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2009年11月11日 (水)

「SATILA-航空宇宙分野の比較」について

■SATILAカスタマイズ効果の比較 航空宇宙分野」に示されたSATILAプロアシストの訳文について検討を加えてみます。以下、「以下はSATILAカスタマイズの効果を比較する例です。」の一文と表組みされている部分は元ページからの引用です。

以下はSATILAの効果を比較する例です。

カスタマイズなし
(LogoVista X PRO 2006専門辞書フルパックの航空宇宙関連辞書すべてを使用。設定は購入直後の状態。)
SATILAオート
(航空宇宙分野の翻訳向けカスタマイズを行いLogoVista X PRO 2006で翻訳
SATILAプロアシスト
単語の調整に改善の余地はありますが、基本的な解釈は誤っていません。 ノウハウに基づいたカスタマイズで単語の調整と適切な自動後処理をしているので、訳文に人の手を加えなくてもここまで自動でできます。 SATILAオートの自動翻訳をプロの翻訳者が仕上げています。わずかな作業で完成訳にできる点にご注目ください。
原文 A type of drive system that transfers engine power to all four wheels and enhances drivability in adverse driving conditions or in off-road terrain. (Ford glossary)
カスタマイズなし 機関軸出力をすべての4つの車輪に移して、そして反対する運転の条件であるいはオフロードの地形で drivability を強めるある種のドライブシステム
SATILAオート すべての4つの車輪にエンジン出力を伝達して、困難な運転の条件でまたはオフロードの地形で運転性を向上するある種の駆動方式
SATILAプロアシスト 4つの車輪のすべてにエンジン出力を伝達して、困難な運転条件、またはオフロードの地形での運転性を向上する駆動方式

原文へのリンク

これ、グロッサリーですよね。"Four-Wheel Drive (FWD)"とはなんぞやという説明です。そして原文は"A type of drive system"までで概略がわかるのに、日本語は最後まで読まないと何のことなのかまったくわかりません。これだけ全部を頭にためさせるというのは、文章の書き方としてよくないと思います。これも、分かりやすい日本語の書き方といった話で頻出する基礎事項です。

「4つの車輪のすべて」、「オフロードの地形での運転性」と「の」の連続が2回も登場します。こんなに短い文章なのに。

「困難な運転条件」はどこにかかるんでしょう。「または」が何と何を結んでいるのか一読したくらいではよくわからないと思います。

「運転性」は赤字なので、おそらく、"drivability"の訳としてユーザー辞書に登録したものと思われます。「"運転性" "自動車"」「"運転性" "オフロード"」「"運転性" "四輪駆動"」など、いろいろ検索してみましたが、いずれも少ない数しかヒットしません。自動車関係はウェブサイトが多いので、一般的に使われている言葉ならこんなに少ないはずがありません。

少し調べてみると、こういう場面では「走破性」が使われることが多いようです。ちなみに上述の検索で「運転性」を「走破性」に変えてみると、ヒット数が2桁あまりも上昇します。

「オフロードの地形」ってなんでしょう。ちょっと調べてみればわかりますが、英語の"off-road"が形容詞であるのに対し、日本語の「オフロード」は形容詞および名詞として使われています。名詞のオフロードは、英語の"off-road terrain"を意味しているので、「オフロードの地形」というととてもおかしく聞こえます。ちなみに、「"オフロードの地形"」でウェブ検索をすると、翻訳モノがずらりと並びます。

これも、機械翻訳の出力に引きずられた例でしょう。

原文 Most modern jet engines are actually turbofans, where the low pressure compressor acts as a fan, supplying supercharged air to not only the engine core, but to a bypass duct. <http://en.wikipedia.org/wiki/Jet_engine>
カスタマイズなし たいていの近代的なジェットエンジンが実際にターボファンです、そしてそこでプレッシャーが少ない圧縮器は、ただエンジンコアだけではなくに、しかしバイパスダクトに過給空気を供給して、ファンの役を務めます。
SATILAオート 大半の最近のジェットエンジンは、ただエンジン中核部だけでなく、バイパスダクトに過給空気を供給して、ファンとして実際に低圧圧縮機が機能するターボファンです。
SATILAプロアシスト 実際には最近のジェットエンジンの大半はターボファンであり、低圧圧縮機がファンとして機能することで、エンジン中核部だけでなく、バイパスダクトに過給空気を供給します。

