マクドナルドのちらし
先日、家族でマクドナルドに入ったときのこと。子どもたちが食べ終わるのを待ちつつ、トレイに置かれたちらし(というかなんというか)をぼんやりと眺めていたら、その日本語が気になってしまいました。
職業病ですね……
マック用語辞典みたいなもので、項目とその説明文のセットがいくつか並んでいました。気になったのは「Yes-プログラム」の説明(↓)後半の1文。
Yes-プログラム
若者のビジネススキルを高めるために、厚生労働省がつくったプログラム。マクドナルドはYes-プログラムの認定を受けているので、クルーとして働いてYes-プログラムを習得すれば、履歴書に資格として書くこともできるのでとっても便利。
家族の意見は、中1と小5の子どもたちは「何かおかしいの?」、嫁さんは「何かがおかしいけど、何がどうと明確に表現できない」だそうです。
論理の流れが1本の1文で「~ので」が2回出てきていることが、まず、無理でしょう。それだけでなく、「~ので」と似た「すれば」も登場しています。
二つの「~ので」のうち、後ろの「書くこともできるので」は「便利」で閉じています。では、前の「認定を受けているので」は?
意味から考えるなら、たぶん、「マクドナルドはYes-プログラムの認定を受けているので、マクドナルドでクルーとして働けばYes-プログラムを習得することが可能」でしょう。
でも形式は、受けるはずの部分が「習得すれば」と後ろにつながる形になっており、閉じていません。次の「書くこともできるので」も後ろにつながる形で開いています。つまり、形式としては「便利」で両方とも受けると判断せざるを得ないことになります。でもそうなると、「~ので」という原因・理由を二つ並べていることになります。原因・理由が二つあるなら、原因・理由を二つ並べた上で「~ので」とまとめなければおかしい、まとめたらまとめたで、「認定を受けている」と「履歴書に書ける」の間に因果があるので、その二つを並列にすることがおかしいとなります。
そもそもに立ち返ってこの話を整理すると、ポイントは(↓)のようになるでしょうか。
- 認定を受けているので習得可能
- 習得すれば履歴書に書ける
- バイトで資格が増やせるのは便利
整理した上で元の文を見てみると……「原因・結果」の結果を原因として次の「原因・結果」にはいり、その結果をまた原因として次の「原因・結果」にはいるという流れになっていると言えそうです。
(↓)のようにすれば、多少はすっきりするでしょうか。
Yes-プログラム
若者のビジネススキルを高めるために厚生労働省がつくったプログラムで、履歴書に資格として書くことができます。マクドナルドでクルーとして働けば、このプログラムが習得できます。
Yes-プログラム
若者のビジネススキルを高めるために厚生労働省がつくったプログラムで、マクドナルドはこのプログラムの認定を受けています。マクドナルドでクルーとして働けば、Yes-プログラムの資格を履歴書に書けるので便利です。
ここまでひどいものは少ないですが、日英の原稿で同じように「原因・結果」の結果を原因として次の「原因・結果」にはいるという文を見かけることはあります。ごく普通の英文を訳していたら、いつのまにか、「原因・結果」の結果を原因として次の「原因・結果」にはいるという文になってしまうこともあります。だから、ぼんやり眺めていてもつい、気になってしまう職業病にかかってしまうわけです。
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コメント
Buckeyeさん
「マクドナルドはYes-プログラムの認定を受けているので、クルーとして働いてYes-プログラムを習得すれば履歴書に資格として書くこともでき、とっても便利。」はいかがでしょう??第1文が原因、第2文が第1文の結果および第3文の原因、第3文が第2文の結果でしょうか。これはどのようにすっきりさせるのがよろしいでしょうか??お時間のあるときで構いませんので、ご教示頂けるとありがたく存じます。
投稿: Aki | 2009年10月14日 (水) 12時09分
「できるので」→「でき、」とすれば、「できるので」と「便利」のつながりが弱くなり、「マクドナルドはYes-プログラムの認定を受けているので」を「便利」で受けるという解釈が一応は可能になると思います。
とは言え、この状態でも論理の流れに若干の無理があると感じます。「マクドナルドはYes-プログラムの認定を受けているので」と「クルーとして働いてYes-プログラムを習得すれば」の関係がブログエントリーに書いたような形のままだからだと思います。
ほかに、動作主がふらついているという問題もあります。Yes-プログラムの認定を受けているのはマクドナルド、クルーとして働く、習得するのはちらしを読んでいるあなた、資格として書くことができるのはYes-プログラム、便利なのは……なんでしょうね……マクドナルドで働くこと、でしょうか……うーん、何が便利と言いたいのかよくわかりませんね。
さらに、「マクドナルドはYes-プログラムの認定を受けているので」から「便利」まで全体を頭のバッファに入れないといけない文章とすることがよいかどうか、という問題もあります。既出の情報ばかりならまだしも、こうも新しい情報が次から次へと提出されたのでは、読むほうはキツイでしょう。まあ、キツイだけに頭のほうは次々と忘れられてゆき、なんとなく分かったような気になってはもらえるかもしれませんが。
投稿: Buckeye | 2009年10月14日 (水) 13時41分
Buckeyeさん
よく分かりました。丁寧なご説明、どうもありがとうございましたm(__)m。この文はそもそも根本的におかしいので、書き直す必要があるというように理解しました。とても勉強になりましたm(__)m。
投稿: Aki | 2009年10月14日 (水) 19時16分