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2010年5月

2010年5月25日 (火)

表に出したら恥となる翻訳

このところ、単価下落とともにすさまじい翻訳というかなんというかが増えているといった話を聞いています。英日でワード単価が一桁の前半というような価格でもやる人が価格並みのものを出しているケースもあるでしょうし、日本語を母語としない人が英日をしているケースもあるでしょう。その背景として、海外の翻訳会社が安値を武器に受注し、その値段でやってくれる人に出すなどの形が挙げられたりします。よく聞くのは中国やインドの翻訳会社ですが、そのほかにもアジア各国、いろいろなところが動いているような話も聞きます。

どこをどう回ろうが、最後の最後は誰かが翻訳することになる。でもまともな人はまともな値段でしか仕事をしないし、そういう人にはまともな値段で仕事が集まる。結局、安く買えば安いモノしかあがってこない。それが当たり前だとどうしてわからないのか、ホント、不思議です。

私は幸い、そういう話と今までかかわりを持たなかったのですが……今回、「チェックしておかしい部分は修正して欲しい」と送られてきた会社紹介のファイルがそういうレベルでした。

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2010年5月21日 (金)

会社員の給与について

「会社員と翻訳者-収入の比較」というエントリーを2年も前に書きましたが(その元になった翻訳フォーラムへのエントリーを書いたのは、もう、9年も前)、その補足として会社員の収入分析をしてみました。

大手企業の総合職が40過ぎの年代に入れば、年間ベースで少なくとも800万や1000万、優秀な人なら1500万以上の給与をもらったりする(+退職金もある)。一方、翻訳者の「1500万」は経費込みなので、会社員なら給与1000万相当にしかならない。

「会社員と翻訳者-収入の比較」のこの記述に対し、会社員ってそんなにもらえるの?っていう趣旨の質問をされることがけっこうあります。私は勤めていたのが世間で大企業といわれるところであり、そこの実態から推測するかぎり、当たらずとも遠からずだと思って書いたのですが、改めてそう聞かれて示せるデータは持っていませんでした。先日たまたま、「年収ラボ」という会社員の年収に関するまとめサイトをみつけたので、そちらを参考に分析してみようと思います。

ホントは公開されている元データ(国税庁や厚生労働省のデータ)にあたるべきでしょうが……それは大変だし、このサイトも単純にグラフ化しているだけのようなのでここでいいことにします。

結論としては、上記推測は悪くなかったかなというところです。今でも上記推測は成立すると思うし、9年前なら会社員はもっともらっていたという感じ。

以下、細かく見てゆきます。

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2010年5月19日 (水)

MS Officeの表示拡縮-Ctrlキー+マウスホイール

たまたま気づいた小技を心覚えのためにメモ。Ctrlキーを押しながらマウスホイールを回すと、MS Officeの表示を拡大したり縮小したりできるんですね。ブラウザでは昔からよく使っていた方法なのですが、MS Officeでもできるとは知りませんでした。

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2010年5月18日 (火)

誤解されやすい翻訳業界の常識-直訳 vs. 意訳

翻訳業界では意訳と直訳、どちらがいいかという議論がよくありますが、ほとんどの場合、議論がかみ合わずに終わります。その理由は、意訳と直訳で意味する内容が人によって異なるからです。意訳にも直訳にもいい意味と悪い意味があると言ってもいいでしょう。

いい意味で使われるときの意訳
原文の「意」をくみ、それがきちんと伝わるように翻「訳」されている
悪い意味で使われるときの意訳
原文にない情報が付けくわえられていたり原文にある情報が削られていたりして、原文とは意味内容がまったく異なる訳文になっている
いい意味で使われるときの直訳
原文に書かれている内容がそのまま「直」に表れた翻「訳」
悪い意味で使われるときの直訳
原文が思い浮かぶ訳文であるとともに、訳文だけを読んだのでは意味不明であり透けて見える原文を思い浮かべて初めて意味が取れる訳文

いい意味の意訳と悪い意味の直訳を比較すれば意訳がいいことになるし、悪い意味の意訳といい意味の直訳を比較すれば直訳がいいことになります。当たり前ですよね。でもそういう議論からは、仕事でどういう方針にしたらいいのかが出てきません。

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2010年5月14日 (金)

ワークライフバランスの3本柱化

このサイトのテーマ、仕事としての技術・実務翻訳と直接には関係がない記事ですが、仕事というものに対する考え方、立ち位置といったことになるので、趣味のサイトではなく、どちらかと言えばこちらに書くべきものだろうと思いました。

我が家ではワークライフバランスという言葉、不評です。「ワークライフバランスの言葉の意味について」でも紹介されていますが、この言葉、人によって定義が違います。というか、みんな、自分に都合のいい定義で語る、語れてしまう言葉です。それはスローガンとしてまずいでしょう。

もうだいぶ前のことになりますが、女性の再就職支援を行なうNPO法人、NOW for Empowermentというところが開催した「パートナーと考える-再チャレンジとワークライフバランス」にパネリストとして参加しました。主催団体に知り合いがいて出て欲しいと頼まれたものですから。

パネルディスカッションの打ち合わせを兼ね、お昼を食べながら雑談していたときにお話ししたことなのですが……本来取るべきは、「ワーク」と「ライフ」のバランスではなく、「カネになる仕事」と「カネにならない仕事」と「余暇」のバランスでしょう。

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2010年5月12日 (水)

収入不安定性の低減について

もうずいぶん前のことになりますが、技術者から翻訳者へのシルクロードに「受注ルートの多様性確保による収入不安定性の削減」という記事がありました。

ある受注ルートから得られる収入の不確実さを、ここでは正規分布における標準偏差として取り扱い、各受注ルートからの発注量および誤差には相関がないものとする。すなわち、すべてランダム誤差であって、系統的な誤差は含まれないものと考える(これは現在のような大不況期には適切とはいえない仮定だが、十分高い頻度で声をかけてもらえる翻訳者にとってはある程度通用すると期待してもよかろう)。

この場合、合成誤差は、各受注ルートが持つ誤差の2乗の総和の平方根となる(注:線形組み合わせ時の誤差伝搬の法則より)。

各受注ルートから得られる収入の誤差を30%と考えると、

受注ルートが1社の場合、誤差は当然±30%。

2社から同程度の比率で請ける場合、誤差は21%に低下。

4社から同程度の比率で請ける場合、誤差は15%に低下。

8社から同程度の比率で請ける場合、誤差は8%に低下。

16社から同程度の比率で請ける場合、誤差は4%に低下。

数学的にはそうなるのですが、実務的には少し違うというかこれに加えて考えるべきことがあるように思います。それは、「自分の処理量に限界がある」という点です。この点について、まず、打診を断れるのか基本的に断れないのかでわけて考えてみます。

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2010年5月10日 (月)

書名について

書名の決まり方については、前に「訳書や著書の書名の決まり方」でも書いたのですが……

禿頭帽子屋の独語妄言 side A」に「# 『語学力ゼロで8カ国語翻訳できるナゾ』のナゾ ~ 0 と 1 の間~」という記事があがったので、それに関連してもうちょっと書いてみたいと思います。

そういう内容の本を、こんな扇情的なタイトルだけで売ろうとしている。少なくとも、このタイトルを決めた編集の方に、出版文化を語る資格はゼロだと言えるでしょう。

そこまで言ったら、編集さんがちょっとかわいそうかなという気がします。

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