原文へのリンク

英語は一読了解できるのですが、日本語はわかったようなわからないような……。

ジェットエンジンについてある程度の知識がないと理解できない文ではありますが、原文はジェットエンジンについて一般向けに説明しているウィキペディア項目ですから、原文をよく読めば必要な知識が得られます。

このブログを読んでいる人にそこまで要求する必要もないので、ざっと、この項目関連の基礎事項を説明しておきます。

ジェットエンジンというのは、高速の気体流(ジェット)を吹き出して推力を得る装置です。基本的には燃料を燃やして膨張させ、後方に吹き出す形です。この燃焼を効率よく行うため、圧縮機で空気を圧縮して燃焼室に送り込みます(これを「過給」と言います)。ターボファンエンジンは、前方から取り入れた空気の一部を圧縮せずに利用するタイプです。過給を活用するターボジェットエンジンによる推力とファン(要するにプロペラ)による推力を併用するのが「ターボ(+)ファン」エンジンです。

ジェットエンジン

バックグラウンドを確認したところで上の訳文を見るといろいろとおかしいことがわかります。

「低圧圧縮機がファンとして機能する」……そんなことはありません。圧縮機とファンは機能が異なります。圧縮機がファンになってしまったら燃焼がうまくいかなくなります。「低圧圧縮機がファンとしても機能する」とでもしないと話がおかしいのです。

「バイパスダクトに過給空気を供給します」……これも変です。

加圧した空気(supercharged air)をエンジン燃焼室(engine core)に押し込むことを「過給」と言い、そのようにして押し込まれた空気を「過給空気」と言います。このあたりは数冊の辞書で"supercharge"を引いてみれば地雷の可能性が高いことがすぐにわかります。「過給」の意味を確認すれば、「バイパス」に「過給空気を供給する」のは組み合わせとしておかしいことがわかるはずですから。原文の次の文章、"The bypass airflow either passes to a separate 'cold nozzle' or mixes with low pressure turbine exhaust gases, before expanding through a 'mixed flow nozzle'."を読んでも、いわゆる「過給」でないことが明らかです。

項目の少し下にあるこのような絵を思い浮かべながら訳せばこんな訳になりようがありません。

翻訳とは原文が示す意味を他言語で表現する仕事なのに、言葉だけ置き換えようとするからおかしくなってしまうわけです。機械翻訳の出力に引っ張られまくった例だと言えます。

ついでに翻訳技術というレベルの話としては……(↓)あたりがあります。

「することで」というのもわかりにくい翻訳文に頻出する表現です。使ってはいけないという話ではありませんが、使ったときには、「することで」でわかりにくくなっていないか、もっといい表現はないかを考える必要があります。少なくとも、私はそう考え、翻訳学校でも必ず教えている基礎技能です。

「実際『には』最近のジェットエンジンの大半『は』」と「は」が連続するのも工夫の余地を示唆しています。文脈から言っても変なんですよね、ここ。"Common types"という中見出しで「最近のジェットエンジンは、航空機に使われるターボファンエンジンと宇宙船などに使われるロケットエンジンの2種類が大半」と紹介したあと、"Turbofan engines"という小見出しの冒頭で「実際『には』最近のジェットエンジンの大半は」と来たら、前と違うことを言うと予想してしまいます。百科事典なので、小見出しから読み出してもOK、中見出から読み出してもOK、頭からずらっと読んできてもOKな訳にしなければならないのに(←これが翻訳するとき考えなければならない枠組み)

