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2010年7月14日 (水)

『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』-誤訳の指摘

『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』、先行販売分を買った方などから、明日からの一般販売を前に続々と書評があがっています。そして……はい、出てしまいました。「誤訳や安易な訳が多いのが唯一の難点だ」という書評。

訳者としては、もちろん、いちばん出てほしくないたぐいの話なのですが、「翻訳が正しいか否かは翻訳後に決まる」でも書いたように、「どうがんばっても一定数には届かない」のが翻訳なので、出てしまうことが避けられないものでもあります。もちろん、人間がする以上、ミスをゼロにすることも不可能で、解釈間違いという狭義の誤訳さえもやってしまう可能性だってあります(『スティーブ・ジョブズ-偶像復活』では、1個所、解釈間違いという大誤訳が残っており、読まれた方にブログのコメント欄で指摘していただきました)。

世界は舞台、人生はプレゼン。そしてジョブスのキーノートはその道しるべ」(Lifehacking.jp)に、内容がすばらしいという絶賛のあと(内容の良し悪しは著者の責任であり、我々翻訳者は著者の足を引っぱらないことが基本的な仕事です)、最後に(↓)とあります。

難点など

唯一の難点は、あきらかな誤訳や、安易な訳に逃げた箇所や、音読していればさけられたはずの日本語の間違いが少なからずある点です。

“We’re here to put a dent in the universe” を「宇宙に衝撃を与える」と訳すのは言葉が足りない気がしますし、p.31 の「レオパードからリードを外す」「アップル、iPod を詰める」はまったく意味をなしていません(原文は、”Unleashes Leopard” つまり「Leopard を解き放つ」と、”Apple Shrinks iPod” 「アップル、iPod を縮小する」)。

「少なからず」と書かれているので、おそらく、ここに挙げられたほかにもいろいろと気になったところがあるのだろうと思いますが、とりあえず、挙げられた点について何を思って訳したのかなどを書いてみましょう。こういう裏話を聞きたいと翻訳者仲間からはよく言われますので。

■We’re here to put a dent in the universe

ジョブズの言葉として何回か登場するフレーズです。「宇宙に衝撃をあたえることが僕らの仕事だ」「宇宙に衝撃をあたえたい」など、キャッチフレーズ的に使われています。

この1文はいろいろな訳し方があるはずです。具体的な何かを説明しているわけではないので。ほかにもっといい訳し方はなかったのかと言われれば、「あったかもしれない。ただ、私はいろいろな面から考えてこれが一番だと判断した」としか答えようがありません。

ここに対する感想が「言葉が足りない気がする」であるのは、考えた側面のひとつが成功したからと言えるのだとは思います。本書では、くり返し、「シンプルにしろ」「言葉を削れ」と出てきます。そう訴える本書の言葉が冗長では、医者の不養生になってしまいます。「長い訳文・短い訳文」で例として取りあげた記事のような話ですね。

実はここ、5年前に訳した『スティーブ・ジョブズ-偶像復活』を踏襲している部分だったりします。この5年間でついた力をつかって一からじっくり考えなおせば、もう一段、いい訳が生まれたかもしれません。ただ、過去の訳が今回の書籍にもそれなりに適しているという状況であれば、連続性を重視したほうがいいと私は思いました。幸か不幸か、『偶像復活』は本をなるべく薄くしたいという出版社さんの要望があり、少し削りすぎなくらい言葉を削りました。つまり、今回の「削って、削って、削る」に並べてもおかしくないくらいには削ってあるわけです。

■Unleashes Leopard

原文は、ヘッドラインの例として"Apple Unleashes Leopard Operating System"がポンと出されている部分で、ある意味、文脈らしい文脈はありません(ヘッドラインとして使うときは後ろに続く記事が文脈として存在することになりますが)。

この英語、一般的には、Lifehacking.jpに書かれているように「解き放つ」とか「解放する」と訳します。当然、辞書にもそう載っています。

ですから、「レオパードを解き放つ」で終わりにしてもよかったのですが……ヘッドラインでもあり、もう少しひねってみた結果が「レオパードからリードを外す」です。"unleash"は"un-leash"であり、"leash"というのは「リードをつける」という意味合いがありますからね。ちなみにリードというのは犬につけるヒモです。ドッグランなど、犬を自由に走らせるときは「ノーリード」などと言うようです。

"unleash"が「解放する」になるのは、束縛する引き綱を外すからなわけで、大元に戻ることで、今までレオパードに引き綱をつけて動けないようにしていたが、それを外して獲物に自由に飛びかかれるようにしてやるってイメージを出そうとしたわけです。リードを外すとドーベルマンが獲物(犯人)に飛びかかってゆくみたいなシーンが映画とかマンガとかであったりしますが、ああいう動的なイメージです。動きたくて動きたくて仕方ないのにリードがあるから動けない。猛獣を「解放」とすると檻から出してやるイメージに受けとられる可能性がありますが、それでは動きたくて仕方ないのに動けないというイメージが生まれない可能性があります。

まあ、そんなこんな、いろいろ引っかけてややこしい訳にするといろいろな意見が出てきてしまうわけで……前述、「偶像復活」のコメント欄で取りあげられた"close its doors"の訳し方あたりと根底としては同じような話になります。

ああ……こうやって書いていると改めていろいろと考えてしまのですが……そうか、ここ、「レオパードをリードからはなす」ほうがよかった気がするなぁ。作業としては当然に「リードを外す」なのですが、ここ、リードを外されたレオパードはすっ飛んで行くはずで(なんてったって、ヒョウですから。ヒョウをリードでおさえているっていうのもなんかすごいイメージですが^^;)、そのイメージを出すためには逆にしたほうがベターだったんじゃないかと今は思います。

(↓)の検索結果からすると犬飼いの人たちもそのような語感なのでしょう。私はネコ派なので、犬関係の語感が不足していたようです。

"犬をリードから" 22,000件
"犬からリードを" 13件
"リードを外す" 520,000件

ここは今後、増刷があれば直しておきましょう。「アップル、レオパードをリードからはなす(放す?)」くらいかなぁ。直せるチャンスがきたところでまた考えますm(_ _)m

■Apple Shrinks iPod

"Apple Unleashes Leopard Operating System"に並べ、ヘッドラインの例としてポンと出されているものです。

要するに、iPodをちっちゃくしたということです。あとは、それをどう表現するか。Lifehacking.jpでは「アップル、iPodを縮小する」が提案されていますが、これは「iPod事業を縮小」という読み方をする人がいるかもしれないので基本的には避ける表現でしょう。そう読んでくれれば「iPod事業を縮小なんてそんなバカな!」という釣りになるからいいという考え方もあるので、あえて使うという方法もあるとは思いますが。

一番無難なのは「小型化」あたりでしょう。

それをあえて「詰める」にしたのは……「つまらない」ものじゃないよっていう意味合いを言外に込めてみたかったからです。ヘッドラインは少ない言葉でいろいろ伝えようと、言葉遊び的に複数の意味合いを引っかけてあることが多いのですが、それを訳すときには言葉遊びの部分を切り捨てざるをえないのが普通です。なので、ここはあえて追加してみました。

