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2009年11月11日 (水)

「SATILA-IT分野の比較」について

■SATILAカスタマイズ効果の比較 IT分野」に示されたSATILAプロアシストの訳文について検討を加えてみます。以下、「以下はSATILAカスタマイズの効果を比較する例です。」の一文と表組みされている部分は元ページからの引用です。


以下はSATILAカスタマイズの効果を比較する例です。

カスタマイズなし
(LogoVista X PRO 2006専門辞書フルパックのIT関連辞書すべてを使用。設定は購入直後の状態。)
SATILAオート
IT分野の翻訳向けカスタマイズを行いLogoVista X PRO 2006で翻訳
SATILAプロアシスト
単語の調整に改善の余地はありますが、基本的な解釈は誤っていません。 ノウハウに基づいたカスタマイズで単語の調整と適切な自動後処理をしているので、訳文に人の手を加えなくてもここまで自動でできます。 SATILAオートの自動翻訳をプロの翻訳者が仕上げています。わずかな作業で完成訳にできる点にご注目ください。
原文 XML declaration may contain information about character encoding and external dependencies. <http://en.wikipedia.org/wiki/XML>
カスタマイズなし XML 公表が文字符号化と外部の属国についてのインフォメーションを含んでいるかもしれません。
SATILAオート XML 宣言が文字エンコーディングについての情報と外部の依存関係を含むことがあります。
SATILAプロアシスト XML 宣言には、文字エンコーディングと外部依存関係についての情報を含めることができます。

最新版には例文部分がないようです。履歴をさかのぼると、このあたりに上記原文がありました。

これはまあ、こんなものでしょう。一般的にはまだリファインの可能性が残されていますが、「ローカライズで求められるもの」としては、これ以上は再利用性が落ちるなどあまり好意的に受けとられなくなるおそれがあります。

原文 Intel Core Solo uses the same two-core die as the Core Duo, but features only one active core. <http://en.wikipedia.org/wiki/Intel_Core>
カスタマイズなし インテルコアが一人でコア2人組と同じ2コアのさいころを使いますが、ただ1つのアクティブなコアだけを優れた特徴とします。
SATILAオート Intel Core Solo Core Duo と同じ2コアのダイを使用しますが、ただ1つのアクティブなコアだけを使用します。

【解説】最新の製品名などの固有名詞はうまく訳せないことがあります。効率よく辞書登録するノウハウが必須です。

SATILAプロアシスト Intel Core Solo Core Duo と同じ2コアのダイを使用しますが、1つのアクティブなコアだけを使用します。

原文へのリンク

「1つのアクティブなコアだけを使用します」って何を意味しているのでしょうか。分かったような分からないような訳だと私は思うのですが、ごく普通の人にはこれですんなりわかるものなのでしょうか。

原文を読めばわかりますが、要するに、ダイには2つのコアがあるけど、使えるのは1個だけだよって話です。2コアのCPUを作るとき片方がおかしくなったりしたらCore Soloとして売れる……などと話が続きます。

"features"とあるあたりを考慮すれば、とりあえず、(↓)くらいが最低限でしょうか。

「Intel Core Solo は Core Duo と同じ2コアのダイを使っていますが、アクティブなコアは1つだけです。」

でも、せめて(↓)くらいにはしたいですね。

「Intel Core Solo は Core Duo と同じ2コアのダイですが、使用できるコアは1つだけです。」

これも、機械翻訳の出力に引っ張られた例ですね。

原文 Recovery from errors in fault-tolerant systems can be characterised as either roll-forward or roll-back. <http://en.wikipedia.org/wiki/Fault_tolerance>
カスタマイズなし フォールトトレラントシステムでのエラーからの回復が前進復帰あるいは後退復帰であると特徴づけられることができます。

【解説】誤りではないが使用頻度がきわめて低い訳語が使われています。

SATILAオート 耐障害システムでのエラーからの復元がロール フォワードまたはロールバックであると特徴づけられることができます。
SATILAプロアシスト 耐障害システムでのエラーからの復元は、ロールフォワードとロールバックのどちらかになります。

リンクが間違っているようで、原文はこちらにありました。

「耐障害システムでのエラーからの復元」は「の」が連続しています。基礎の基礎として翻訳学校の生徒さんにくり返し話すことの一つが、「の」が連続したら書き直すことを検討しろ、です。「の」の連続は分かったような分からないような文になる大きな原因ですから。

ここの場合であれば、「(耐障害システムで発生したエラー)からの復元」なのか、「耐障害システムにおける(エラーからの復元)」なのか、下手すれば迷います。言語的にはどちらも許す表現ですから。文脈を考えれば「耐障害システムにおける(エラーからの復元)」なわけですが、であれば、それ以外の解釈が言語的に難しくなるようにするのが我々翻訳者の仕事でしょう。

原文の大きな流れ(項目の頭からの流れ)を考えれば、

「エラーからの復元はロールフォワードかロールバックで行う」

みたいな形が候補になりそうです。「耐障害システム」を省いてはいけないのなら、流れは悪くなりますが(↓)のような形もあるでしょう。

耐障害システムでは、ロールフォワードあるいはロールバックという形でエラーからの復元が行われます。

ちなみに、SATILAプロアシストの訳文、「耐障害システムでのエラーからの復元は、ロールフォワードとロールバックのどちらかになります」を読むと、この前にはきっと、この2種類以外のさまざまな復元方法が紹介されているんだろうなぁと思ってしまいます。そういう文脈なら、この訳もありだと思います。

