ウェブ検索の肝
今週頭の2009年6月22日(月)、フェローアカデミーの受講生を対象にウェブ検索のセミナーをしてきた。依頼があったのでやったわけだが、正直、ウェブ検索だったら、もっと適任がいるんじゃないかと思った。それこそ、安藤進さんとか(↓)。
ちなみに、この本、私も持ってます。JTFのパーティで安藤さんにお会いしたとき、もうすぐこの本が出るとお聞きして、「前のものは持っているから新しいのも買う」と言ったら献本でいただいてしまいました……もらったから言うんじゃありませんが、とてもよくまとまっていていい本だと思います。具体的な検索テクニックなら、この本を買って読んで、実際に試してみるのが一番です。
でもともかく、依頼されて請けたのだから、準備をして、2時間、何かをしゃべってこなきゃいけない。
そのために改めて、今まで、検索関係であったアレコレのやりとりを思い起こしてみると……検索テクニックの前に大事な話があるのに、それが意外なほど、正面切って取りあげられることがない(端々にしか出てこない)という点に気づいた。
■検索で一番大事なこと
- 自分がわかっていないと知ること……「何か変だ」と思う感覚が大事
- 自分がわかっていない点を知ること……何を調べているのか、何がわからないのか
まず、自分はわかっていないということがわからないと調べ始めないのでどうにもならない。なお、そのとき、何がどうわからないのかまできちんと把握する必要がある。
何がどうわからないのかは、翻訳の場合、以下のように段階をおって変化すると思う。
- まずは、「書かれている内容が理解できない」というレベル。よくある間違いが、この段階で訳語探しに奔走すること。理解できない内容は翻訳などできないわけで、背景知識が不足しているのなら、まずはそちらを確保すべき。
- 全体として内容は理解できるが「書かれている言葉が理解できない」。こういう部分があったら、原語の表現が何を意味しているのか言葉面と事実面から攻めて行く。ここで引っかかっているのに訳語探しに奔走するというのもよくある間違い。存在しない訳語(変な位置で切った原語フレーズの訳語)を探している例とか、一般用語なのに専門用語だと思ってその訳語を探している例とかをけっこうみかける。
- 原語では理解できるが、それをターゲット言語に移しかえるときに必要となる「訳語がわからない」……このあたりから、一般にウェブ検索で話題となる部分に入ってくる。
- 訳語は分かっているが、ある条件下における「表記を確認したい」。インターフェース/インタフェース/インターフェイス/インタフェイスのどれを使うべきかといったケースだ。ここも一般にウェブ検索で話題になることが多い。
- 最後に、「ターゲット言語における訳語・表現の使われ方を確認」という作業がある。単語というのは独立では使わない。他の単語と組み合わせるわけだが、組合せる相性のいいものと悪いものがあったりする。また、対象読者によって使う・使える訳語や表現も変化する。このあたり、きちんと確認しないとあぶないのだが、ウェブ上で行われる質疑などでけっこう抜けていることが多い。翻訳フォーラムだとほぼ必ず突っ込みが入るが(誰も入れなければ私が入れるし……^^;)。
ちなみに最後の「訳語・表現の使われ方を確認」という部分は、安藤さんの本では詳しく扱われている。いい本だと思うゆえんの一つである。
なお、調べているうちに状況がどんどん変化し、「何を調べているのか、何がわからないのか」も変化して行くことがある。この点を頭の片隅に置いておかないと、調べていることが変化したとき、調べるテクニックを変化させ損ねて袋小路に落ち込んだりする。
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