そういう意味でこんなに秀逸なのはめったにないと思うのが、"Intel Inside"と「インテル入ってる」の関係です。これは日本語→英語という流れだったらしいですが、ともかく、脚韻と頭韻という違いこそあれ、言葉遊びとその雰囲気までが翻訳された希有な例だと言えると思います。

この1文、もしかすると、本書の翻訳のなかで一番、冒険したところかもしれません。それはつまり、失敗だった可能性が高いということでもあります。外すかもなぁとかなり迷った記憶があります。「詰める」と漢字にするか「つめる」とひらがなにするかも最後まで迷いましたし、やはり「小型化」に逃げたほうがいいのかもしれないとも最後まで迷いましたし。

これが記事全体を翻訳するのなら、本文側の処理で言葉遊びをわかりやすくするなどの対応が取れるのですが、今回はヘッドラインだけで本文が出てきません。そういう意味からは、冒険しすぎだった可能性も否定できません。ここについては、たった今ふり返っても、どちらがよかったのか悩ましいところです。でも、ここは冒険、してみたかったんです。

その冒険が成功したのか失敗したのかは……読者のみなさんの判断次第、ですね。

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コメント

「詰める」は通じにくかったかもしれませんが、「縮小」はぜったい変ですよ~。形のあるモノを小さくすることは、あんまり縮小って言わないですよね。コピー機などの「拡大/縮小」という例はありますが、あれも縮尺の話であってモノではありません。広辞苑(第5版)だと、定義でははっきりしませんが用例はやはり「規模を~」と「軍備~」です。海野さんの辞書の例文でも、規模や機能、縮尺の例ばっかりです。

「誤訳を指摘するならそれ以上の代案を提示すべし」

それから「リード」ですけど、こちらは動物の「引き綱」を指す「リード」という言葉がそれほど一般的ではない(少なくともこのブログの方は知らなかった)という可能性はありませんか? 犬猫を飼っていれば「リードを外す」で十分に意味が分かりますけど、知らなければ通じない気がします。

投稿: baldhatter | 2010年7月15日 (木) 11時06分

わたしも「リード」=引き綱、を知らなかった説に一票。引き綱のことをリードって言い出したの、最近ですよね。子供の頃犬を飼っていましたが、リードなんて言わなかったと思います。今だって都会だけかも。今、連れ合いの実家(地方の農村地帯)で犬を飼っていますが、散歩に行くときは何て言ってるかなあ…「紐」?庭につないでるのは、「鎖」?

ややこしいのは、日本語にあらかじめ「リード」(リにアクセント)という言葉があることですよね。リードするとか、何点のリードとか。そっちしか連想しなかったとしたら、確かに「『レオパードからリードを外す』(...)はまったく意味をなしていません」かも。

shrinkの方、「詰める」対「つまらない」は、正直言って少々遠いかなと言う気はします。「つまらない」とセットになりうるのは「つまる」かなあ。でもそれじゃshrinkにならないし。セットにするのを仮に諦めたとして、「縮小」じゃなくて「縮める」ってのはどうでしょう。縮めるだったら事業のこととは思いませんよね。なんか、魔法使いに縮められちゃった子供とか動物とか、コミカルな連想をしましたが。

投稿: Nest | 2010年7月16日 (金) 05時17分

baldhatterさん、

>「誤訳を指摘するならそれ以上の代案を提示すべし」

プロ同士でやるならそうですけど、今回、誤訳だと言われている方はプロじゃないわけで、それはそれ、でしょう。訳者が「少なくともこうは読んでほしい」と思った読み方さえもできなかった読者にとってそれが「誤訳」であることは間違いないわけですし。

かつ、今回の方は、自分にとってベターな代案は提示されていたりしますし。それが読者全体にとってどうなのか、原文の意図にとってどうなのかはプロの領域であって、そこを一般の人に求めちゃいけないでしょう。

投稿: Buckeye | 2010年7月16日 (金) 05時55分

Nestさん、

「詰める」はやっぱり遠いかぁ。悩んだものは安全サイドに振るほうがいいとは思ってはいるんですが……安全を主眼にしてしまうとワケワカメな訳文になってしまうので、がんがん行くのを基本にして最後の最後だけちょっと安全サイドという感じで。

リードはまあ、知らない人には通じないかもと思わないじゃなかったんですけど(あと、レオパードがOSの名前だけでなく、四つ足動物の名前でもあると気づかない人とか……って、それはさすがに少なそうに思いますけど)、逆に知ってる人にはピンと来るはずで、そちらの効果を取っちゃったんですよね。そういう意味で田舎で昔っから犬を飼ってるじっちゃん・ばっちゃんに通じないのは当然に予想したのですが、対象読者から外れる人たちだからいいやってことで。田舎で40~50台以下の人たちだとどうなんでしょう。

  「音読していればさけられたはず」っていうのは、もしかする
  と、"unleash"を"unlead"に読み間違えたと思っておられるの
  かなぁなどと思っていたりします。具体的な指摘個所と比べて
  みると、それくらいしか対応しそうなものがないので。
  "unlead"も「リード」とは読まないのでどこか別のところなの
  かもとも思いますけど。

ああそうか……「リード」がすでに知らない人には通じないものなのだから、そのすぐとなりに遠いかもって心配しながら「詰める」を並べたのは失敗ですね。片方だけの違和感なら流せても、ふたつ続くと流せないくらいに気になるのも当然ですよねぇ。

普通につながっている文章を訳すときは、無理のある表現が並ぶことってまずないので気にする必要はないと思いますけど、それが100%ではないってことで。

リードはわかる人にわかる効果を狙ってこのまま使う(表現は変えますが)、それと並ぶ「詰める」は安全サイドにふるってことで、増刷になったら処理しましょう。

投稿: Buckeye | 2010年7月16日 (金) 06時41分

> レオパードがOSの名前だけでなく、四つ足動物の名前でもあると気づかない人

今回はその要因も大きかったかもしれませんね。これが 1 つ前の「タイガー」だったら、Buckeye さんの狙いどおりカタカナ書きで動物名とわかるところだったんですが、「レオパード」を動物名と認識する人は少ないでしょう(動物園でもそうは書かれていません)。かといって、レパードじゃ自動車? とか言われそうだし、レオパルドじゃ旧ドイツ軍の戦車だし...

