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2010年6月25日 (金)

ローカリゼーションという専門

先日紹介したSINAPSフォーラムのこともあり、最近、ローカライズというものについてぼんやりと考えることがよくあります。そんなことをしていてふと思ったのですが……ローカライズという分け方って、どうなのでしょうか。

翻訳の世界でローカライズとかローカリゼーションと呼ばれるのは、翻訳メモリを使い、多人数で進めるプロジェクトです。内容はコンピューターに関するもの(いわゆるIT系)。翻訳メモリを使わないものはローカライズと呼ばない、翻訳メモリを使ってもコンピューターと関係のないものとかひとりで完結する仕事とかはローカライズと呼ばない。私はそう理解しています。この縛りをはずすと、翻訳という仕事はすべてが「ローカライズ」になってしまいますから。

それにしても、この分け方、ちょっと不思議な気がします。

翻訳業界における分野の分け方は、大きくふたつに分かれます。ひとつは産業分野ごと。機械、化学、金融……という分け方です。こちらは特に不思議はないというか、専門とはそういうものだよねという感じです。

これに対し、特許、ローカライズ、映像というのは、前述の分野を横断するものです。

特許は特許法関連の知識がないといけないし、ローカライズは翻訳メモリなど特殊な作業環境が扱えなければ基本的にできません。映像も作業環境が特殊です。だから「分野」としてひとくくりのとらえ方をされるのでしょう。

ちなみに、ムック巻末の翻訳会社リストにある取扱い分野を見ると、アルクの場合、特許と映像はありますがローカライズはありません。イカロス出版は、特許、ローカライズ、映像すべてなく、それを挙げたい翻訳会社は「取扱特殊部門」という項目に特許、ローカライズ、映像などと書くようになっています。

このうち、特許は、特許という横断的なものと化学とか金融とかの分野とのクロス部分で仕事をしている人が多いようです。最先端の世界になるので、さすがに各産業分野の知識がないとどうにもならないとわかりやすくもあり、実際の仕事も大変になってしまったりするからでしょう。

これに対し、ローカライズと映像は、ホントに分野横断的に仕事をするようです。

このふたつを比べると……映像のほうが少し条件がいいかもしれません。映像から入ってくる情報がかなりあるはずだからです。言葉で説明されているものをいくら読んでもわからないものが、映像(静止画・動画)を見ると一発でわかったりします。その動画が基本的にセットとなっているのですから。

ウェブサイト関係の翻訳で、動画のスクリプトを訳すということが時々、ありますが、言葉だけを追ってから動画を見ると、格段に理解しやすくなることがわかります。

映像系で文字だけ送られくるなんて悲惨なこともないわけではないらしいですが。

そういう意味では、ローカライズって大変かもしれません。コンピューターの知識だけでなく、そのアプリケーションが取り扱うものの内容がわからないといけません。財務系のアプリケーションなら財務がわからないければどうにもならないところが頻出するし、プログラミング言語ならプログラミングというものの基本がわかっていなけれどどうにもなりません。しかも、動画のように一見してわかりやすいものはついてきません。それどころか、マニュアルやアプリケーションのごく一部だけを担当するわけで、全体像はみえません。これできちんとした仕事を仕上げるには、かなりの実力が要求されます。

ところが、少なくとも一時期は、「翻訳の仕事をはじめるなら仕事が多いローカライズ」みたいな風潮になっていたわけで。

「ローカライズ=質の悪い翻訳」というイメージができてしまったのも、ある意味、無理からぬことかなと思います。残念ながら。

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コメント

こんにちは。

>かなりの実力が要求されます。
それに加えて「翻訳メモリ」という、実力を下げる可能性を秘めたものを使わなければならないし、かなり心してかからないと、落とし穴に落ちてしまいます。メモリを使った文章は、元の有機的なつながりが断ち切られた寄せ集めのフランケンシュタインのようなものだと思うんですがね。

ほんとはこんなツールはもう使いたくないのですが、使わずにすむような力を付けるか、ツールを使わない分野に移るかしないと、離れることができなそうです。

投稿: snafkin | 2010年6月25日 (金) 11時27分

snafkinさん、

そうですねぇ……私もそう思うので、自分は使わないことにしていますし、使わずにすむ人はやめておいたほうがいいよとことあるごとにアドバイスしています。でも、ローカリの人は使わないわけにいきませんし。

いろいろと悩ましいですよね。

投稿: Buckeye | 2010年6月25日 (金) 15時39分

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