「の」の連続は避ける
今日、猛暑について報じた夜7時のNHKニュースで、アナウンサーが次のように言っていました。
~区は、23区内で唯一、すべての教室へのエアコンの設置がすんでいません。
一部教室にはすんでいるのかすんでいないのか、どちらなんでしょう。日本語としてはどちらにもとれると思うんですけど。台本なしの生放送でこういうしゃべり方をしたのなら、それはまあ、仕方がないのだけれど、夜7時のニュースで台本を読むアナウンサーがこう言ってしまうというのは困りものですね。もちろん、悪いのは台本を書いた人なわけですが。
一部教室にエアコンが設置されている場合もされていない場合も、誤解のないように表現する方法はいろいろあるはずだと思います。
■どの教室にもエアコンが設置されていない
- ~区は、23区内で唯一、いまだ、エアコンが設置されている教室がありません。
- ~区は、23区内で唯一、どの教室も、まだ、エアコンが設置されていません。
■一部教室にしかエアコンが設置されていない
- ~区は、23区内で唯一、まだ、一部の教室にしかエアコンが設置されていません。
- ~区は、23区内で唯一、エアコンのない教室が残っています。
- ~区は、23区内で唯一、一部の教室にエアコンが設置されていません。
- 23区はすべての教室にエアコンを設置する計画を進めていますが、~区だけは、まだ設置が完了していません。
ちなみに、そのあとの報道を見ていたら、どうも、「一部教室にしかエアコンが設置されていない」ということのようでした。
元の文章、「すべての教室へのエアコンの設置がすんでいません」が意味不明になってしまった主因は、「の」が3つも連続しているからでしょう。翻訳学校で教えたとき、「『の』が2つ重なったら、別の表現を考えろ」としていました。そうして考えた結果、2つくらいなら「の」を連続させた方がいいとなる場合もありますが、3つ連続というのは、まず、言い換えたほうが文意が明確になります。
「の」というのはさまざまな意味に使えて便利なのですが、便利なだけに、たくさん使うと文意が不明確になってしまいます。
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コメント
「すべて~ない」というのも紛らわしくなりがちな表現ですね。
「の」の連続は、個人的に3つまでと決めていましたが(^^;)、できれば1つ、最大でも2つになるように修正したいと思います。
投稿: snafkin | 2010年9月 8日 (水) 07時47分
snafkinさん、
そうですね、「すべて~ない」というのも、気をつけないと紛らわしくなりがちですね。そして、今回のような使い方だと必ず紛らわしくなります。
「の」の連続、3連続が絶対にいけないとまでは思わないのですが、3連続になるとほかの表現方法にしたほうがわかりやすくなることが格段に増えると私は思います。
投稿: Buckeye | 2010年9月 8日 (水) 08時38分
ゆく秋の 大和の国の薬師寺の 塔の上なるひとひらの雲
ってな文芸をやってるわけではないですからねー。
私の個人ルールでは、「"の" に限らず助詞の連続はなるべく回避する。やむをえない場合でも 2 回が限度」なのですが、IT 系の、もともとの品質がそこそこのマニュアルやヘルプでは「3 つまでOK」ってことにしています。
投稿: baldhatter | 2010年9月 8日 (水) 09時09分
「に」なんか、よく重なりますよねぇ。単純に変えたのではおかしくて、表現を変えたり文章自体を見直したりしなければならないことも多いし。
投稿: Buckeye | 2010年9月 8日 (水) 09時53分
こんにちは。
企業のIR書類を英訳していると、よく遭遇します。どこまで掛かるのか判断に苦労します。何度も原稿を読み返して、判断していますが・・(ハッキリしない時は、最終的に翻訳者メモに挙げることになります)。
日本語の書き方というコースを設けるべきでしょうね!
投稿: takey | 2010年9月 8日 (水) 10時31分
takeyさん、
>日本語の書き方というコースを設けるべきでしょうね!
そうですね。それも必要でしょう。
ただ、そもそもとしては、小学校からの作文教育を変えるべきだと私は思っています。基本的に「思ったとおりに書け」であって、「伝わるように書け」ではありませんからね。私が子どものころは完全にそんな感じでした。最近は個別にいろいろな取り組みがあっているようですが、全体としてはそれほど変わっていないようですし(って、「どう書いたら伝わるのか」を教える側がわかっていないのだからどうにもならないとは思いますけど)。
それから、企業のIR書類というのは、本来、きちんと書ける人が書かなければならないのに、実際にはそうなっていないという問題もあります。これは日本に限ったことではないようで、先日訳した『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』でも、著者がそんなことを書いていました。
投稿: Buckeye | 2010年9月 9日 (木) 09時32分
> 小学校からの作文教育を変えるべきだと私は思っています。
塾で小学生(中学受験コース)や中学生を相手に国語を教えているとき、感想文などというバカな課題を自分から出したことはありませんでしたが、「学校の宿題で困ってる」という相談はよく受けました。「どうしてもあらすじばっかりになっちゃう」という子もよくいたので、あるとき「読んでいない人に説明するつもりであらすじを書いてみよう」というのをやってみたことがあります。そのほうがよほど、内容をまとめる+人に説明する+書くことの総合練習になると思います。how to write の授業をもっと真剣にやるべきですねー。
投稿: baldhatter | 2010年9月 9日 (木) 14時34分