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2010年9月

2010年9月25日 (土)

a(b + c) や (a + b)c の訳し方

「IT翻訳者の疑問」の「[Linguistic Reviewerの疑問]a(b + c + d)をab + ac + adと訳す手法?」で、a(b + c + d)をab + ac + adと訳すのはよくないというようなことが書かれていますが……なぜ、いけないのでしょうか。というか、そうしないとおかしくなることのほうがむしろ多いと私は思うのですが。

前にも書きましたが、数式を展開するみたいに「mobile devices and applications」を「モバイルデバイスとモバイルアプリケーション」と訳すというやり方がしばらく前から流行しているような気がします。私の経験では、こう訳す翻訳者は一人や二人ではないし、翻訳会社から支給されるTMにも登録されていることがありますが、どうやって流行していったんでしょうか。こういう表現は「冗長」だといって嫌われるものだとばかり思っていましたが。

英語の構造からだけ判断するなら、"mobile devices and applications"という場合、そのアプリケーションはモバイルなアプリケーションか、モバイルかどうか関係なくすべてをひっくるめたアプリケーションか、いずれかですよね? で、内容的には、そのアプリケーションもモバイルなものということが多いでしょう。

アプリケーションもモバイルだとすれば、訳し方は、「モバイルデバイスとモバイルアプリケーション」か「モバイルのデバイスとアプリケーション」か、どちらかしかないでしょう。

後述するコメント欄でbaldhatterさんが指摘されているケースの順番逆版として、「モバイル・デバイスおよびアプリケーション」なんて、さすがにやらないですよね?

で、これだけならどちらでもいいっちゃいいんですが、たとえば原文が"the latest mobile devices and applications"だったら? 「最新のモバイルのデバイスとアプリケーション」は「の」が連続するというのも問題ですし、「最新」がかかる位置の問題から変な日本語になってしまいます。「最も新しい、モバイルのデバイスとアプリケーション」なら一応、日本語として成立すると思いますけど、ローカリ系なんかで"the latest"は「最新の」と訳せなんて言われていたらどうにもなりません。こちらを「最新の」とするなら、全体は、「最新のモバイルデバイスとモバイルアプリケーション」にするしかないでしょう。

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2010年9月17日 (金)

言葉を増やすと文意が変わる

ホントは、「『わかるものを省略』と『必要なことを言う』の違い」の前にこのエントリーを書くべきだった気がしますが……ま、仕方ありません。

日本語は、コミュニケーションの当事者同士で理解できる主語や目的語は当然のように省略されるなどと言われます。

そのとおりなのですが、ここで気になるのは「省略」という言い方です。

「省略」という言い方のイメージは「あってもなくてもいいものをなくす」「あったほうがいいけどなくてもいいから省く」であり、「あってはならないものを削る」「あってはならないものが出てこないようにする」ではありません。

だから、「省略」と言っているかぎり判断がどうしても甘くなり、「『わかるものを省略』と『必要なことを言う』の違い」で書いた「中間にある、どちらでもいい部分」が大きくなるはずだと思います。

逆に、「日本語は必要なことだけを書くもの」という考え方からスタートすると、「不要な言葉をいれると文意が意図と違ってしまうおそれ」が気になるようになります。

だから、「書かなくてもわかるところは省略」っていう言い方、私はきらいです。一見似ているようでいて、中身はまったく違うと思いますから。

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2010年9月16日 (木)

加工乳、食肉偽装、耐震偽装……そして翻訳

先日、たまたま、以下の記事を見つけました。

低価格で人気の「第三の牛乳」 なぜ他の牛乳より安いのか

  ただ不思議な点として、通常、生鮮食品の場合、加工することによって付加価値を高めると同時に、その分を価格に上乗せするのが一般的だ。しかし牛乳の場合、加工することが、価格を下げることにつながる。

  価格が安い理由として、成分調整牛乳は、牛乳から脂肪分などを分離し、それらはバターやチーズなどの加工品に転用できるため、その分の牛乳よりも価格が安くなる。加工乳は、さらに脱脂粉乳やバターなど規定の乳製品を混ぜることができるため、低価格化が実現できる。

この説明で成分調整牛乳が安くなる理由はわかりますけど、加工乳はわかりませんよねぇ。牛乳→バターその他の加工品→加工乳としたら価格が下がるなら、加工乳からさらにバターその他の加工品→加工乳とサイクルをくり返せばもっと安くなるってことになります。でもそんなはずはなく、加工すればするほど、コストはかさみます。

じゃあ、なぜ、加工乳が安くなるのか。

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2010年9月15日 (水)

「わかるものを省略」と「必要なことを言う」の違い

先日、「書くと安心する」で(↓)のように書きました。

必要なものがそこにあればいい、どこかにはいっていればいいわけじゃありせん。不要なものを削らないと必要なものの言葉が聞こえるようにはならないのです。でも、あるものを不要だと判断するのは怖い。