原文 However, the air reaching the compressor of a normal jet engine must be travelling below the speed of sound, even for supersonic aircraft, to sustain the flow mechanics of the compressor and turbine blades. <http://en.wikipedia.org/wiki/Jet_engine>
カスタマイズなし しかしながら、標準的なジェットエンジンの圧縮器に達している放送は圧縮器とタービン羽根の流れ仕組みを維持するために、超音速の航空機のためにさえ、音速の下に移動している必要があります。
SATILAオート しかし、通常のジェットエンジンの圧縮器に達している空気は圧縮器とタービンブレードのフロー機構を維持するには、超音速の航空機であっても、音速の下に流れている必要があります。
SATILAプロアシスト しかし、超音速機であっても、通常のジェットエンジンの圧縮器に達する空気は、圧縮器とタービンブレードのフロー機構を維持するために、音速以下で流れる必要があります。

●Howeverからeven for supersonic aircraftの訳し方

空気の取り入れに関する説明の途中です。最初に、「亜音速機の場合、空気の取り入れは簡単だよ」って話があって、この文に続きます。"However"から始まっているのは、「だからといって何も気にしなくていいって話じゃないよ」ということです。気にしなければならないのは、「圧縮器に到達する時点で空気流が亜音速であること」。亜音速機ならエンジンにぶつかる空気は亜音速で流れているわけですが、圧縮器に達するまでのエンジン内部の形状によっては空気流が加速され、超音速になる可能性も考えられます。それは排除しなければならないというわけです。それだけでなく、空気が超音速でエンジンにぶつかってくる超音速機も同じ制約があるので、超音速機用エンジンの場合は圧縮器に達するまでに空気流を減速する必要があります。こういう流れだから、"even for" supersonic aircraftが挿入されているわけです。

「しかし、超音速機であっても」という日本語から想像されるのは、その前に超音速機についての説明があること。「超音速機の場合はこれこれなんです。しかし、超音速機であっても~」という流れです。でも、実際は前述のように違うんですよね。

●"the compressor and turbine blades"の訳し方

"the compressor and turbine blades"の訳し方も頻出する翻訳基礎技能です。"the (compressor) and (turbine blades)"なのか"the (compressor and turbine) blades"なのかをきちんと考える必要があるパターンということです。言葉だけでは判断がつかないものなので、内容を考えて判断します。

この項目の図を見れば、"the (compressor and turbine) blades"であることがすぐにわかるでしょう。ここも、機械翻訳ソフトの出力に引きずられて間違えてしまった部分でしょう。

●"sustain"の訳し方

「維持」って訳せることが多いんですが、この訳文はいただけません。そもそもなぜ"sustain"なのか。圧縮器に達する空気の流速が亜音速なら、ブレードが本来の機能を発揮して空気を適切に圧縮・膨張させるわけです。これが超音速になるとブレード表面を流れる空気の挙動が大きく変化し、ブレードが本来の機能を発揮できなくなる。それをさけて"sustain"するわけです。そのあたりがイメージできる訳語を工夫する必要があります。原文もちょっと言葉足らずなのでなかなかに難しいところですけど。

●「音速以下で流れる必要があります」

"the air must be travelling below the speed of sound"をワードバイワードで素直に訳せばそうなるんですが、でも、ねぇ……英語の助動詞"must"は主語"the air"にかかってるんですけど、日本語の「必要」は「流れる」にくっついてしまっています。つまり、英語は「そういう状態の空気でなければならない」なのに、日本語は「流れなきゃいけない」になっている。言い換えると、ダメなパターンが英語は「超音速で流れる」なのに日本語は「流れない」になってしまっています。日本語ではフォーカスが「流れる」にあたってしまって「音速以下」にあたっていないのです。

●全体的な意味合い

以上を勘案して、全体的な意味合いをざっと書くと(↓)のようになります。

ただし、圧縮器に達する空気の流速は音速以下に抑える必要がある。それは超音速機であっても同じこと。圧縮器に達する空気流が超音速になると圧縮器やタービンのブレードが正しく機能しなくなる。

このような意味がきちんと取れることを最優先とし、原文との対応をどこまで取れるようにするのか、できるのか、その作業をすれば訳文が完成することになります。

全体としては、機械翻訳の出力に引っ張られまくった例だと言えます。ほかの訳例にも言えるのですが、結局のところ、ここからが翻訳という部分を処理せず、言葉の置き換えだけをしているから、ちょっと複雑な話になるとボロボロになってしまうわけです。

