日本通訳翻訳学会-年次大会(2010年)
この週末は、日本通訳翻訳学会の第11回年次大会というものにも参加してきました。土曜日はJATさんのProject Tokyo 2010とかぶっていたので、日曜日だけですけど。
日本通訳翻訳学会サイトのURLを見て気づいたのですが、これ、水野さんの個人サイトということなのでしょうね。手弁当っすか……
この日本通訳翻訳学会、もともとは日本通訳学会だったのですが、しばらく前に日本通訳翻訳学会と名前を変え、翻訳関係も取り扱うようになったと聞いていたので、一度、参加してみたいと思っていたのです。
前日の疲れが残っていてきつかったので(^^;)、朝一から出るのはあきらめて2コマ目から参加することにしました。
聞いてきたのは(↓)のセッション
- 「機械翻訳は使えるのか-Post-editing の観点から検証する」-山田 優さん
- 「翻訳における一軸的批評の解体」-大久保友博さん
- 「翻訳分析評価の知見を踏まえた英文和訳評価法の提案」-石原知英さん
- 「海外ニュースの字幕翻訳における訳出方略」-稲生衣代さん、河原清志さん
- 「Narrative理論に基づく通訳の実践と教育」-中村昌弘さん
以下、自分の心覚えをかねて感想など、書いておきます。
■機械翻訳は使えるのか-Post-editing の観点から検証する
今回、個人的に一番おもしろかったし、いろいろな意味で収穫があった話。
機械翻訳のポストエディットをするとき、できる人は一から訳したほうが早いとよく言うのですが、そのあたり、検証したデータがあったりとか。言語ペアが異なるとか、データの取得時期の問題とか、いろいろありますが、それでも、傾向としては同じことが言えるはずなので。
話をされた山田さんはお昼にお誘いし、いろいろと追加で話をしました。そんなこんなの中で出てきたおもしろそうなアプリケーションが"BB FlashBack"というもの。パソコンの操作状況を画面の動画として記録できるというものです。
「翻訳作業時間モデル」というのを昔、考えたのですが、このとき問題になったのが、キー操作のスピードとか考えている時間とか、すべて、実測ではなく推測だという点です(しかも、人間の時間感覚ほどあてにならないものはありませんし)。でも、"BB FlashBack"で記録を取ってみれば、ある程度、データという形にできそうです。
■翻訳における一軸的批評の解体
「誤解されやすい翻訳業界の常識-直訳 vs. 意訳」で書いた話のうち、著者との関係に焦点をあて、2次元的に考えてみましょうって感じの話……でしょうか。
話としてはそれなりにおもしろかったのですが、ただ、読者が出てこないのはどうなのだろうと思っていました。で、質疑でやはりそこを突っ込む方が出てきて……なんか、フロア側 vs. 発表者の集中砲火みたいになってしまいました。
誤解のないように補足しておくと、発表された方も、読者との関係はこれから考えて行くというお話ではありました。ただ、その考え方が少なくともフロア側の理解と異なるようで……
■翻訳分析評価の知見を踏まえた英文和訳評価法の提案
英語教育についての話だったので、私にとっては興味の対象外、でした。正直、セッションを選び間違ったというレベル。ま、そんなこともあります。
■海外ニュースの字幕翻訳における訳出方略
字幕なのであまり自分とは関係がないのですが、このコマではまだしも関係がありそうということで聞いてきました。が……うーん、よ~、わからん(^^;)
■Narrative理論に基づく通訳の実践と教育
通訳の話なのでどうかなと思いつつ、「Narrative理論って何?」と思ったので参加してみました。
なんというか、専門家と非専門家の接点において、専門家が一番よくわかっているという常識を捨てて非専門家の声を聞き、非専門家にとっての質を高めるということを考えてみましょうって感じの話……でしょうか。発表された方も、まだ着想段階なのでと言われていたくらいで、あまりまとまった話でもなければすぐにどうこうという話でもありませんでした。
■全般的な感想
通訳系の人が多いこと(もとが通訳学会だったから?)、大学教員など教育系の人が多いこと(学会……だから?)など、産業系の集まりとは顔ぶれも雰囲気も大きく異なるものがありました。とりあえず、近くでやる年は、また聞きに行っていいかなと思います。
1セッションが30分と短いため、あまり掘り下げた話にならないきらいがあるのが残念ですが、長くしたらしたでいろいろと問題も出そうなので仕方ないのかもしれません。
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