投稿: baldhatter | 2010年7月16日 (金) 10時05分

ええ! レオパードが動物だってわからない人、多いんでしょうか? レオパード柄とかってよくみかけますけど……って、あれは基本的に女性用か。男だとわからない人も多いのかな……(いや、私も男なんですけど……)

投稿: Buckeye | 2010年7月16日 (金) 10時53分

レオタードと間違えたり…しませんね(^^;)。

それはともかく…書籍の(あるいは紙全般の)翻訳の場合、わたしは基本的には原文・訳文を付き合わせて読む人はいない(あるいはいても希有)と想定して訳しています。だから、原文にleashという言葉があったとしても、別に訳文にリード(あるいはそれに相当する言葉*)を入れようとは思わないと思います。たとえばここだったら、「レオパードを放つ」みたいにするかもしれません。

これが映像、特に字幕だと、常に原文と訳文が同時に提示される状況ですから、「英語で聞こえてきた音」と「字幕に出てる字」が何らかの形で呼応するというのを狙うというのはありかと思いますが。


*田舎の40代の例が1つ採取できましたが、「つな」でした。さらに採取に励みます。

投稿: Nest | 2010年7月16日 (金) 14時50分

あら? ちょっとほかのミスがあったかも……これから出かけるので、確認はまたあとで。

投稿: Buckeye | 2010年7月16日 (金) 15時16分

大変盛り上がっているところにおじゃまします。この本はぜひ読ませていただきたいと思っているのですが・・・

私も「iPodを詰める」はちょっと、と思った方です。少なくともBuckeyeさんの狙いどおりに受け取ることはできなくて、「iPodを詰める?どこに?」という連想しか働かなかったので(^^;)。

でもそれよりも、どうして「レオパード」なんですか? 私はずっと「レパード」と言ってきて、これを読んだときは自分はずっと間違って発音してたのか…と思いましたが、アップルのサイトでもカナ書きの場合は「レパード」です。これまで人が「レオパード」と呼ぶのを聞いたことも、「レオパード」と書かれているのを見たこともありません。発音からいっても「レパード」だと思いますし。Nestさんではないですが、つい「レオタード」と読んでしまいそうになりました。

みなさんのとても濃い内容の議論に比べればほんとに低次元なんですが、Macユーザーとしてはすごく気になったので。

投稿: junkot_apple | 2010年7月16日 (金) 22時58分

junkot_apple さん、こんにちは。

わたしも「レオパード」という読み方にはかなり抵抗があるのですが、どうしたわけかファッション用語としては「レオパード」って言葉が定着しちゃってますね。「レオパード柄のスカート」みたいに。でも、ファッション以外ではレオパードっていうのは確かに聞いたことがないですね。

MacOSの呼び名としてはどっちなんだろう…と思ってアップルのサイトを見てみても、アルファベットしか書いてない(^^;)。 http://www.apple.com/jp/macosx/
わたし自身はジャガーを最後に転向してしまって自分の能動語彙にMacOS Leopardがないのでよくわかりませんが、現役ユーザの方はレパードと言ってらっしゃるんですね。あ、でも検索してみたら、たまにレオパードといっている人もいますね。アップルがはっきり書いておかないからいけないんだわ…。

投稿: Nest | 2010年7月16日 (金) 23時38分

junkot_appleさん、

上でミスったかもと書いたのが、ソレです。動物としてのLeopardとOSとしてのLeopardがどういうつもりの関係になっているのか、それが日本語側でどうなっているのかとちょっと調べようとして……どうもカタカナ表記を間違えたらしいことに気づきました。

さきほど戻って、今し方、調べていたのですが……「"レパード" site:apple.com」でサイト検索すると、ニュースリリースでアップルが「レパード」としているものが見つかります。アップルサイトで「レオパード」とあるのはユーザーなどが書きこんだもの。カタカナ表記としては、英語音に近い「レパード」が正しいということです。(レパードと言われると、私など、動物ではなく車が浮かんでしまいますが……いや、まあ、車も、もともと動物ちなみでレパードになったのでしょうけど)

製品名などのカタカナ表記はメーカーのサイト検索で確認するのが手順なんですが、これについては、なぜか確認を忘れたのだと思います。確認したともしなかったとも記憶はまったくないのですが、確認しようとしていれば間違いに気づいたはずだと思うので。

私は英語でしか見た記憶がなくて読み方が頭に入っておらず……確認忘れというのは、凡ミスの大ミスです。すみません。

投稿: Buckeye | 2010年7月17日 (土) 00時17分

Nest さん、こんにちは。
コメントをありがとうございます。

アップルのサイトで検索窓に「レパード」と入れるといくつかヒットします。でも「レオパード」ではヒットしないので、やはり「レパード」だと思います。私も今回Googleで検索してみて、「レオパード」と表記する人もいることを知ってかなり驚きましたが、数としては少数派ですよね。

ファッション用語の方はまったく無知なので、「聞いたことも見たこともない」のは OS X 10.5 での話です。

投稿: junkot_apple | 2010年7月17日 (土) 00時32分

Buckeye さん

お返事ありがとうございます。

こういうものはたしかに英語のまま書かれることが多く、私も自分で書くときはほとんど「Leopard」と書いています。でも縦書きの書籍に横文字を寝かせて表示するのは読みにくいですものね。Macユーザーは実際に使うので書くときは英語でも発音する機会はたくさんあります。でもその発音が実は間違っていた、なんてことも間々あるわけですが(^^;)。だから私も、「本当はレオパードだったの?」と一瞬思って慌てて調べました。たぶん Buckeye さんが見つけたのと同じものを私も見ました。で、安心しました。

編集部にもMacユーザーはいらっしゃらなかったんですね。残念です。きっとよく売れると思うのですぐに増刷になって・・・そのときは直していただけるとうれしいです。

投稿: junkot_apple | 2010年7月17日 (土) 00時57分

junkot_appleさん、

2刷りはすでに印刷所に回っているので間に合わないのですが、その次があれば直しておきます>レパード

今回の件は、そもそも私がいつもの手順を忘れなければミスっていない話です。後工程に気づいてよかったはずの人(日本語でもレパードと読むと知っていたはずだと思う人)もいるのですが、そちらもなぜか見逃してしまったのでしょう。それぞれ、それぞれの部分のプロなのでミスは普通より少ないはずですし(確認の手順とか目のつけどころとか)、それがダブル、トリプルでチェックする話になるので最後まで大きなミスが残ってしまうことは少ないはずなのですが……やっぱりゼロにはならなくて……大事故発生のメカニズムと同じです。

再発防止は、今回の「しまったー!」という思いを忘れず、いつもの手順をくり返すしかないんだろうと思います。機械とかプログラムとかだと、ここで確認しないと先に進めないようにロックをかけてしまうことができたりしますが、そういう工夫は無理なので。

ほんと、すみませんでした。

投稿: Buckeye | 2010年7月17日 (土) 08時15分

気を取りなおして、増刷があったらどうするか、検討を続けます。

こういう検討、普通は頭のなかでばばっとやってゆくのですが、今回、初回の検討がイマイチだった部分なので、書き出してゆっくり考えてみます。

まずは"Apple Shrinks iPod"。冒険が失敗した可能性が高いようなので。

シソーラスと国語辞典も使って何かいい言葉はないかいろいろとあたってみましたが……コレっていうのがないですね。負のイメージが強い表現は当然にアウトだし。

●「アップル、iPodを小型化」

無難。日本の新聞が出す見出しはたぶんこうなる。でも、「印象に残る」「聴衆をつかみ、聞きたいという気を起こさせる」かというと、そうはならないと思う。

  「プレゼンのヘッドライン」としてしゃべることが前提の話に
  対し、事例が、がちがちの書き言葉が主体となる新聞だってい
  うのが、日本語としてはそもそも無理があるんですが……それ
  は言ってもせんないですね。本書の文脈からすれば、新聞だと
  思うと若干の違和感があっても、プレゼンのヘッドラインに合
  う言葉(少なくともスクリーンに投影しつつ、しゃべっても違
  和感がない言葉)にすべきでしょうね。