でも、翻訳という仕事において、「不要なものは削る」、「重なっているものを削りおとし、すっきりさせる」では最終的にそこそこの訳文しかできません。その理由は、なんと言ってもまず、日本語がもともと「必要なことだけを表に出す」言語だからです。

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2010年9月13日 (月)

日本通訳翻訳学会-年次大会(2010年)

この週末は、日本通訳翻訳学会第11回年次大会というものにも参加してきました。土曜日はJATさんのProject Tokyo 2010とかぶっていたので、日曜日だけですけど。

日本通訳翻訳学会サイトのURLを見て気づいたのですが、これ、水野さんの個人サイトということなのでしょうね。手弁当っすか……

この日本通訳翻訳学会、もともとは日本通訳学会だったのですが、しばらく前に日本通訳翻訳学会と名前を変え、翻訳関係も取り扱うようになったと聞いていたので、一度、参加してみたいと思っていたのです。

前日の疲れが残っていてきつかったので(^^;)、朝一から出るのはあきらめて2コマ目から参加することにしました。

聞いてきたのは(↓)のセッション

  • 「機械翻訳は使えるのか-Post-editing の観点から検証する」-山田 優さん
  • 「翻訳における一軸的批評の解体」-大久保友博さん
  • 「翻訳分析評価の知見を踏まえた英文和訳評価法の提案」-石原知英さん
  • 「海外ニュースの字幕翻訳における訳出方略」-稲生衣代さん、河原清志さん
  • 「Narrative理論に基づく通訳の実践と教育」-中村昌弘さん

以下、自分の心覚えをかねて感想など、書いておきます。

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JAT Project Tokyo 2010

9月11日の土曜日、JAT(日本翻訳者協会)さんのProject Tokyo 2010に、JTF(日本翻訳連盟)の理事として参加してきました。JATさんとJTFはこのところ協力関係にあり、イベント時、相互に何人か招待をすることが多いのです。

参加するたびに思うのですが、JATさんのイベントは元気がいいですね。年齢層がJTFよりも若いとか、いわゆる会社社長さんではなく個人事業者が大半だからとか、英語ネイティブが多いとか、そのあたりが理由なのだろうと思います。

Project Tokyo 2010は4トラック、4コマ/トラックの構成。私は(↓)のセッションに参加しました。

  • 煙のないところに火を起す(Pulling Jobs out of Thin Air)-松尾譲治さん
  • これ、何秒でできますか?(ワイルドカード、マクロ、ツール)-大里隆幸さん
  • Taming the Dragon: A Practical Guide to Voice Recognition and Translator Productivity(音声入力)-Richard Walkerさん
  • 翻訳者のためのオフィス環境アセスメントと健康アドバイス-ディニー・ユウノさん

以下、自分の心覚えをかねて感想など、書いてみたいと思います。

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2010年9月10日 (金)

論理の流れと翻訳-予測の観点から

先日書いたエントリー、『「予測」で読解に強くなる!』『文章は接続詞で決まる』で予測の重要性に触れましたが、それに類することを昔、どこかで書いたなぁと探してみたら出てきました。

翻訳関係のメーリングリストでドラッカー本(『非営利組織の経営』)が話題になったとき、その本は翻訳がよくなかった、あれなら英語で読んだ方が速いと書いたら詳しく説明をと言われたとき書いたコメントです。なお、ここで話題となった訳は昔のもので、もう絶版になっています。なにせ、下記コメントを書いたのは2001年と9年も前のことですから。

=======以下、昔書いたコメントそのままです。今、読み返すとタイポがあったりするようですが……

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2010年9月 9日 (木)

連続を避ける

『の』の連続は避ける」への補足です。

■「の」の連続を避けた例

今日、翻訳フォーラムへの投稿を書いていたら、

「SimplyTermsのヘルプの正規表現の入門に記載してあります」

となってしまいました。これなんか、「の」の一番基本的な意味、"of"になる「の」が連続しているだけなので意味が不明確になることはないのですが、やはり、気になるので(職業病?)、(↓)のようにしておきました。

「正規表現の入門としてSimplyTermsのヘルプに記載してあります」

ほかには、(↓)あたりのパターンが考えられるでしょうか。

  • SimplyTermsのヘルプにある正規表現の入門に記載してあります(「に」が連続して出てくる)
  • SimplyTermsのヘルプにある正規表現の入門という項目に記載してあります(「という」で軽くまとまるので「に」の連続は気にならないけど、全体が長い)

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Windows XP搭載パソコンの販売終了

Windows XP搭載パソコンの販売がついに終了するとのことです。

Windows XPは、現在、2014年までサポートが予定されていますから、まだまだ現役として利用可能です。ただ、新しく買うパソコンでWindows XPを選べるのは、あと1カ月程度ということになります。