●圧縮機 vs. 圧縮器

同じページから原文をとった上から2番目の例では「圧縮機」なのに、この例と次の例では「圧縮器」なのはなぜでしょう。SATILAでは機械翻訳ソフト利用のメリットとして「訳語・表記の統一による品質向上」が強調されていますが、なぜ、統一されていないのでしょう。理由は簡単。自分は「低圧圧縮機」という訳語を登録したのに、こちらと次の例で機械翻訳が「圧縮器」を使ったからです。自分で訳していれば、前の「圧縮機」をコピーするか自分で入力するかになります。コピーすれば同じになりますし、入力しても、IMEの学習機能によってたいがいは同じになります。

結局、機械翻訳ソフトに引きずられた結果、訳語・表記の統一さえも崩れた例だと言えます。

ちなみに、私は、「訳語・表記の統一」は品質をうんぬんする前、最低線の話だと思っています。訳文の品質というのは、訳語・表記が統一された後のことを言うのだと。

原文 Supersonic intakes exploit shock waves to decelerate the airflow to a subsonic condition at compressor entry. <http://en.wikipedia.org/wiki/Jet_engine>
カスタマイズなし 超音速の摂取量が圧縮器参入において音速以下の条件に気流の速度を落とすために衝撃波を利用します。
SATILAオート 超音速の吸入口が圧縮器入口において音速以下の条件に気流の速度を落とすために衝撃波を利用します。
SATILAプロアシスト 超音速吸入口では、圧縮器入口において気流の速度を音速以下に落とすために衝撃波を利用します。

「超音速吸入口」ですか……変な日本語だなと検索してみると、ヒットわずかに5件。このSATILAカスタマイズ効果の比較ページがトップに来てしまいますし、その他3件は同じもの、残りの1件も翻訳もの。ジェットエンジンの説明ですし、当然に、もっといい訳語というか日本語というかが存在するはずです。"intake"を辞書で引くと、「吸入口」のほかに「吸気口」「取り入れ口」などがいろいろと出てきます。そのあたりを参考に、原文における意味内容なども加味してちょっと調べれば、「超音速空気取り入れ口」あたりのほうがずっとマシらしいことはわかります(ベストかどうかまでの検討はしていませんm(._.)m)。

「圧縮器入口において」はどこにかかるのでしょうか。「において」は動詞にかかるので、「落とす」か「利用します」かどっちかです。日本語だけからは判断ができません。

原文に戻り、絵を思い浮かべてみましょう。空気取り入れ口から超音速の空気流が入ってきます。この空気が圧縮器に到達するまでの間に、なにがしかの形で流速を落とし、圧縮器に到達した時点では亜音速としなければならないわけです。つまり、「圧縮器入口において」は「落とす」にも「利用します」にもかからないはずです。意味内容と言葉が乖離してしまっています。

全体的な訳し方としては、翻訳入門などでよく言われるパターン、"to"を結果的に訳すほうがいいでしょう。(↓)のようなイメージです。

超音速空気取り入れ口では衝撃波を利用して流速をおとし、圧縮器入口における空気流速を音速以下におさえます。

「圧縮器」となっている点、"to"を「ために」と訳しあげている点、「圧縮器入口において」というわけのわからない係りを作ってしまった点、いずれも、機械翻訳の出力に引きずられた結果と言えるでしょう。総合すれば、これも機械翻訳の出力に引っ張られまくった例だと言えます。

原文 More advanced supersonic intakes exploit a combination of conical shock waves and a normal shock wave to improve pressure recovery at high supersonic flight speeds. <http://en.wikipedia.org/wiki/Jet_engine>
カスタマイズなし いっそう進歩した超音速の摂取量が高い超音速のフライトスピードで圧力回収を改善するために円錐形の激しいショックと標準的な激しいショックの組み合わせを利用します。
SATILAオート より高度な超音速の吸入口が高度な超音速飛行速度において圧力回収を向上するために円錐形の衝撃波と通常の衝撃波の組み合わせを利用します。
SATILAプロアシスト より高度な超音速吸入口では、高速超音速飛行速度での圧力回収を向上するために、円錐形衝撃波と通常衝撃波の組み合わせを利用します。

