『ブログ誕生-総表現社会を切り拓いてきた人々とメディア』
年初からずっとブログ更新が滞った原因の第3弾、『ブログ誕生-総表現社会を切り拓いてきた人々とメディア』が11月25日に発売となります。
昔は手打ちでウェブサイトを構築したものですが、最近はすっかり「自分のサイトを持つ=ブログを持つ」という状況となりました。私も、一応、昔のサイトも残してはいますが更新はしておらず、ブログばかりを更新しています。
そんな状況をうけ、ここまでのブログの歴史をまとめてみよう、そして、ブログとは何なのか、どのような影響があり、どれほどの力を持つのかを検討してみよう。そういう本です。
著者のローゼンバーグは昨年、話題になった『プログラマーのジレンマ』を書いた人です。
本書では、生い立ちから最近の動向までブログの歴史がさまざまなエピソードを交えて語られています。ブログの歴史に強い興味はなくても、ブログを発端としたさまざまな動きなど、読み物として読んでいくだけでもかなりおもしろい本になっていると思います。ネタが日本のものならもっとわかりやすく、実感できていいのですが、そこは翻訳本なので仕方ありません。
翻訳者にとっては、第9章、「ジャーナリスト対ブロガー」がおもしろいと思います。プロとアマのせめぎ合い、「どうしてタダで仕事をするんだ?」というプロの疑問などなど、翻訳業界でも最近よく聞くパターンのオンパレードで、とてもヒトゴトと思えません。「情熱をもったアマチュアは、惰性のプロフェッショナルよりまずまちがいなく上だ」「もちろん、情熱をもったプロフェッショナルもいるし、彼らはすばらしい仕事をする」……うんうんと思いつつ、仕事をしていました。
本書の翻訳は……大変でした。半分はスケジュールによるものですけどね。私の本業は産業翻訳であり、出版系は年間2冊を目安にしています。それが今年は、『マンガ 統計学入門』と本書が決まったあと、『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』のお話しをいただき、どうしてもやりたくて、夏までに3冊というかなり無理なスケジューリングをしてしまったのです。
しかも実はこの本、私に話が来る前、『プログラマーのジレンマ』を訳された伊豆原弓さんにお願いが行ったのだけれど、「手間がかかるローゼンバーグの本を担当できるほどスケジュールが空いていない」と断られたのだそうです。たしかに、けっこう訳しにくくて手間がかかりました。
そんなわけで、年明けから7月いっぱい、全力疾走で走りつづけることになりました。本書の最後はさすがに疲れがたまってスピードが落ちてしまい、予定から少しずつ少しずつ遅れてゆく結果に……NTT出版さんのほうがリジッドな予定ではなかったのでぎりぎり助かったという感じです。
翻訳で苦労したのは、複数の意味にとれる文をやはり複数の意味に取れるように訳すなんてあたりでしょうか。ゲラで編集さんから「ここ、何が言いたいのかよくわからないので、『は』と『が』を工夫してあっちなのかこっちなのかはっきりさせたほうがいいと思います」というようなコメントをもらったので、それなりにはなったはずだと思っています。
放送禁止用語バリバリみたいな言葉も出てきました。個人がブログに書いたものを引用しているので、そういう表現が使われていたりするんです。隠喩なら翻訳でどうにでもなりますが、具体的に書かれているとどうにもならず……これはさすがにまずいと削除し、説明的な訳とせざるをえなかったところもあります。
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コメント
おめでとうございます!発売日を楽しみにしています。
プロとアマのせめぎあいの箇所、面白そうですね。いわゆるファン翻訳みたいなものを見たり読んだりしていると、プロ顔負けの訳をしている人もいますし。
投稿: wahaha | 2010年11月 3日 (水) 11時15分
おーっと、もう発売されてるんですね。
Buckeyeさんの訳書はいずれも興味のあるテーマばかりですが、今回は特に期待度が高いです。
書店に行くよいきっかけになります。
投稿: あきーら | 2010年12月 5日 (日) 01時31分
「情熱をもったアマチュアは、惰性のプロフェッショナルよりまずまちがいなく上だ」「もちろん、情熱をもったプロフェッショナルもいるし、彼らはすばらしい仕事をする」……このネタ、今回、JTF翻訳祭でも使いました。いや、ホントだと思うんです。
あきーらさんもブロガーですものね。知ってる話に知らない話、日米で似ているところ、違うところといろいろあって興味深いですよ。
投稿: Buckeye | 2010年12月15日 (水) 15時36分