祝日
翻訳会社、川村インターナショナルの川村社長が書かれているブログに、先日、「祝日が多すぎないですか?」というエントリーがありました。
そうなんですよね。祝日って、なんだかんだで年間20日近くもあるんです。会社員なら、そのほかに年末年始のお休みが5日ほどありますし、夏期特別休暇も3日くらいはあるところが多いでしょう。ある程度の勤続年数があれば、有給休暇もフルになってて20日ありますよね。
合計すると、有給休暇以外で25日くらい、有給もいれれば30~35日は休めることになります。これらは特別な休みであり、通常の休みも、週休2日で52週なら年間104日が休み。それも合計すると……130~140日くらいお休みがある計算になります。年間の実働日数は225~235日。1カ月平均19日前後です。
私が単価と処理量から売上予想をするとき、基本的に月20日で計算するのはこれが理由です。
翻訳者の生活を比べてみましょう。だいぶ前の調査ですが、アルクの「実務翻訳者アンケート調査」を見てみます。
「翻訳者の生活」を見ると、1カ月の平均労働日数が20日を超える人の割合が55%前後とかなり多いことが分かります。
1日の平均労働時間は、会社員が通常8時間勤務+αであるのに対して短いように見えますが……翻訳者がこう聞かれて答えるのは「実働時間」、つまり実際に翻訳作業をしている時間です。それ以外に各種連絡、経理、勉強、買い物、場合によっては見積もりや打ち合わせの時間が必要です。会社員の「8時間労働」はこういうものを全部含みますし、お茶休みも含んでいます。そのほか、外仕事なら社外に出て移動するときの時間、つまり歩いている間や電車に乗っている間も勤務時間に含まれます。そう考えると、翻訳者は労働時間も平均して会社員よりも長いと言えるでしょう。
その結果、得ている収入が……えいやっと判断して500~600万でしょうか(だらだらと変化するので判断が難しいですが)。ここから必要経費が出ていくことを考えると、税込み給与で400万前後に相当すればいいほうでしょう。なお、アルクの「実務翻訳者アンケート調査」が行われたのは2001年と8年も前。そのころと比較して全体に2~3割方単価が落ちているようなので、それを考慮すると、今は売上で400~500万、税込み給与で300万強相当という人が多いのでしょうか。これでは1人分がやっとで家族を養うのは難しいですよね。
実力勝負のこの業界、もちろん、稼いでいる人は稼いでいます。アルクのアンケートでも、1000万超が5%以上、います。でも、アルクのアンケートでは「年収1000万円を超える人の労働日数と労働時間を見てみると、それぞれ月平均25.9日、1日平均9.3時間」なのだそうです。会社員も大企業なら税込み1000万を超える人は珍しくないわけで……私は勤続年数が短かったのでそこまで行きませんでしたが、会社員時代、回りには1000万プレーヤーがたくさんいました。たしかにたくさんもらっている会社員というのはそれなりの働き方をしているものですが、それでも、毎週、休日出勤をしていたってことはありません(月26日は週6日以上働く計算)。
よく、フリーランスは自分が働く時間を自由に選べるなど、金銭以外のメリットがあると言われます。でも、それがメリットとなるためには、人並みの働き方で人並みの収入が得られなければなりません。そうでなければ「選ぶ」ことができないからです。(「稼げる」ことにこだわる理由)
特にこのところ耳にする単価低下などを考えると、一般的には働き方を選ぶことなど難しい世界に入ってきているようです。ふつうにがんばれば週休2日+祝日くらいの日数を休んで会社員並みの収入が得られるようでないと職業として成り立たなくなってしまうと思うんですけどねぇ。
と、ここまで書いて、似たようなエントリーを過去に書いていたことに気づきました(会社員と翻訳者-収入の比較)。似たような分析になっているということは、実態がそんなものなのか、それとも私がやるとそんな分析になってしまうのか、どっちなんでしょうね。
| 固定リンク
「翻訳-業界」カテゴリの記事
- 私が日本翻訳連盟の会員になっている訳(2019.02.27)
- 河野弘毅さんの「機械翻訳の時代に活躍できる人材になるために」について(2019.02.22)
- 産業系の新規開拓で訳書は武器になるのか(2019.02.21)
- 『道を拓く』(通訳翻訳ジャーナル特別寄稿)(2019.02.15)
- 翻訳者視点で機械翻訳を語る会(2019.01.23)
コメント