「高速超音速飛行」ってなんでしょうね。「超音速」と言えば普通は「高速」だと思いますけど、違うんでしょうか。ちなみに「"高速超音速飛行"」で検索すると、この形のヒットは1件、SATILAカスタマイズ効果の比較ページのこの例だけです。原文が単に"supersonic"ではなく"high supersonic"となっているのは、マッハ1付近ではなく、もっとマッハ数が高くなったときという意味合いでしょう。ベストであるとの確認はしていませんが、「極超音速飛行」あたりのほうがずいぶんとマシなようです。

「円錐形衝撃波」というのも、ヒットわずかに4件。「円錐衝撃波」のほうがわずかにマシですが(研究者が日本語で書いたものに使われている)、使用例が少ないという意味では五十歩百歩です。こういう衝撃波の表現にはマッハコーンという言葉がよく使われるようですが、一般向けのウィキペディアで説明もなしに使うのはあまりよくないと思います。イメージがわくように「円錐衝撃波」か、「円錐形をした衝撃波」か……そんなあたりでしょうか。

"exploit a combination of"だから「の組み合わせを利用する」というのは安易ですよね。翻訳時に品詞を変化させるというのはその手の本に必ず登場する基礎技能。ここは「組み合わせて利用する」としたほうが日本語として自然でしょう。

"More"があったら「より」とするというのも安易です。英語の"More advanced"というのは、そこまで説明してきた"supersonic intakes"よりも進んでいるという意味合いです。対して日本語では「より高度な」と言えば、普通のものと高度なものがあって、さらに高度なものについては……という意味になります。原文は2段階の比較なのに、訳文は3段階の比較になっているわけです。

全体の訳し方について、"to"を「ために」と訳しあげている点は一つ前の例と同じです。

"to"の訳し方については、文脈の問題もあります。原文を見ればわかりますが、一つ前の例は"Supersonic inlets"という項目の説明冒頭、こちらは半ばです。「超音速吸入口で衝撃波を利用する目的は気流の速度を音速以下に落とすため」で、「より高度な超音速吸入口では高速超音速飛行速度での圧力回収を向上するため」って、変だと思いませんか? 超音速吸入口が高度になると衝撃波を利用する目的が変化するというイメージになってしまいます。原文をきちんと読めば、そんな話でないことが明らかです。「超音速空気取り入れ口では衝撃波を利用して流速をおとす」「高度なものは、通常の衝撃波に加えて円錐形をした衝撃波を利用し、(流速を落とすとともに)なるべく多くの圧力を回収する」わけです。この流れを作るという意味でも、"to"を訳しあげるのはまずいでしょう。

全体としては、これも、機械翻訳の出力に引っ張られまくって意味不明な日本語になった例だと思います。

原文 Electronic systems require less maintenance, whereas mechanical and hydraulic systems require lubrication, tension adjustments, leak checks, fluid changes, etc. <http://en.wikipedia.org/wiki/Fly_by_wire>
カスタマイズなし 電子システムがより少ないメンテナンスを必要とするのに対して、機械の、そして水力のシステムが潤滑、張力調整、漏えい点検、流動的な変更などを必要とします。
SATILAオート 電子システムがより少ないメンテナンスを必要とするのに対して、機械的および油圧のシステムが潤滑、張力調整、漏えい点検、オイル交換などを必要とします。
SATILAプロアシスト 電子システムがあまりメンテナンスを必要としないのに対して、機械および油圧システムは潤滑、張力調整、漏えい点検、オイル交換などを必要とします。

