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2009年10月 7日 (水)

翻訳フォーラムのツール勉強会

2009年9月30日(水)に翻訳フォーラムでツールを中心とした勉強会を開催しました。

ツールの話となると基本的に作っているところ、売っているところの説明会が多く、どうしてもいいところだけが強調されがちです。でも、実際には便利なものほど副作用が強く出がちなもの。また、作業工程によっては、一般に対立するように思われているツールを組み合わせて使うとよい場合もあります。そのあたりを含めた話をどこかですべきだろうという話が6月の大オフで飛び出し、そこから生まれた企画です。

翻訳学校(ISS)の教室をお借りして午後2時30分~6時20分と4時間近くカンヅメでいろいろと話をしました。

「ツールはあくまで使うもの。ツールに使われない」ためにどのような工夫をして使っているのか、そういった総論をSakinoさんが担当。辞書引き、用語集や過去訳の検索、新旧文書の比較など、どのようなツールを使っていても役に(訳に)立つ話から、私のSimplyTerms、IT系中心に普及しているTrados、はては機械翻訳ソフトのエディター活用までをざっくりとカバーした話でした。

2番手はbaldhatterさん。Tradosを使ったことがない人も念頭に大まかにどういうものなのかの紹介とともに、メリットだけでなく実際に使う際の限界や制約なども紹介されました。

休憩後、翻訳メモリを使わない方式ということで私がSimplyTermsの使い方を中心に話をしました。

SimplyTermsは、MS Officeで受けとった原稿をテキスト化し、過去の用語集を活用しながらテキストベースで翻訳した上でMS Officeに戻して仕上げるという工程で使うツールをひとまとめにしたものです。自分の作業工程に合わせて作ったものなので、その流れで使うとき使いやすいようになっていますが、別に一部分だけを使ってもいいわけです。というよりもツールは自分に合わせて使うものなので、自分に便利な部分だけつまみ食いするのがベストでしょう。勉強会では、MS OfficeからSimplyTermsでテキストを抜いてTradosで翻訳するとか、SimplyTermsのテキスト整形機能だけ使っているという話とかも出ていました。

SimplyTermsでは用語集による一括置換を行う流れになりますが、置換する用語は控えめにしないとトラブルの元です。MS Officeをいったんテキスト化することも、Word、Excel、PowerPointすべてについてまったく同じ環境、しかも動作が軽い環境で作業できることはメリットですが、書式の一部には対応しておらず仕上げる作業が必要になるといったデメリットもあります(すべての書式に対応するとテキストファイルが読みにくくなるというトレードオフがある)。過去にSimplyTermsを紹介したときもそうしましたが、今回も、こういう限界や制約も紹介しています。限界や制約が分からなければツールに使われる結果になりますから。

最後は質疑応答。一応、baldhatterさんと私が前に出て全体的な話を進めていましたが、Sakinoさんの回りやSakinoさんがやり方を紹介された方の回りなどにも人が集まり、部分部分の質疑があっていたようです。辞書引きなど、昔から翻訳フォーラムにいる私やSakinoさんにとっては語り尽くされたような気がしていた話も、あとからこの業界に入ってきた人たちにはよく分かっていなかったりしたようです。こういう話はくり返ししなければならないようですね。

ISSさんのご厚意でプロジェクター2台をお借りしました。そのほか、電気も自由に使ってよいと言っていただいたので、ノートパソコンを持ち込んだ人が大勢おられました。

勉強会のあとは、足の骨折から回復されたbaldhatterさんの快気祝いを兼ねて打ち上げを行いました。

勉強会のあとは翻訳フォーラムで関連の質疑がいろいろと続いていました。これだけ活発にやりとりがあるというのは、最近では珍しいくらいというくらいに。

オフラインの場を持つたび思うのですが……オンラインにはオンラインの良さが、オフラインにはオフラインの良さがあります。今後も、できる範囲でこういう機会を作って行けたらなと思います。

最後に、裏方作業を担当してくださった方々、ありがとうございました。

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