« うんのさんの辞書新版発刊記念オフ | トップページ | 「の」の連続は避ける »

2010年9月 7日 (火)

友人・知人から格安あるいは無料で翻訳を頼まれたらどうするか

7月、8月と収益拡大の方法についていろいろと書いてきましたが、これは別に、カネの亡者になれと言っているわけではありません。昔、「『稼げる』ことにこだわる理由」にも書いたように、「稼げないと稼がない選択ができない」からです。稼ぐ仕事ではがんがん稼ぎましょう。そこで稼げば稼ぐほど、稼ぎだけが価値ではない仕事をする余裕が生まれます。もちろん、仕事と関係ないことをする余裕も。お客さんに喜んでもらい、同時に我々が笑顔で仕事ができるためには、稼がない選択ができるレベルまで稼げる状況を作り出す必要があると思うわけです。

さて、我々の間で昔から悩みどころなのが、「友人・知人から格安あるいは無料で翻訳を頼まれたらどうするか」です。

きっちりじゃなく、ささっと簡単にやっちゃう程度でいいから、ちょっと翻訳してもらえない? 別に難しい内容じゃないし、プロならこのくらい簡単だよね?

たしかに簡単かもしれません。30分、1時間で終わる内容かもしれません。でも、30分、1時間はかかるわけです。だいたい、「高すぎる時給?」でも書いたように、我々の仕事に対する報酬はアウトプットに対するものですし、また、「内容がわかればよいので早く安く……」で書いたように、安いレベルでよいからと言われても手の抜きようがない世界です。

結局、翻訳者にとっては、「格安あるいはタダで仕事をしてくれ」と言われているに等しいことになります。

じゃあ、どうするか。相手との関係を考えて、やってあげていいと思うならやればいいしそうでなければ断るのでしょう。そのあたりの考え方は、「収益と社会貢献」で書いたとおりです。

……と言えば、いや、そんなことはわかっている、ただ、やってあげるのは釈然としないケースも断るのが難しいから悩ましいのだと言われそうです。

そうなんですよね。人間関係ですから。私もいろいろ難しいと思います。

というわけで、万人に向くとは思えませんが、ここでは、私はこう考えるというものをご紹介します。参考になる部分があれば、そこだけ使っていただければと思います。

■格安あるいは無料で翻訳を頼んでくる人のタイプ

格安とか無料とかで翻訳を頼んでくる人は、大きくふたつのタイプにわけられる気がします。そういう依頼を借りだと思う人と思わない人です。

借りだと思う人は、どこかで返そうという意識があります。そのため、もともと、そうそう気軽に頼んできません。そういう人が頼んでくる場合はそれなりの理由があることが多いですし、その依頼を受けたからといって、将来、同じような依頼が次々に来ることもありません。また、理由はともあれ、断ったとしても、それはそれで仕方がないとあきらめてくれます。

一方、借りだと思わない人は、自分にとって便利だと思えば気軽に頼んできます。また、その依頼を受けると、「またお願い」と依頼がくり返される可能性がかなりあります。この場合、初回を受けてしまえば、2回目、3回目……10回目を断るのはとても難しくなります。それでもと断れば、「前はやってくれたのに」と文句を言われます。だからと初回を断れば、「簡単なことなのにやってくれない」と、これまた文句を言われる可能性、大です。

おおざっぱに考えれば、後者の人がいるからこういう話がややこしくなるわけです。こういう人が頼んできたとき人間関係を壊したくないからと受けてしまうと、あとはずるずる……というパターンになるわけです。

■断りにくい人こそ断る必要がある

結局、ごくごくおおざっぱにまとめると、気軽に頼んでくる人ほど断りにくくて、断りにくい人ほどその依頼を請けるとあとまで尾を引く、となります。要するに、断りにくい人こそ断る必要があるわけですね。

では、断りにくい人はなぜ断りにくいのでしょうか。

断ると文句を言われるから? 断ると相手が怒るから? そんなこんなで、相手の人との人間関係が壊れるから?

でも、そもそも、そういう人と、「いい」人間関係が作れるものでしょうか? 頼みを断られて文句を言う人ほど自分が頼まれたときには断ることが多いように私は思うのですが、どうでしょう? そう思うので、私はわりと気軽に断ります。断られても怒らない人はそういう対応で大丈夫だし、断られて怒る人は離れていってもいいやと思うからです。こちらからいろいろやってあげないと保てない人間関係なんていらないと思いますから。

場合によっては、回りに「あの人は……」とあることないこと言われるかもしれません。それならそれでいいと思うのです。私の行動とその人の言葉とを比べ、私の行動のほうを信じてくれる人さえ近くに残ってくれればいいと思いますから。そして、ほとんどの人はちゃんと見てくれていると思いますから。

■補足

今回のエントリーを書いたきっかけは、しばらく前、とある翻訳者コミュニティにあがった質問でした。その中で、「フリーのカメラマンから、『海外との契約が取れのだけれど契約書が読めない、お金がないのでものすごく安い料金で翻訳して欲しい』と頼まれたのだけれどどうすればいいか」といった話がありました。

そのときにも書いたのですが……これなんか、言語道断ですよね。

仕事なら相場で払わなきゃダメでしょう。その契約から最終的に収益があがるかどうかは関係ありません。先行投資したからといってリターンがあるとはかぎらないけど、先行投資なしならリターンもなし。仕事ってそういうものでしょう。たった今、契約書の翻訳に支払う何万かのお金さえも手元にないのなら、いついつまでには払う、あるいは分割で払う、だからお願いと持ってくるべきだと思います。