原文へのリンク

このくらいなら、一般的には及第点の翻訳でしょう。文章の構造も単純ですから、このくらいはなんとかならないとどうにもなりませんよね。

ただ、細かいことを言えばいろいろとありますし、その細かいことをきちんと考えて処理するのが翻訳だと私は思います。

"mechanical and hydraulic systems"を「機械および油圧システム」と訳している点。こういう訳、よく見かけるのは確かなんですが……これ、「(機械)および(油圧システム)」なんでしょうか、「(機械および油圧)のシステム」なんでしょうか、「機械システムおよび油圧システム」なんでしょうか。英語は「機械システムと油圧システム」としか取りようがないのですが、日本語は3種類に取ることができちゃうんですよね。「機械」というのが「油圧」とも「システム」とも並列になれる単語であること、日本語には単複の区別がないこと(ここでは「システム」が問題になる)が原因なんですが、そういう言語間の差異は翻訳時に吸収すべきものです。

文脈も原文と訳文でねじれてしまっています。

原文は"Electronic systems"のメリットを列挙している文の一つです。でも、日本語は「機械および油圧システム」側にフォーカスがあたっちゃうんですよね。「機械システムや油圧システムはいろいろ必要だけど、電子システムならあまりメンテナンスを必要としない」みたいな流れにすべきでしょう。

これも機械翻訳の出力に引きずられたというか、機械翻訳ソフトを使っていたら、ここから先に進めないという好例ではないかと思います。

原文 Most fly-by-wire systems incorporate redundant computers and some kind of mechanical or hydraulic backup. <http://en.wikipedia.org/wiki/Fly_by_wire>
カスタマイズなし たいていのフライバイワイヤーシステムが不必要なコンピュータと何らかの種類の機械か、あるいは水力のバックアップを含みます
SATILAオート 大半のフライバイワイヤーシステムが冗長なコンピュータと何らかの機械的あるいは油圧のバックアップに統合します
SATILAプロアシスト 大半のフライバイワイヤー システムには、冗長なコンピュータと何らかの機械的あるいは油圧式のバックアップ機構が組み込まれています

原文がWikipediaそのままではなく、変更されているので文脈判断ができないので(履歴をさかのぼってもまったく同じ形は見つかりませんでした)、それ以外の部分についてコメントするにとどめます。なにせ、言っている内容が変化しているもので……

どうして「フライバイワイヤー システム」と、「フライバイワイヤー」と「システム」の間が半角あいているのでしょうか。同じウィキペディアに題材を取ったジェットエンジンの話では、カタカナ語の間は詰まっているんですけど。なぜ表記がずれたのでしょうか。

「冗長なコンピュータ」というのもちょっとどうかなと思います。「冗長なコンピュータ」と言われると、「冗長構成のコンピュータ」という意味合いと「バックアップを含む複数台のコンピュータ」という意味合いの両方が可能性として考えられて迷います。まあ、「"冗長なコンピュータ"」を検索すると10件ほどしかヒットせず、かつ、このSATILAカスタマイズ効果の比較ページがトップに来てしまう時点でダメなのは明らかであり、それ以上、何を言う必要もないとは思いますが。

総合的には、考えれば言いたいことは理解できるレベルであり、ローカライズ系の翻訳ではこのくらいいくらでもあるだろうなと思う訳文です。そういう意味では使えるレベルになっているとは言えます。

原文 In aeronautics a spoiler (sometimes called a lift dumper) is a device intended to reduce lift in an aircraft.
カスタマイズなし 航空術学で(時々リフトごみ捨て人と呼ばれる)ぶちこわし屋が航空機で揚力を減らすように意図される装置です。
SATILAオート 航空学で(時にはリフトダンパーと呼ばれる)スポイラーが航空機で揚力を減らすように意図される機器です。
SATILAプロアシスト 航空学では、スポイラーとは航空機の揚力を減らすための装置で、リフト ダンパーと呼ばれることもあります。

原文へのリンク

これはまあ、こんなものでしょうか。

オートの出力をここまで書き換えるとなると、一から訳したほうがむしろ早いかなという気がしてしまいますが。順番の入れ替えという編集作業は意外なほど時間がかかりますからね。

