a(b + c) や (a + b)c の訳し方
「IT翻訳者の疑問」の「[Linguistic Reviewerの疑問]a(b + c + d)をab + ac + adと訳す手法?」で、a(b + c + d)をab + ac + adと訳すのはよくないというようなことが書かれていますが……なぜ、いけないのでしょうか。というか、そうしないとおかしくなることのほうがむしろ多いと私は思うのですが。
前にも書きましたが、数式を展開するみたいに「mobile devices and applications」を「モバイルデバイスとモバイルアプリケーション」と訳すというやり方がしばらく前から流行しているような気がします。私の経験では、こう訳す翻訳者は一人や二人ではないし、翻訳会社から支給されるTMにも登録されていることがありますが、どうやって流行していったんでしょうか。こういう表現は「冗長」だといって嫌われるものだとばかり思っていましたが。
英語の構造からだけ判断するなら、"mobile devices and applications"という場合、そのアプリケーションはモバイルなアプリケーションか、モバイルかどうか関係なくすべてをひっくるめたアプリケーションか、いずれかですよね? で、内容的には、そのアプリケーションもモバイルなものということが多いでしょう。
アプリケーションもモバイルだとすれば、訳し方は、「モバイルデバイスとモバイルアプリケーション」か「モバイルのデバイスとアプリケーション」か、どちらかしかないでしょう。
後述するコメント欄でbaldhatterさんが指摘されているケースの順番逆版として、「モバイル・デバイスおよびアプリケーション」なんて、さすがにやらないですよね?
で、これだけならどちらでもいいっちゃいいんですが、たとえば原文が"the latest mobile devices and applications"だったら? 「最新のモバイルのデバイスとアプリケーション」は「の」が連続するというのも問題ですし、「最新」がかかる位置の問題から変な日本語になってしまいます。「最も新しい、モバイルのデバイスとアプリケーション」なら一応、日本語として成立すると思いますけど、ローカリ系なんかで"the latest"は「最新の」と訳せなんて言われていたらどうにもなりません。こちらを「最新の」とするなら、全体は、「最新のモバイルデバイスとモバイルアプリケーション」にするしかないでしょう。
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