原文 Such devices are plugged into any existing IP network and the storage capacity is available to all users. <http://en.wikipedia.org/wiki/Windows_Server_2003>
カスタマイズなし このような装置はどんな既存の IP ネットワークにでも差し込まれます、そして記憶容量はすべてのユーザーにとって入手可能です。
SATILAオート このような機器はどのような既存の IP ネットワークにでも接続させられます、記憶容量はすべてのユーザーに使用可能です。
SATILAプロアシスト このような機器は既存のあらゆる IP ネットワークに接続でき、すべてのユーザーがその記憶容量を使用できます。

原文へのリンク

この例文、段落の2番目の文です。

Windows Storage Server 2003 NAS equipment can be headless, which means that they are without any monitors, keyboards or mice, and are administered remotely. Such devices are plugged into any existing IP network and the storage capacity is available to all users.

「このような機器は既存のあらゆる IP ネットワークに接続でき」るんですか? この書き方は、言外に、「ほかの機器は接続できないIPネットワークがあるかもしれない」あるいは「この機器はほかにも使い方があるが、IPネットワークにも接続可能」を含意する可能性があります。

でも、ここ、どう読んでも違いますよね。

キーボードなどの周辺機器がまったくないんですから、IPネットワークに接続する以外、使いようがないわけです。"any existing IP network"というのは「既存のあらゆるIPネットワーク」ではなく、「IPネットワークであればどれでもいい」でしょう。「どれでもいいからIPネットワークにつなげばどのユーザーも使える状態になる」というイメージです。

"existing"をわざわざ「既存の」と訳出して目立たせてしまっているのも問題なんですが、このくらいはIT系だと仕方ないのかもしれません。

原文 Many programming languages support regular expressions for string manipulation. <http://en.wikipedia.org/wiki/Regular_expression>
カスタマイズなし 多くのプログラム言語がストリング扱いのために正規表現をサポートします。
SATILAオート 多くのプログラム言語が文字列操作のために正規表現をサポートします。
SATILAプロアシスト 多くのプログラム言語が、文字列操作のために正規表現をサポートしています。

原文へのリンク

上記の文章は、以下のような流れになっています。

A regular expression (abbreviated as regexp or regex, with plural forms regexps, regexes, or regexen) is a string that describes or matches a set of strings, according to certain syntax rules. Regular expressions are used by many text editors and utilities to search and manipulate bodies of text based on certain patterns. Many programming languages support regular expressions for string manipulation. For example, Perl and Tcl have a powerful regular expression engine built directly into their syntax. The set of utilities (including the editor sed and the filter grep) provided by Unix distributions were the first to popularize the concept of regular expressions.

SATILAプロアシストの訳文は、「プログラム言語」にフォーカスがあたっていますが、この文脈でそういう訳文にすると唐突になってしまいます。ここは正規表現にフォーカスをあてておくべでしょう。「正規表現による文字列操作は、さまざまなプログラミング言語でサポートされています」とかがとりあえずのたたき台として浮かびます。

ところで、"programming language"というのは「プログラム言語」なんでしょうか。いや、まあ、クライアントが指定すればそれに従いますけど、一般的には「プログラミング言語」のはずですけどね。辞書の記載も「プログラミング言語」が多いですし、ウェブでのヒット数も1桁近く違います。また、この原文、ウィキペディアなんですが、日本語ウィキペディアで「プログラム言語」を引くと「プログラミング言語」に飛ばされます。つまり、少なくともウィキペディアの翻訳としては「プログラミング言語」と訳すべきなんだと思います。(「プログラミング言語」のエントリーがウィキペディアに書かれたのは2002年。まず間違いなくSATILAプロアシストの例を作るより前です)

これも機械翻訳の出力に引きずられた例ですね。

原文 In XHTML, all attribute values must be enclosed by quotes. <http://en.wikipedia.org/wiki/Xhtml>
カスタマイズなし XHTML で、すべての属性値は引用文によって同封されなくてはなりません
SATILAオート XHTML で、すべての属性値は引用符によって囲まれる必要があります
SATILAプロアシスト XHTML では、すべての属性値は引用符によって囲まれる必要があります

「すべての属性値は」は、自然な日本語では「属性値は必ず」だと思いますけど、まあ、このくらいはローカライズ系のこういう翻訳では許容範囲だろうとも思います。そういう意味で、これはこれでまあまあでしょう。

# Various versions of HTML often permit quotes to be omitted from attribute values, e.g., <body lang=en>.[11] In XHTML, all attribute values must be enclosed by quotes, either single or double: <body lang="en"> or <body lang='en'>.

ここの文は、段落頭の1文で「HTMLにもいろいろあって、属性値に引用符をつけなくていいことが多い」という話が出たあとに続くものです。そのあたりを考慮し、「は」の連続も避けると……(↓)あたりがとりあえずのたたき台でしょうか。

「XHTMLの場合、属性値は前後に引用符をつける必要があります。」

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