでみてください。

今回のセッションで新しく得た情報は、平均時速650語の元データと翻訳対象の文書(IT系技術文書とのこと)、平均時速650語というとき、そこに「最後に読んで直す」工程は含まれていないということでした。一気に最終訳へともってゆくので、最後に直すのはあっても微々たるものという説明はありましたけど……それでも読んで直すなら、1割以上、時間当たりの処理量が落ちるんだけどなぁと、同じパターンで仕事をしている者として思いました。

■「機械翻訳時代に翻訳者の生きる道」(井口耕二、技術・実務翻訳者、JTF常務理事)

私のセッションについては、別投稿にまとめます。

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受信: 2010年12月16日 (木) 14時02分

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