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2009年6月19日 (金)

市場価格・適正価格

我々、産業翻訳者にとって、単価は大きな意味を持つ。単価×処理量がそのまま収入となるからだ。

さて、この単価を語るとき、相場とか市場価格とか、適正価格とか、いろいろなことが言われる。相場は雑誌などのアンケートを見るとして、自分の市場価格、適正価格はどうやって知ればいいのだろうか。

まとめてしまうと……

翻訳者側から見れば、自分が売りたい価格帯というのがあって、その価格帯で自分にとって十分な仕事量が確保できていれば、それが自分にとっての「市場の適正価格」である。逆にエージェント側から見ても、各社、買いたい価格帯というものがあって、その価格帯で会社を回せるだけの品質と量の翻訳が仕入れられるのであれば、それがそのエージェントにとっての「適正価格」となる。

翻訳者とエージェントが新たに出会ったときは、両者の「適正価格」を比較し、重なった部分があれば仕事につながるし、重なった部分がなければそもそも仕事につながらない。仕事につながったときは、訳者側から見れば仕事のしやすさなどを含めた総合点を他社と比較するし、エージェント側では他の翻訳者の仕事の質などを含めた総合点を他の翻訳者と比較する。こうして比較した結果、両者ともに満足できる範囲に入っていれば、長続きする(両者が大満足の範囲なら最高)。逆に、どちらかに不満があると小さなことさえもきっかけとなって取引が途切れたり、それこそ、なんとなく途切れたりする。「適正価格」との関係で考えると、翻訳者・エージェントいずれにおいても、適正価格の両端だと無理がでる可能性が高く、長続きしないことが多い。

こんな感じなのだと思う。

ときどき、「値段は買い手が決める」などと言う人がいるが、それは間違い。我々売り手には、安すぎると思うなら売らないという選択肢があるからだ。もちろん、買い手には、高すぎると思えば買わないという選択肢がある。

「市場の適正価格」なんてものがそもそも幻想というか、存在しないという言い方もできる。上記のように、価格を決めるのは、あくまで、特定のクライアントなり翻訳会社なりと特定の翻訳者との相対。発注側と受注側、両者が満足する条件(単価、納期、品質……)であれば、それが翻訳という市場全体でよくあるものであろうが唯一の例であろうがかまわない。逆に、市場全体でよくある条件であっても、発注側と受注側、いずれかが満足しなければ両者にとっては意味がない。

雑誌などに載るアンケートの結果は、先日のエントリー、「産業翻訳者の現実的な収入はどの程度か」などのように全体的な様子などを見るには使えるし、自分が取引している条件がわりあいにおいしい話なのかそうでないのかを知るのには使えるが、それ以上のものにはならないだろう。

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