原文 Thrust reversers are used by many jet aircraft to help slow down just after touch-down, thus reducing wear on the brakes and enabling the aircraft to use shorter runways. <http://en.wikipedia.org/wiki/Reverse_thrust>
カスタマイズなし 推力リバーサが、それでブレーキの上にウエアを減らして、そして機体により短い滑走路を使うことができるようにして軟着陸のすぐ後に速度を落とすのに役立つべき多くのジェット航空機によって使われます。
SATILAオート スラスト リバーサは、ブレーキの上に損耗を削減して、機体により短い滑走路を使用できるようにして、接地の直後に速度を落とすのを手伝うために多くのジェット航空機によって使用されます。
SATILAプロアシスト スラスト リバーサは、多くのジェット機に使用されており、接地の直後に速度を落とすのを補助することで、ブレーキの損耗を減らし、より短い滑走路で着陸できるようにします。

原文へのリンク

「スラスト リバーサ」はユーザー辞書に登録したもののようですが、どうしてわざわざ使用例が少ないものにしたのでしょうか。使用例が最も多いと思われる「逆噴射装置」はプロペラには不適なのでこの文脈では使えませんが、「スラストリバーサ」より使用例が1桁多い「逆推力装置」という用語もあるのに。ちなみに辞書には、「スラストリバーサ」と「逆推力装置」の両方が載っています。ほかに「逆スラスト装置」とか、いろいろな言い方があるようです。であれば、どれが一般的なのかを確認すべきでしょうね。まあ、SATILA紹介用の例文を作ったとき、ウェブの状況がどうであったのかはわからないので、当時は「スラストリバーサ」が支配的だったのかもしれませんが。

「することで」……また出ました。この「こと」でまとめているのは何なんでしょうか。ここはとにかく問題、ありまくりで、典型的な、分かったような分からないような訳文になっています。

「速度を落とす」のは何がでしょう? 「スラストリバーサが飛行機の速度を落とす」はあり得ませんね。スラストリバーサは「速度を落とすのを補助する」ので。それにしても、「速度を落とすのを補助する」というのはどういう意味でしょう。スラストリバーサは「飛行機の速度を落とす」わけではなく、「飛行機が速度を落とすのを補助する」? 補助するってことは落とすんじゃないの? いや、メインとなって飛行機の速度を落とすのはブレーキだから、ブレーキを補助するんでしょうか。でも、日本語は「ブレーキを補助する」ではなく「飛行機が速度を落とすのを補助する」なんですよね。「補助する」対象はなんなんでしょうか、いったい。

ここに続くところは「ブレーキの損耗を減らす」とあるので、すなおに日本語を読めば、「(スラストリバーサが)ブレーキの損耗を減らす」になりますよね。次の「短い滑走路で着陸できるようにする」は、「(飛行機が)短い滑走路で着陸できるように(スラストリバーサが)する」んですよね?

言外に出てくるものが一つの文章中でくり返し変化しているようです。おそらくはこのあたりが、分かったような分からないような文章になっている原因でしょう。

あああと、「スラスト リバーサは、多くのジェット機に使用されており」という訳文だと、「スラスト リバーサは、多くのジェット機に装備されている」の意味にとるのが普通で、かつ、言外に「スラスト リバーサを装備していないジェット機が一部にある」を意味するでしょう。でも、原文はそんなこと言ってませんよね。たしかに使うためには装備されていないといけないわけですが、装備されているかどうかは原文では語られていないわけで……原文にない意味が付けくわえられてしまっています。

なんかもう、小手先で直してもどうにもならないようなので、原文から訳し直してみましょう。そんなわけでとりあえず思いついた一次訳が(↓)。

着陸直後、ジェット機は逆推力装置でブレーキを補助し、ブレーキの損耗を抑えるとともに短い滑走距離ですむようにするのが普通です。

上にあるSATILAプロアシストの訳文を比較のために再掲します。

スラスト リバーサは、多くのジェット機に使用されており、接地の直後に速度を落とすのを補助することで、ブレーキの損耗を減らし、より短い滑走路で着陸できるようにします。

ちなみにこの前には、逆推力装置の大まかな機構として、前方に送風して減速に資するという話が出ています。

●おまけ

このあたり、「スラスト リバーサ」のように連続するカタカナ語の間に半角スペースが入っているのはなぜなんでしょうか。上のほうにあったエンジンの項目では、同じウィキペディアの翻訳なのに「ジェットエンジン」「タービンブレード」「バイパスダクト」といずれも半角スペースなしに詰めてあるのですが。このあたり、品質をうんぬんする以前の基本的なお作法として、いずれかの方法で統一するというのが常識です。