●「アップル、iPodを縮める」

Nestさんお勧め? 見出しで使われることは少なそうな表現で、軽い違和感がインパクトになる? しゃべりに一段近づいて、プレゼンのヘッドラインの例としてはいいかも。

●「縮んだアップルiPod」

動詞を述語とする見出しは少ないのでひっくり返してみました。こうやって自動詞にしたほうが日本語としては自然かも。ただ、

●「さらに縮んだアップルiPod」

インパクトを強めにするため「縮む」を強調してみたつもり。でもこれだと、過去に一度、縮んで話題になったことがあるように感じる。その感覚と現実が合致するかどうか、今回は確認不能(いつのどの製品についてのヘッドラインなのかがわからない)。

●「小さくなったアップルiPod」

「縮んだアップルiPod」の言い換え。「縮んだ~」と自動詞系にすると「服が縮む」などの連想からマイナスイメージを持たれる可能性がゼロじゃないかもって思ったので、一応、念のため。日常的な語彙に寄った分、家庭欄あたりにでも登場しそうなやさしめの記事って感じになる?

この中だと、新聞の見出しらしくて使えそうなのは「縮んだアップルiPod」「小さくなったアップルiPod」あたりかなぁ。しゃべりは「アップル、iPodを縮める」「アップル、iPodを小さくする」系でやることにして。ああでも、書き言葉としゃべり言葉で自動詞系と他動詞系が混在するのは避けたほうがいい? いやいや、「iPodが縮んだ」「iPodは小さくなった」でいいのか? 「ほら、こんなに縮んじゃったんだよ~」みたいな感じで。

投稿: Buckeye | 2010年7月17日 (土) 10時31分

"Apple Unleashes Leopard Operating System"について

Nestさんと同じで私も突きあわせて読まれることは想定しないというか、やりたい人はどうぞっていう程度にしか考えません。ただ、原文側で読者に持ってもらいたいイメージというものがあって、それは言葉の端々に表れていることは多いじゃないですか。たとえば、今回ならソフトウェアだから動詞をreleaseとしてもよかったはずなんですが、この1文を書いた人がreleaseを選択することはおそらくなかったはずだと。対象となるLeopardのイメージを大事にしたいと思ったはずですから。

さらにその背景には、そもそも、しなやかで敏しょうなヒョウのイメージをOSに持たせたいという思いがアップルにあるのだろうとも思います。他のバージョンも見ると、ネコ科の猛獣のイメージって言うほうがいいのかもしれませんが。

だから、そのイメージが少しでも出ないか、考えてみたいと思います。

「アップル、オペレーティングシステムのレパードを放つ/解き放つ」
「アップル、オペレーティングシステムのレパードをリードから外す/放つ/解き放つ」

「リード」は「引き綱」「鎖」あたりに変更する選択肢もありますね。

改めて並べてみると、「アップル、オペレーティングシステムのレパードをリードから外す/放つ/解き放つ」はちょっと冗長な感じがします。

ここで絶対必要なのは「アップル」「レパード」「解放する的な述語」の3つ。「オペレーティングシステムの」と「リードから」と情報を補足・追加する要素が多すぎるのかなぁ。特にオペレーティングシステムは長い単語だし、カタカナばっかりが並ぶのもよくない。

英語だと、"Unleashes Leopard"で動物のイメージが強く出るはずで(冠詞・単複の問題はありますが、基本として頭に浮かぶのは猛獣でしょう)、それがホントに動物ではなく、動物のイメージを持つ製品だよと示すために"Operating System"がはいっているんでしょう。

対して日本語で「レパード」というと、ヒョウを連想する人は少なそうです(画像検索すると、一応、ファッション系でレパード「も」使うようですが)。アップルのOSだと知らなければ、「知らない」か「車?」という反応が返ってくることが多いんじゃないでしょうか。

いずれにせよ、基本としてOSであることは明示しないとまずそうです。(一瞬、「オペレーティングシステム」をカットできたらと思い、原文にさかのぼっていろいろ考えてみましたが、やっぱり無理のようです)。

OSだと明示しつつ短くしたいなら……

「アップル、OSのレパードをリードから外す/放つ/解き放つ」
「アップル、レパードOSをリードから外す/放つ/解き放つ」

こっちのほうがいいようには思うのですが、「アップル」「OS」でぱっとわかる人にはいいけど、もっと広い層に読んでもらいたい新聞としては、やっぱり、「OS」という省略形をいきなり使うのはやめたいでしょう。パソコン雑誌なんかだったらOSとしちゃっていい場合もありそうですが。

とすると、やはり(↓)はこうするしかないってことになりそうです。
「アップル、オペレーティングシステムのレパード……」
「アップル、レパード・オペレーティングシステム……」

これだけでも実はけっこう長いんですよね。とすると、四つ足動物(できればネコ科)のイメージを持たせるために言葉を追加するか、短くするほうを優先するかで選択しなければならない。

短いバージョン、「アップル、オペレーティングシステムのレパードを放つ/解き放つ」も、述語の関係から、擬人化(含む、動物)されていると一応は感じてもらえるはずです。でも、どういう動物なのかのイメージは、レパード=ヒョウという感覚を強く持つ人以外には喚起されないはずだとも思います。

それでよしとするか、もう一工夫、何かできるか? 言葉を足さずにできればそれが一番なんだけど……

述語側としては……「放つ/解き放つ」なら「放つ」のほうが、そのあと、ひゅんとすっ飛んで行くイメージが強くなるような。「矢を放つ」などとの連想でしょうか。これに対して「解き放つ」はそのあとふっとんでいかなくてもよくて、自由になったというくらい? 「リードから」みたいな言葉がくっつくと、「放つ」はちょっとおかしくて(「から」と相性が悪い?)、「外す/解き放つ」のほうがよさそうです。ただ、「外す/解き放つ」は「放つ」に比べて動きのイメージが弱くなる。その分があるので、リードうんぬんと言葉を足したわりにインパクトが出にくい?