ついに「Windows XP」を搭載したパソコンが販売終了へ

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2010年9月 7日 (火)

「の」の連続は避ける

今日、猛暑について報じた夜7時のNHKニュースで、アナウンサーが次のように言っていました。

~区は、23区内で唯一、すべての教室へのエアコンの設置がすんでいません。

一部教室にはすんでいるのかすんでいないのか、どちらなんでしょう。日本語としてはどちらにもとれると思うんですけど。台本なしの生放送でこういうしゃべり方をしたのなら、それはまあ、仕方がないのだけれど、夜7時のニュースで台本を読むアナウンサーがこう言ってしまうというのは困りものですね。もちろん、悪いのは台本を書いた人なわけですが。

一部教室にエアコンが設置されている場合もされていない場合も、誤解のないように表現する方法はいろいろあるはずだと思います。

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友人・知人から格安あるいは無料で翻訳を頼まれたらどうするか

7月、8月と収益拡大の方法についていろいろと書いてきましたが、これは別に、カネの亡者になれと言っているわけではありません。昔、「『稼げる』ことにこだわる理由」にも書いたように、「稼げないと稼がない選択ができない」からです。稼ぐ仕事ではがんがん稼ぎましょう。そこで稼げば稼ぐほど、稼ぎだけが価値ではない仕事をする余裕が生まれます。もちろん、仕事と関係ないことをする余裕も。お客さんに喜んでもらい、同時に我々が笑顔で仕事ができるためには、稼がない選択ができるレベルまで稼げる状況を作り出す必要があると思うわけです。

さて、我々の間で昔から悩みどころなのが、「友人・知人から格安あるいは無料で翻訳を頼まれたらどうするか」です。

きっちりじゃなく、ささっと簡単にやっちゃう程度でいいから、ちょっと翻訳してもらえない? 別に難しい内容じゃないし、プロならこのくらい簡単だよね?

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2010年9月 5日 (日)

うんのさんの辞書新版発刊記念オフ

昨日の夜、うんのさんの辞書新版発刊記念オフ(『ビジネス技術実用英語大辞典V5』発売記念オフ)に出てきました。オフ会には、30人強が集まり、3時間近くもわいわいと楽しくお話しをしてきました。その後、数人で2次会に流れ、帰宅は午前様……

会場に着いて、まず、発売になった『ビジネス技術実用英語大辞典V5』を買い、うんのさんご夫妻のサインもいただいてしまいました。

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CD-ROMにペン書きするのは、データがうまく読み出せなくなる危険があると言われていてあんまりお勧めできないのですが、まあ、たいがいは大丈夫なのは私はお願いしてしまいました。外箱もCD-ROMケースも捨ててしまうので、CD-ROMそのものにでもしていただかないと残らなくて(^^;)

今朝、さっそくパソコンにコピーして使っていますが、とりあえず、問題なく読み出せているようです。

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2010年9月 4日 (土)

『「予測」で読解に強くなる!』『文章は接続詞で決まる』

文章には流れというものがあります。この流れについて考えてみるときのとっかかりとして参考になる書籍、2冊です。いずれも新書なので、でかけるときにカバンに入れて電車の中で読むなど、気楽に読むことができます。ただし、我々にとっての勝負はそのあと。書いてある内容を翻訳という仕事にどう生かすのか、具体的なやり方のレベルまでブレークダウンし、かつ、くり返し練習してみる必要があります。

『「予測」で読解に強くなる!』
『文章は接続詞で決まる』

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2010年9月 3日 (金)

翻訳通信100号記念セミナー-関西編

先日、「翻訳通信100号記念セミナー・パーティ」で紹介したイベントの関西版が9月18日(土)、西宮で行われます。

関西セミナーは山岡さんの講演のあと、シンポジウムが開かれるとのことです。これはこれでおもしろそうで、できたら行きたいと思っていたのですが、残念ながらいろいろあって私は断念せざるをえませんでした。

関西方面の方で興味のある方はどうぞ。

そうだ。翻訳通信とはなんぞやという方がおられましたら、翻訳通信 ネット版にバックナンバーがありますから、ぜひ、読んでみてください。

以下、関西セミナーの案内です。

=====「翻訳通信」100号記念関西セミナーのご案内====

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2010年9月 2日 (木)

翻訳の過剰品質と質素イノベーション

先日書いた「翻訳の質素イノベーション?」に対し、「IT翻訳者Blog」に新しいエントリー、「翻訳の過剰品質と質素イノベーション」があがりました。ブログ同士で議論の応酬となっているので、こちらを読まれる方は、「IT翻訳者Blog」のほうも読まれたほうがいいと思います。

まずは枝葉の部分から。

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2010年9月 1日 (水)

SimplyTermsアップデート

自作して公開している翻訳支援環境、SimplyTermsのver.0.10.3 β を公開しました。
Buckeye's Software Library

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