逆にそこまで言われれば、量と内容、そしてもちろん、相手との関係によっては「今回、お金はいらないよ」という回答をすることもあるんじゃないでしょうか。

飲み代、飯代をけちっただけでも、そう長くかからずにそのくらいのお金はひねり出せるはずです。自分のメシの種なら、そのくらいしてでも何とかしようと思うんじゃないでしょうか。逆に、そこまでしようという気がないのなら、そんな契約、ほっぽればいいんです。

私はそう思うので、そのフリーカメラマンは仕事というものをとても甘く考えていると感じました。そういう人に何かしてあげると、「今度は~なのでお願い」といつまでも続きそうです。安く翻訳して欲しいという頼みを断って縁が切れるなら、切れたほうがいいんじゃないでしょうか。

|

« うんのさんの辞書新版発刊記念オフ | トップページ | 「の」の連続は避ける »

翻訳-ビジネス的側面」カテゴリの記事

コメント

Buckeyeさん、翻訳専門の方対象のHPに素人が書いてしまったのに気がつきました。投稿文は削除して頂いてかまいません。申し訳ございませんでした。

投稿: メゾフォルテ | 2010年9月20日 (月) 18時09分

Buckeyeさん、はじめまして。時折ブログを拝見させていただいております。

プロになった時点で、知人・友人からの「お願い」を聞いて「格安あるいはタダで仕事をしない」と決心しました。できれば「借りだと思う人」には対応したいと思いますが、「人によって対応を変える」と非難されそうなのでしていません。やはり、身近な人間関係なので、平等に接しないと問題が起きますからね。

すぐに頼み事をする人って、他人を自分の奴隷くらいにしか考えていないことが多いように思われます。そのような人種と付き合ってもロクなことにはなりません。「Google翻訳でも使ったら」とやり返すべきです。

実は、留学時代に英語が出来ない「友人」のために通訳をさせられて散々な目に遭ったことがあります。その当時は若かったので、異国で言葉が通じなくて苦労が多いだろうと思い、快く通訳してあげましたが、徐々に相手の態度が横柄になって、最後には奴隷のように扱われてしまいました。最悪の時には、首をしゃくって「訳しなさいよ」って感じでした。いい加減うんざりしたので、そのような連中から距離をとるようにしましたが、言うまでもなく「態度がよそよそしくなった」と逆ギレの嵐。ホラー映画よりこわい親切地獄って感じでした。

少し状況が違いますが、翻訳会社のコーディネーターにも、よく「お願い」する人がいませんか?このような「お願い」を「顧客サービスの一環」として取り扱いながら様子を見ていましたが、「お願い」の数と「利益の良い仕事」の数が必ずしも一致しないのが分かった時点で、そのコーディネーターと仕事をするのを止めました。私の場合は海外の会社なのですが、同じ会社で働いている他のコーディネーターからは仕事の打診が続いています。

ネガティブな話になってすいません。

投稿: CAT | 2010年9月23日 (木) 01時13分

CATさん、

それは大変でしたね。なんというか、考えられるかぎり一番マイナス側の経験という感じでしょうか。私は幸い、そこまでの経験をしたことがなくて、小耳に挟んだ話と推測で記事を書きましたが。

お金がからむ案件の「お願い」も微妙ですね。

こちらも、ホントにお願いというケースと、「『お願い』と言うだけならタダ」のケースがあると思います。後者は、借りたとは思っておらず、下手すれば、「仕事回して、カネ、払ったんだから自分が感謝されてもいいくらい」だと思っている可能性も否定できません。

投稿: Buckeye | 2010年9月23日 (木) 09時16分

仕事で類似の体験はないのですが、「電子メールがない時代の電話による応対」を連想しました。

仕事中にかかってくる電話で、「急ぎではないんだけど、少しだけ話したいんだよ。今いいかな?」と切り出すタイプで(いや、こんな前置きがないパターンもあった)、本当に内容がなく、仕事にも関係なく、要するに雑談がしたいだけ、という電話。

丁重に応対すればするほど、図に乗ってかけてくるし、話が長くなる。ひどいヤツになると、「君、良い情報を得ただろう」的な態度をちらつかせるパターンも。

このようなお節介電話によって失う「時間」を「収入低下額」に置き換えれば、似たような面もあるな~と思いつつ、読みました。

電子メールは、時間を置いて応答する(又は応答しない)権利を保有できるツールなので、助かっています。気軽に接してくる相手の数は電話時代より増えましたが、メリットの方が大きいと思います。

投稿: あきーら | 2010年9月24日 (金) 23時22分

あ~、そういうの、ありますねぇ。

ホント、やりとりするにせよ、メールだと都合のいいタイミングに読んで返事できるのがいいですね。あと、なんでも忘れてしまいやすい私にとっては、記録が残ることもメールの大きなメリットです。

投稿: Buckeye | 2010年9月25日 (土) 05時48分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/111098/49377872

この記事へのトラックバック一覧です: 友人・知人から格安あるいは無料で翻訳を頼まれたらどうするか:

« うんのさんの辞書新版発刊記念オフ | トップページ | 「の」の連続は避ける »