うーん……もう少し考えます。

投稿: Buckeye | 2010年7月17日 (土) 16時06分

いろいろ考え、ここに書いた以外にも二転三転したのですが……最終的に、小さくするほうの例は「アップル、iPodを縮める」を選ぶことにしました。理由は……あらためて本文の前後を読み返してみたところ、この直前に、「短く、印象に残る形で、何が何をどうするという文にまとめよう」とあったからです。

であれば、その実例として並ぶ新聞のヘッドライン、3種類も、そのパターンを踏襲したほうがベターだろうというわけです。3種類のうち、最初のひとつは「何が何をどうする」にすると無理があるので仕方ないのですが、「何が何をどうする」にしても日本語として特におかしいわけでもなく、新聞のヘッドラインとしては若干異例であっても使わないとまではならないと思う範囲であるなら、「何が何をどうする」という形にしたほうがいいでしょう。

レパードの例は……「アップル、オペレーティングシステムのレパードをリードから解き放つ」にします。やっぱり。

ちょっと長いんですけどね。

前に「オペレーティングシステムの」があるため、後ろを「放つ」などととても短くしてしまうと、それはそれでバランスがよくありません。「アップル、オペレーティングシステムのレパードを解き放つ」ならありだと思いますけど。

というわけで、最後は(↓)から選ぶことに。

「アップル、オペレーティングシステムのレパードを解き放つ」
「アップル、オペレーティングシステムのレパードを引き綱から解き放つ」

すっきりさせるか、読者に浮かべて欲しいと思うイメージが少しでも出そうなほうをとるか……すっきりでそれなりの割合の人にイメージが浮かぶならそれが一番なんですが……「レパード」じゃ、ホント、車って思う人が多そうで。

最後まで悩ましいところでしたが、両方っていうわけにはいかないので決断することにしました。

リードと引き綱は、ネットのヒットが100:1と圧倒的にリードが多いのでリードか……と傾いたのですが、でも、リードだとわからない人にはわからない、引き綱なら誰にでも理解してもらえるはずということで、引き綱にしてみました。

投稿: Buckeye | 2010年7月20日 (火) 14時56分

こんなに盛り上がっているところに恐縮です。会社では英文契約書、経済・相場関係の英語翻訳のチェックも業務の一貫ですが、ど素人の者です。

都市部の女性にとっては、「レオパード」が一般的で、「レパードってレオパードの間違いか?」位の認識ではないでしょうか。これはBuckeyesさんが書かれている通り、ファションの影響が大だと思いますが。
それにしても難しいのですね、翻訳のお仕事って。何百ページもの中の一言に対して、生まれも育ちも千差万別の読者から「自分の感覚では変だ」って公に指摘される・・・ターゲット層の最大多数を狙っていくしかないですよね。


投稿: メゾフォルテ | 2010年7月24日 (土) 11時08分

メゾフォルテさん、

夏休みをとって遊びまくっていたもので、コメント、遅くなりましたm(_ _)m

一般向けとして伝わるか伝わらないかという視点だけで考えるなら、かつ、現状を前提とするなら、「レパード/レオパード」の読みは「レオパード」一択だと思います。まあ、そもそも「レオパード」って読んじゃったのがおかしいっていう話もあるはずなら、必ずしも原音に似せた表記がいいとは限らないって話もあるので、ホント、一筋縄ではいかないのですが。

今回の書籍について言えば、これはあくまでアップル社の製品なわけで、一般向けとして伝わろうが伝わるまいが、アップル社が採用した表記があるかぎりそれが正しく、それ以外は間違いということになります。ですから、ここについては、単純に私のミスです。

製品名は英語表記っていう会社も少なくないので、書籍のように縦書きでカタカナにするのが基本っていうのはけっこう苦しくなることが多いのですが、それはまた別の話ですね。

難しいという意味では、どんな仕事をしても難しいんだと思います。っていうか、難しくなければ仕事として成立しないでしょうし。あああと、難しいからおもしろいという面もあります。

そのとき、そのときに持てる力を最大限に投入するしかないんですよね。それしかできませんし。その結果、ミスってしまってものは仕方がありません。それも含めて「実力」ですから。次のチャンスにはミスらないように工夫するなりなんなりするしかないですよね。

投稿: Buckeye | 2010年7月29日 (木) 06時57分

たまに文芸翻訳を仕事でしています。
この記事を読んで、文芸翻訳の立場からちょっと感じたことを。

ビジネス書ではルビをふるということはしないのでしょうか。
文芸翻訳なら、この場合、絶対、豹と書いて、レパードとルビをふります。
また、豹って、普通、リードでつなぐものなんでしょうか。原文は必ずしもリードでつないだものを解き放つのではなく、檻から外に出すような意味もあるのでは、と思いました。豹の場合、そのほうが自然に感じます。

また、shrinkという言葉で映画ファンがまず思い出すのは、shrinking man やshrinking womanという言葉で、これは縮みゆく男とか女、つまり、SF映画で人間が小さくなって、という話ですね。ミクロの決死圏とか、ほかにもいろいろ。
つまり、iPodをそういうSFで人間を小さくするのにひっかけた表現だと思うのです。なので、ちっちゃくする、が実は一番語感がぴったりなのですが、ビジネス書だとだめなんでしょうか。ちっちゃくなって、かわいくなる感じがあると思うのですが。

ビジネス書には文学的な表現や聖書などにちなんだ表現が意外に多いのですが、そういう方面に疎い翻訳家の方がこの方面には時々いらっしゃるように感じることがあります。

投稿: 文芸翻訳家JS | 2010年8月 8日 (日) 01時25分

文芸翻訳家JSさん、

ビジネス書でも、ルビ、かまわないはずだと思います。ただ、今回、この1文にかぎれば、ご提案のような形でルビを使うという選択肢はないでしょう。上の方に書いていますが、新聞の見出しだからです。

"Apple Shrinks iPod"についての検討で書いたように、新聞の見出しらしさを追求すると、がちがちの書き言葉になってしまって本書の目的にそぐわないので、あまりに「新聞の見出しだから」と考えすぎてはまずいですが、だからといって無視もできません。新聞の見出しとしてもあり得るだろう、プレゼンのヘッドラインとしてもあり得るだろうという中間を狙うしかないと私は思います。

記事自体でも触れていますが、ヒョウをリードでつなぐというのは、まず考えられない事態だと思います。現実に「ヒョウを放つ」場合の選択肢としては、おそらく、おりしかないでしょう。少なくともリードはありえません。リードを持ってる人が襲われちゃいます。

でも、今回のヒョウは現実のヒョウじゃありません。アップルが生みだし、はぐくんできたモノ。人間を餌と考え襲ってくる猛獣ではなく、人間のために一生懸命働いてくれるモノ。アップルが望んだとおり、ユーザーが望むとおり、一生懸命働いてくれるモノ。新聞とプレゼンの両にらみが必要であるように、ここは猛獣と役に立つモノの両にらみが必要だと思います。

"shrink"→「ちっちゃくする」ですか……たしかに語感としてはそれが一番かもしれませんね。あとは、新聞の見出しであることをどこまで重視するかと、60前後のおじさんが使う言葉としてどうか、でしょうか。新聞の見出しであることを考えると、基本的に「ちっちゃい」はなさそうです。60前後のおじさんが使う言葉としても、基本的にないと思いますが、ただこちらは、別のところで、基本的にないような言葉まで使って表現することも考えるべきだという話があるので、そこまで踏み込む手はあるでしょう。そんなこんなを考えると、見出しは「小さくする」系でしゃべりのほうを「ちっちゃくする」なんていうのはアリかもしれません。

