訳文基準と原文基準の単価の換算(日英翻訳の場合)
日英翻訳の場合についても訳文基準と原文基準の単価の換算について検討しておきましょう。
「訳文基準と原文基準の単価の換算(英日翻訳の場合)」のコメントにも書きましたが、日英の換算が一般にどうなるかというのは、あまり情報が出てなくてよくわかりません。でもよく分からないで終わりにするのはどうかと思うので、わかる範囲で推測などしてみたいと思います。
まず、英日翻訳したものを日英翻訳したら元の英文ができる、と仮定します。こう仮定すれば、英日翻訳のとき仕上がり日本語400字になる英文ワード数から、日英翻訳で英文200ワードになる日本語文字数が推測できます。
ただし、翻訳するとどうしても冗長になりがちです。えいやっと、片道10%冗長になると仮定すると、往復で20%の狂いがでます。その点を考慮にいれた推測結果は以下のとおりです。
分野・案件 | 英日の中心値 | 英日の範囲 | 日英の中心値 | 日英の範囲 |
---|---|---|---|---|
IT系などカタカナが多いもの | 110ワード | 100~120ワード | 580文字 | 530~640文字 |
一般的なもの | 140ワード | 120~160ワード | 460文字 | 400~530文字 |
医薬、論文など漢字が特に多いもの | 160ワード | 140~180ワード | 400文字 | 360~460文字 |
(英日は仕上がり日本語400字になる原文ワード数、日英は仕上がり英文200ワードになる原文文字数です)
英日翻訳における換算でも取りあげたJTF(日本翻訳連盟)の『平成17年度翻訳白書 第2回翻訳業界調査報告書』の同じく10ページに、以下の記述がありました。
(日英翻訳について)訳文基準の英語200語6000円は、原文基準では日本語1文字15円と同等とみなしました。回答の分布は、この換算率をおおむね裏付けています。
これは、日本語400文字が英語200ワードになるという計算になります。
上の表と比べると、それなりのズレがあります。ただ、カタカナ語が多い分野は英日翻訳に対して日英翻訳の需要が相対的に少ないことを考えると、日英翻訳全体を代表させる数値は上の表の少し下寄りにすべきでしょう。とすると、中心値で430文字くらいだと考えていいのかもしれません。このくらいになれば、JTFの数字と当たらずとも遠からずと言えそうです。
訳文基準と原文基準の単価の換算についてエントリーを書くきっかけとなった翻訳会社では、「日英では430文字が220ワードという換算率を用いる」ということになっていたとの情報をいただきました。これを英語200ワードになる日本語という上のパターンに直すと、390文字となります。私の推測結果がまあまあの精度であるならば、という条件付きですが、この換算率なら悪くないと言えるでしょう。
ちなみに、私が自分で使う換算率は「日本語500字が英語200ワードになる」です。とある翻訳会社からは「日本語400字が英語200ワードになる」という換算率を使っていると聞いたことがあります。
もろもろ総合すると、「日本語400~500字が英語200ワードになる」と考えておけば大まかにはいいのかなと思います。
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