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2010年7月30日 (金)

翻訳チェックツール、CheckAlignの説明会に参加

昨日(2010年7月29日)、CheckAlignという翻訳のチェックを支援するソフトウェアの説明会に参加してきました。JTFの翻訳支援ツール委員会が行っているものです。

開発したのは翻訳会社のMCLというところ。

もともと、自社が翻訳のチェックを行うとき、一部作業を自動化しようと作ったソフトウェアで、それを外販することにしたようです。しばらく前に翻訳会社向けエンタープライズ版(価格は40万円)の説明会があったらしいのですが、今回私が参加したのは、機能を限定して値段を引き下げたパーソナル版(4万8000円)の説明会です。

以下、私が理解した範囲で書いていますので、聞き間違いなどありましたらご容赦を。

基本的な機能はパーソナル版で使えますが、用語集ファイルがひとつしか指定できないとか、大文字が何文字連続したら略号だとみなすかという設定ができない(デフォルトで決まっている)など、少しずつ機能を抑えたという感じです。

MCLのウェブサイトでは、「人とコンピュータの理想的な役割分担」として、以下のように書かれています。

例えば、翻訳内容をチェックする際には:

  1. 略語があっているか
  2. 数字があっているか
  3. 記号があっているか
  4. 半角全角は正しく使い分けられているか
  5. 指定用語が正しく使用されているか
  6. 内容が正しくかつ分かりやすく読者に伝わるか

などのポイントがあげられますが、CheckAlignでは、この1~5までのチェックを自動で行うことができます。これによって、人の頭を一番重要な6のチェックに集中させることができ、結果的に翻訳物の全体的な品質が向上します。

……どうなんでしょうね……

いや、このソフトウェアがいいとか悪いとかではなく、このソフトウェアでチェックできるようなミスを多発する翻訳者ってどうなんでしょうねってことです。

CheckAlignでチェックできる1~5のうち、1~3は、原文にあるものをきちんとコピペすれば間違いようがないものです。逆にいえば、この範囲のチェックに引っかかるということは、原文にある数字や記号をキーボードから改めて入力しているわけです。つまり、ミスが混入するワークフローで作業をしているということ。その対処としては行うべきことは、チェック用ツールの導入ではなく、ミスが混入しないワークフローへの変更でしょう。

半角全角も、半角なら原文にあるものをきちんとコピペすればお終いです。全角も、やり方次第でもともとミスをなくすという形にしたほうがベターでしょう。全角にすべきものは最初にざざ~っと全角にしてから作業するとか。また、半角・全角は翻訳するファイルのフォントを等幅フォントにしておけば、見た目で明らかに判別できたりします。これも、ミスを減らすことができる方法です。

Tradosを使うなど、翻訳の環境が制限されると工夫が難しい場合があり、そういうときは、チェックツールの導入も致し方ないかなと思います。

5の「指定用語が正しく使用されているか」も、本来は、翻訳するとき、手間いらずで確認できるようにすべきものですよね。あとからのチェックでは、まず、使うべきものを使っていなかったのか、それとも一応は指定されているが文脈上、使うべきでなかったから使わなかったのかを改めて判断する必要があります。使うべきでなかったから使わなかった場合、ここは使うべきところではないという判断をもう一度、しなければならず時間の無駄です。使うべきものを使っていなかったのなら、前後を読みなおして訳文を修正するということになり、こちらも手間が二重にかかります。

今回、CheckAlignの紹介をされた方にもお話ししたのですが、このCheckAlign、ミスが混入しやすいワークフローで作業をしている翻訳者にも仕事を頼まざるをえない翻訳会社が導入する意味はあると思いますが、作業の工夫ができる個人翻訳者が導入する意味ははたしてあるのか、疑問だと思います。もともと、翻訳会社が、自社が欲しい機能を作り込んだものなので、ある意味、当然のことではありますが。

翻訳会社の場合も、エンタープライズ版の40万円分の価値があるかどうかは議論があるところでしょう。おそらく、あると判断する会社と40万円は高すぎると考えるところにわかれそうです。開発費とマーケット規模を考えたら、せめてそのくらいで売らないと採算が取れないだろうなとも思いますけど。

ああそうだ。1カ月間だけ使える試用版(エンタープライズ版)があるそうです。興味のある方はMCLにお問い合わせください。パーソナル版の導入を考えている人にも、試用版はエンタープライズ版が渡されるようです。試用版は、申し込みがあってから使用期限を入れてコンパイルする形とのことなので、使ってみる期間の最初に受けとれるタイミングで申し込むことをお勧めします。

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