投稿: Buckeye | 2010年8月 9日 (月) 06時05分

文芸翻訳家JSさん、

>> ビジネス書には文学的な表現や聖書などにちなんだ表現が意外に多
>> いのですが、そういう方面に疎い翻訳家の方がこの方面には時々い
>> らっしゃるように感じることがあります

ビジネス書というか、英語ってそんなものでしょう。また、それを言うなら、日本語だって同じようなものです。聖書にちなんだ表現はありませんが、仏教・神道系の言葉が混じることはありますし、漢語系の表現とか故事来歴のたぐいとかは珍しくないですよね。そして、外国語として学ぶ言語でそこまで身につけるのは大変です。

逆に、表現手法やその背景をいくら知っていても、書かれている内容が理解できなければ翻訳のしようがありません。

結局、自分の強みを生かし、弱みの悪影響をおさえる努力をするしかないんじゃないでしょうか。

ちなみに、私は、「文学的な表現や聖書などにちなんだ表現」は、自分の中で弱い部分だと思っています。私の場合、一番の強みは技術的な内容の理解であり、それに続いて論理展開の理解で、おそらく、一番弱いところが「聖書などにちなんだ表現」でしょう。まあ、こういうものはアナログ的なので、文芸翻訳家JSさんが「疎い」と感じられるほどに弱いのか、それとも「なんとかなっている」と思われるくらいにはわかるのかはわかりませんが。

だから、聖書やキリスト教に関係するものらしいと気づいたときはいろいろと調べまくることになります。そうやって調べたものはそれなりになっているはずだと思うのですが、弱い部分の問題は、そこに該当するかしないか気づきにくい点です。つまり、気づかずにスルーしてしまったものがおそらくはあるはずだとも思います。

私は産業翻訳も、文芸を含む出版翻訳も同じだと考えています。同じだと言いつつ文芸に手を出さないのは、何も、自分が弱い部分の比重があがる領域で勝負することはないと思うからです。自分の苦労は増えるのにたぶんアウトプットの質は落ちて、読者にとってもよくない結果になるはずですから。

このあたりについては、昔、(↓)で軽く触れています。

「産業翻訳者が出版を手がけるようになった訳  その2」
http://shuppan.sunflare.com/kanto_essay/kanto_ind_trans_to_pub2.htm

投稿: Buckeye | 2010年8月 9日 (月) 06時06分

>「レパード/レオパード」の読みは「レオパード」一択だと思います。

う~ん・・・実は「レオパード」単体では、これがなぜ leopard のことになるのかわからず、「レオパード柄」という言葉を見て、「それなら聞いたことがある!」とようやくわかりました。

個人的には、「レオ・・」と始めたら「・・パルド」と続けるのが自然な感じがします。leopard は、ギリシャ/ラテン語語源の古い語で、西ヨーロッパ言語のほとんどで似た綴りをします(仏・独leopard、伊・西leopardo)。発音は、英語以外では、最初の母音が「イオ」(二重母音)で次のシラブルには子音「r」を入れるか、入れ気味にします。ちなみに leopard は聖書にも出てきます(Can a leopard change its spots? )。

leo を短母音で「レ」と読み、pard の「r」を完全にすっとばす「レパード」は、母音の大転換を経た、いかにも英語らしい発音です。人名 Leonard だったら、英語式の「レナード」か「レオナルド」のどちらかになるのと同じです。とはいえ「レオパード」も「レオナード」もアリだとは思います。特に人名だったら本人の希望通りに読むので「レオナード」もあるはずです。ただ個人的には、「レオパード」は英語っぽくない→アップルっぽくないかな?とは思いました。

投稿: Jenny | 2010年8月13日 (金) 15時17分

Jennyさん、

そうですね、原語でどう読むかとか、それを踏まえたとき日本語でどう表記するかっていう場合はそういう話になりますね。

一方、日本人が日本語として身につけた語彙において、ヒョウを連想するケースが一番多いのは、やはり、レオパードなのだと思います。

Googleの画像検索をすると、レパード/レオパルド/レオパードがそれぞれ、日本語で何を意味しているのかがよくわかります。

レパード→自動車ばっかり
レオパルド→戦車(と変なマンガ)ばっかり
レオパード→ヒョウ柄の服ばっかり

ヒットの最後のほうになると、多少、違うものも出てきますが。

こうして見ると、やはり、「日本語の現状を前提として、ヒョウを意味することが一番よくわかるであろう」読み方は、「レオパード」一択になると思うわけです。

いずれにせよ、日本語でヒョウはヒョウであって、レオパードとかレパードとかって基本的に言わないので無理っちゃ無理なんですけどねぇ。

投稿: Buckeye | 2010年8月13日 (金) 20時31分

そうですね。日本語の「レオパード」は浸透しているようですが、その意味は、「豹」や「豹の~」よりも「豹柄の~」であることが多いようです。たぶん、どこかのブランドかファッション雑誌で「豹柄」を「レオパード(柄)」と呼びはじめたら、若い女性たちにウケたのだろうと思います。「豹柄」と言えば、大阪のおばちゃんファッションですが、「レオパード(柄)」なら若々しい、都会的な感じになります。ということで「レオパード」という言葉にはその出自が透けて見えるようなところがあるし、英語っぽくないし…で、個人的には原文の雰囲気に似合わないような気がしました(あくまで個人的に)。

それから辞書に載っていないようなのですが、unleash には「(製品など)未発表のものを発表/公開する」という意味があります。release と同じ意味です。"Apple unleashes|unleashed"、"Microsoft unleashes|unleashed" で検索するとたくさん引っかかります。前後の文脈がないのであれば、「抑制していた動物を解き放つ」という意味合いを濃く出す必要はないかもしれません。

投稿: Jenny | 2010年8月16日 (月) 15時50分

Jennyさん、

まあ、今回の場合、アップルが「レパード」と決めちゃってるので、あくまで、これから決めるとしたらどう考えるかっていう頭の体操なわけですが……

>個人的には原文の雰囲気に似合わないような気がしました

とすれば、Jennyさんならどうされます? どうすれば、ヒョウのイメージを読者にもってもらえると思います? それとも、製品名が持つイメージは伝える必要、ないでしょうか? 場合によってはとうぜんにある判断ですが、今回の場合、どうなんでしょうか。

>unleash には「(製品など)未発表のものを発表/公開する」
>という意味があります

"unleash"はもともとリードを外す、束縛から解き放つという意味なので、製品発表時に使えば、おっしゃるとおり、「発表する」という意味になります。私がふだんの仕事でよくやるプレスリリースではわりとよくでてきますし、そういうときは、いつも「発表する」と訳しています。

>前後の文脈がないのであれば

文脈は……元の新聞における文脈はわからないわけですが、本書における文脈はあります。上のほうに書いていますが、「短く、印象に残る形で、何が何をどうするという文にまとめよう」の例として出されているわけです。言い換えれば、著者は、"Apple Unleashes Leopard Operating System"という一文を「印象に残る」ものだと考えて提示しているわけです。

"Apple Unleashes Leopard Operating System"という一文、ごく普通に訳せば(↓)のようになるわけですが、

「アップル、オペレーティングシステムのレパードを発表」

さて、この一文は「印象に残る」代表例として出すほどのものでしょうか。どう思われます?