●おまけのおまけ

機械翻訳ソフトを使ったからなのかたまたまなのかわかりませんが、この例のSATILAオートとSATILAプロアシストの訳文は、頭に半角スペースが入っています。訳語登録するとき、「 スラスト リバーサ」と頭に半角スペースを入れて登録してしまったのなら、機械翻訳ソフトを使ったがゆえのミスとも言えます。もちろん、ウェブページを作るときに混じった可能性もあります。

原文 As well as reducing adverse yaw, Frise ailerons will increase the overall drag of the aircraft. <http://en.wikipedia.org/wiki/Adverse_yaw>
カスタマイズなし 反対する偏走を減らすことに加えて、フリーズ補助翼が機体の全体的な障害を増やします。
SATILAオート 逆偏揺れを削減することに加えて、フリーズ補助翼が機体の全体的な抗力を向上します。
SATILAプロアシスト 逆偏揺れを軽減する一方で、フリーズ補助翼は機体の全体的な抗力を増加させます。

原文へのリンク

このくらいなら使えるというレベルには一応、仕上がっていると思います。

もちろん、細かいことを言い出すといろいろあるわけですが……

"Frise aileron"を辞書で引くと「フリーズ補助翼」が大半で、ランダムハウスだけ「フライズ式補助翼」となっています。それならここにあるように「フリーズ補助翼」でよさそうなんですが……「"フリーズ補助翼"」のヒットはわずか1件、このSATILAカスタマイズ効果の比較ページのみです。誰もウェブに何も書いていないほど特殊なものでもないでしょうから、これはまずいかもしれません。ちょっと調べてみると、"補助翼"よりも"エルロン"のほうがよく使われるようで、「フリーズエルロン」「フリーズ型エルロン」などが多少なりとも使われています。航空従事者学科試験問題に「フリーズ型エルロン」とあるので、こちら系のほうがベターでしょう。なお、エルロンが補助翼であることは間違いないので、「フリーズ補助翼」として通じない、理解してもらえないということはないでしょう。

同じ学科試験では、「アドバース・ヨー」という用語も使われています。「アドバース・ヨー」と「逆偏揺れ」だと、「アドバース・ヨー」のほうが使用例は多いようです。ただし、同じ航空従事者学科試験問題の中で「逆偏揺れ」も使われているので、「逆偏揺れ」としてまずいことはなさそうです。

一番気になるのは、"As well as reducing adverse yaw"の訳でしょう。

この直前の文は、「これこれこういう理由でアドバース・ヨーを軽減する効果があります」という内容です。つまり、(↓)のようにつながるのです。何か変な気がしませんか? なお、原文は頭に"However, "がついているので、下の訳文にも「(しかし)」とカッコで入れておきます。

これこれこういう理由でアドバース・ヨーを軽減する効果があります。
(しかし)逆偏揺れを軽減する一方で、フリーズ補助翼は機体の全体的な抗力を増加させます。

(↓)のようにすればいくぶんいいでしょうか。

これこれこういう理由でアドバース・ヨーを軽減する効果があります。
(しかし)逆偏揺れは軽減されるのですが、機体全体の抗力は増加してしまいます。

(↓)くらいのほうがいいかな。

これこれこういう理由でアドバース・ヨーを軽減する効果があります。
(しかし)同時に、機体全体の抗力は増加してしまいます。

ちなみに、SATILAプロアシストで「機体の全体的な抗力」となっている部分を私は「機体全体の抗力」としていますが、これには理由があります。「機体の全体的な抗力を増やす」というと、言外に「部分的には減るけど……」と読まれる可能性があります。でも、そんなことはなくって、部分的な抗力が増える結果全体の抗力が増えるわけです(直前の原文に説明があります)。そういうことも文脈の一部ですから、変な解釈を避けられる訳文にしておくほうがベターでしょう。

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