書名について
書名の決まり方については、前に「訳書や著書の書名の決まり方」でも書いたのですが……
「禿頭帽子屋の独語妄言 side A」に「# 『語学力ゼロで8カ国語翻訳できるナゾ』のナゾ ~ 0 と 1 の間~」という記事があがったので、それに関連してもうちょっと書いてみたいと思います。
そういう内容の本を、こんな扇情的なタイトルだけで売ろうとしている。少なくとも、このタイトルを決めた編集の方に、出版文化を語る資格はゼロだと言えるでしょう。
そこまで言ったら、編集さんがちょっとかわいそうかなという気がします。
今回の例に挙げられている水野さんの『語学力ゼロで8カ国語翻訳できるナゾ』、書名を決めたのは、編集さんではなく、営業サイドでしょう。っていうか、「訳書や著書の書名の決まり方」でも書いたように、書名の決定権は基本的に営業が握っているもののようです。であれば、どうしても「売らんかな」なタイトルになりがちかな、と。
「売らんかな」なタイトルがよくないっていうのは、baldhatterさんにまったく同意です。
でもなんというか……baldhatterさんの記事を読んで思ってしまいました。「訳書や著書の書名の決まり方」では、「売らんかな」にはなりがちだけれど営業が書名を付けることは一長一短という立場を取ったのですが、それはこれまで、不満があることはあってもそれなりの書名にはなっていたから、という側面があったのかもしれない、と。
もし、この書籍がbaldhatterさんが紹介されたような内容で(水野さんだからまともなことを書いているハズだとは思うけど、書名のあまりのあやしさに私は購入していない^^;)この書名なのだとしたら……そしてもし、この書籍を書いたのが私だったら……それなら出版しないでくれとゴネたかもしれないなぁと思ってしまいました。書名がどうであれ世に出れば読んでくれる人がいる、世に出なければ読んでもらえない。そういう問題もありますし、書名が決まるのは最後の最後で組版から何から終わりゲラ校正も終わったあとなので、いろいろと悩ましいところかなとも思いますが。
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コメント
> 書名を決めたのは、編集さんではなく、営業サイドでしょう
> 書名の決定権は基本的に営業が握っているもののようです
あ、そうでしたね。ちょっと認識不足のまま書いてしまいました。
自分が関わったケースだと、編集さんがタイトルを決定していましたが、あれはもう20年も前のことなので、もしかしたら当時と今とでは、編集部と営業のパワーバランスが違っていそうです。
投稿: baldhatter | 2010年5月10日 (月) 14時33分
書名の軽さが顕著になったのは「さおだけ屋」の大ヒット以来でしょうか。
良書が軽い書名に埋没するんじゃないの?とある編集者に聞いたんですが、重かったり地味だったりすると、どんな本でも売れないんだとか。一般向けの書籍は、内容よりもタイトルの影響が大きいそうで… こういうご時世ですから、そう言われると反論はむつかしいですね。
10年も前ですが、自分の著書(計算機本)の場合も、著者校が終わった後で、タイトルと装丁で編集と営業がバトルを繰り広げてました。結果、営業サイドの大勝利に終わりましたとさ。
投稿: yunaito@sapporo | 2010年5月10日 (月) 15時14分
baldhatterさん、
おそらくは今でもいろいろあるんじゃないかと思いますが……内容と齟齬をきたすほどに売らんかなだと、さすがに編集さん主導ではないんじゃないかなぁ。yunaitoさんのケースのようにバトルの末に営業が勝ったか。どうせそうなるからと編集さんが最初から迎合しちゃったという可能性はあるかと思いますけど。自分が会社員だったころを思いだしても、組織的な力関係によってはあきらめちゃうケースも珍しくありませんから。
投稿: Buckeye | 2010年5月10日 (月) 15時32分
新書の著者から聞いたことがあります、何も書いていない段階でタイトルだけ決まっていたと。
投稿: バックステージ | 2010年5月10日 (月) 21時17分
そういうパターンもあるんですねぇ。まあ、題名っていうのは「本来」、中身を凝縮したものだから、こういう本にしましょうってスタートならそのパターンでもまったく問題ないはずではあります。
投稿: Buckeye | 2010年5月11日 (火) 14時39分
わたしはこのタイトルの怪しさに思わず手に取り購入してしまいました。上野千鶴子さんの「セクシィ・ギャルの大研究」を彷彿とさせるタイトル付けですね。
投稿: TK | 2010年5月11日 (火) 16時58分
TKさん、
それが普通の反応だと思いますよ。売れるという意味では、一般にこういうタイトルのほうが売れるでしょう。
投稿: Buckeye | 2010年5月11日 (火) 17時40分