投稿: Buckeye | 2010年8月16日 (月) 17時01分

はじめまして。

本業 IT コンサルタント、副業で専門書の書籍翻訳を細々とやっています(本業、副業という区分は単に収入の多寡だけで、使っている時間は副業の方がむしろ多いかも)。

文脈の問題は難しいですね。確かに「短く、印象に残る形で、何が何をどうするという文にまとめよう」の例として示されているとすると

「アップル、オペレーティングシステムのレパードを発表」

では "Unleashes" のもつ「勢いのある響き」と「発表」の持つ「事務的な響き」が対応しないのでどうにも収まりが悪い感じがしますね。もし少々お遊びが許されるなら

「アップル、オペレーティングシステムのレパードを満を持してお披露目」

などはいかがでしょう。「満を持して」まで入れると少しやりすぎというならば、「発表」の代りに「お披露目」だけでも。

・・・でもやはりこれでは「勢い」がやはり足りませんね。

大元に立ち返ると、もし元々の新聞記事の見出しが、アップルユーザー以外に向けて書かれているとすると、
アップルユーザー以外の読者は多分レパードがOSの名前だなんて知らないわけですから、普通に読めば

「アップル、豹を解き放つ」

ということになり「え?何だ?何の話だ?」ということになる筈です。そして興味を惹かれて
記事内容を読み、豹が動物ではなくOSの名前だということを知るということになるわけですね。
実際これが原文の狙っていた「短く、印象に残る形」の効果なのかなとは思いますが、
こう訳すには少し勇気が要りますね(笑)。

悩ましいのは英語なら Leopard のままで、実は OS の事だよと言えるのに
翻訳では、豹は英語で Leopard(レパード)で、それは OS の名前だよ、と一段階挟まってしまうことです。
それでは、というわけで

「アップル、豹(レパード)を解き放つ」

としてみると・・・なんだかこれも不恰好ですね。悩みはつきません。
長文失礼致しました。

投稿: ardbeg1958 | 2010年8月16日 (月) 18時40分

ardbeg1958さん、

そうなんです、悩みは尽きないんです。

>もし少々お遊びが許されるなら

新聞の見出しとして訳すケースでは、本来、「お遊び」は許されないはずです。でもそれでは、著者の意図が実現できなくなるので、本書の訳としては「お遊び」というかひねりというかを加味するしかありません。一方、お遊びが過ぎれば、「この例って見出しだろ? ありえね~」という反応を引きだしてしまい、これまた、著者の意図が実現できなくなるおそれがあります。

実際にどういう処理をするかという面については……今回のように短い1文を短い1文に訳すというパターンだとできることに限りがあって苦しいんですよね。段落中の1文とかだったら、その前後の文に何か仕込んでインパクトを出すとか、状況を説明する部分とインパクトを出す部分の2文にわけるとか、選択肢が広がるのですが。

そういう意味では、今回のこの部分なんて、これで満足、このくらいできていれば合格点という翻訳はハナから無理なんだとも思います。

とはいえ、無理だからあきらめるというわけにもいかず……あがくしかないんですよねぇ。ホント、悩みは尽きません。

ま、だからおもしろいとも思うわけですが>翻訳という仕事

投稿: Buckeye | 2010年8月17日 (火) 08時16分

> まあ、今回の場合、アップルが「レパード」と決めちゃってるので、あくまで、これから決めるとしたらどう考えるかっていう頭の体操なわけですが……
>
> >個人的には原文の雰囲気に似合わないような気がしました
>
> とすれば、Jennyさんならどうされます? どうすれば、ヒョウのイメージを読者にもってもらえると思います? それとも、製品名が持つイメージは伝える必要、ないでしょうか? 場合によってはとうぜんにある判断ですが、今回の場合、どうなんでしょうか。

自分ならどうするか、を答えるには、原本と訳本の両方を読まないといけないのですが、両方とも読んでいないので、ごめんなさい、パスです。意図的ではなかったのですが、原文を読んでコメントしているかのような書き方をしていました。お詫びします。

読んでもいないのにコメントしてしまったのは、Buckeyeさんのブログを読む限りで、どうしても「レオパード」が気になって、「これから決めるとしたらどう考えるかっていう頭の体操」なのだとしたら余計に、「Buckeyeさん、レオパードはやめようよぉ……」という気持ちが募って、つい。「レオパード」が「豹柄」であることは知っていても、「豹」であることを知らない109ギャルがいると思うんです。ならば、やはり「レパード」ではないかと。


> 文脈は……元の新聞における文脈はわからないわけですが、本書における文脈はあります。上のほうに書いていますが、「短く、印象に残る形で、何が何をどうするという文にまとめよう」の例として出されているわけです。言い換えれば、著者は、"Apple Unleashes Leopard Operating System"という一文を「印象に残る」ものだと考えて提示しているわけです。

なるほど、そうなのですね。正直に告白すると、"Apple Unleashes Leopard Operating System" は、普通の見出しにしか見えなくて、これが「印象に残る」一文である理由が(これだけ見ても)よくわからないのですが、Mac OS X以降の歴代のOS名は、猫科の動物、それも猛獣系の強い動物ばかり(Cheetah、Puma、Jaguar、Panther、Tiger、Leopard、Snow Leopard)なので、「猫科の猛獣をOSの名前にするなんて、どうだ、格好いいだろう」みたいな雰囲気は伝わってきます。

> "Apple Unleashes Leopard Operating System"という一文、ごく普通に訳せば(↓)のようになるわけですが、
>
> 「アップル、オペレーティングシステムのレパードを発表」
>
> さて、この一文は「印象に残る」代表例として出すほどのものでしょうか。どう思われます?

何も色を付けず、ごく普通に訳した方がいい、と言うつもりはありません。「抑制していた動物を解き放つ」という意味合いを「色濃く」出さなくてもいいんじゃないか、と思った次第です(前のコメントにもそう書いたつもり)。

この見出しは、Leopard というOS名が発表された記事の見出しだったのでしょうか。そうだとしたら、「アップル、新OSを発表、次はレパード(豹)!」とか「アップルが発表した新OSはなんとレパード(豹)」あたりを起点にして考える、という方向性もありそうです。

いずれにせよ、この原文を、印象に残る代表例となるように訳すのは至難の業だと思います。それに取り組んでいるBuckeyeさんに敬意を表します。

投稿: Jenny | 2010年8月17日 (火) 16時47分

>> 「レオパード」が「豹柄」であることは知っていても、「豹」
>> であることを知らない109ギャルがいると思うんです。ならば、
>> やはり「レパード」ではないかと。

言い換えると、レオパードとしてもヒョウであるとはわからない人が多いから、読み方でヒョウだと伝えるのはあきらめるってことでしょうか。たしかに、伝わる人・伝わらない人の割合によっては、そういう考え、ありえますよね。

>> 正直に告白すると、"Apple Unleashes Leopard Operating
>> System" は、普通の見出しにしか見えなくて、これが「印象に
>> 残る」一文である理由が(これだけ見ても)よくわからないの
>> ですが

この英語は、さりげない工夫が光る1文として取りあげたのではないかと想像しています。だからさりげない工夫が光る訳文にできれば100点満点だと思うのですが、ま、それは望むべくもないですね。

>> この見出しは、Leopard というOS名が発表された記事の見出し
>> だったのでしょうか

確認はできていないのですが、Leopardの一般向けリリース(ソフトウェアのリリースという意味のリリースね)だったのではないかと思っています。社内での開発とかβ版のリリースとかはまだリードがついて束縛されている状態。それが今回、一般向けの正式版がリリースされるよ→今後は自由に走り回れるようになるよってイメージではないかと。そうでもないと、「印象に残る」例としてこの1文が取りあげられることはないと(つまり、普通っちゃ普通の見出しに見えると)私も思うのです。

>> いずれにせよ、この原文を、印象に残る代表例となるように訳
>> すのは至難の業だと思います。それに取り組んでいるBuckeyeさ
>> んに敬意を表します。

ありがとうございます。

でも、取り組んだだけで評価されるのはアマの世界ですよね。プロの場合、仕事で目の前に出てきてしまったら取り組むしかないわけで。取り組むのは最低限のことであり、結果が出せてはじめて評価される、と言ってもいいかもしれません。

で、ここ、満足できる結果が出せているかというと……正直、苦しいですね。

投稿: Buckeye | 2010年8月17日 (火) 21時55分

>言い換えると、レオパードとしてもヒョウであるとはわからない人が多いから、読み方でヒョウだと伝えるのはあきらめるってことでしょうか。

「ヒョウ」とカタカナで書いても、やはり伝わりにくいような気がします。「雹」や「表」もあるので。「豹」なら大丈夫かというと、漢字を読めない人もいそうです。「レパード(豹)」とするのはどうでしょう。

>この英語は、さりげない工夫が光る1文として取りあげたのではないかと想像しています。

そうですか。Buckeyeさんがそうおっしゃるのならそうなのでしょう。

unleash を「製品の発表」という意味で使った文に出会ったとき、なぜこの言葉を使うのか?と考えたことがあったのですが、ソフトウェアを動く物、つまり「動物」に見立てて、「動物を外の放つ」というイメージで使っているのかなぁ、と思いました。

この原文は、放たれるOSの名前が「レパード」なので、unleash とのコロケートの妙があり、それを著者が「工夫」と捉えたのだとしたら、そうかもしれません。

・・・で、こう書いていて思いついたのですが、「放つ」ぐらいにするのはどうでしょう。

「アップルの放つオペレーティング・システムはレパード(豹)」


投稿: Jenny | 2010年8月17日 (火) 22時34分

>> 「ヒョウ」とカタカナで書いても、やはり伝わりにくいような気がします。

文脈なしに「ヒョウ」と書かれても、それはそれでまた理解しにくいだろうと思います。ただ、漢字の「豹」は、原則、ひらく漢字なんですよ。そうなると、「レパード(豹)」の「豹」に「ヒョウ」とルビを振るという、非常に見苦しい形になります。

あと、Jennyさんのカッコ書きは、上のほうで、文芸翻訳家JSさんが書かれたルビを使うパターンと基本的に同じです。そういう意味でも、できれば避けたい形です。

ルビについては、実は、あのあと、いったん、「それもいいかも」と傾いたんです。

なにをどうひねっても、どうしてもどこかに無理が出ます。それを無理と感じず、すんなり受けとってくれる人も一部にはいるわけですが、無理があると感じた人の反応としては「翻訳が悪い」が多くなります。

「翻訳が悪い」と言われること自体は、まあ、かまわないわけです。もちろん気分はよくありませんが、無難な訳を捨てた時点でそういう評価が増えることは覚悟したわけで、仕方ない話ですから。でも、「翻訳が悪い」と思っちゃった人については、ここで著者が意図したことは実現されないわけで、それは、当然、まずい。

で、ルビなしでなんとかしようとしたものに対して「翻訳が悪い」と思ってしまう人と「新聞の見出しでルビはないだろう」と思う人とを比べると、「新聞の見出しでルビはないだろう」と思う人のほうが少ないのかもしれないと思ったわけです(っていうか、この実例を読むとき、それが新聞の見出しであることを強く意識しつつ読む人は少ないだろうと)。もしそうなら、「新聞の見出しだから」という縛りはもっと緩く考えていいことになります。

そんなわけで、ルビを使うのがよかったのかもといったんは思ったのですが、ここまできて、もともと新聞の見出しは、プレゼンのヘッドラインの参考例として出されていたことを思いだしました。

ルビで本来とまったく異なる読み方を提示するというのはひとつの形式なわけで、「そういう形式を勧めている」と読まれてしまったら、それは違うので、やはり避けた方がいいかと。ヘッドラインにルビは、基本的にないだろうと思いますし、本書で進めるスライドの作り方も、ルビの使用には不向きな方向性です。そのあたりも含め、「ルビ形式を勧めている」あるいは「カッコ書きで別の読み方を提示する形を勧めている」といった読み方をされたらまずいと思うわけです。

>>「放つ」ぐらいにするのはどうでしょう。

これは有力候補だと思います。上のほうのコメントでも検討していますけど、無理のない訳語の中で比較的動きが感じられるのは「放つ」ですから。そのくらいでとめおくか、もう少しひねるか、かなと思うわけです。

この言葉にいたる翻訳者が多いということは、やはり、「放つ」あたりがいいのかもしれませんね。

投稿: Buckeye | 2010年8月18日 (水) 12時57分

今朝、アップルのHPをチェックして気付きましたが、次のOSはMax OS X Lion(2011年夏リリース予定)だそうです。Tiger, Leopardそして百獣の王Lion。Lionの次は?

投稿: takey | 2010年10月21日 (木) 06時31分

タイポがMax OSではなくMac OSです。

投稿: takey | 2010年10月21日 (木) 06時39分

いや~、すみません、ここのところ死んでいました。11月いっぱいで仕上げなければならなかった案件が終わり、JTF翻訳祭その他が終わりして、ようやくホッとしているところです。もう少し休憩しないとやっていけない感じですが……

それにしても……Lionまでいっちゃったら次はないですよね。別シリーズに移行でしょうか。

あと、Lionはどう読むんでしょう? これはさすがに日本語で一般的な「ライオン」になりそうな気がしますが……それともやっぱり英語発音に近くするのか……

投稿: Buckeye | 2010年12月15日 (水) 15時34分

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